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何でも、誰でも、どこからでも

Seventh Night (China)


料理ってものは、同時進行で手早くやらなきゃいかんよね。特に今日みたいに時間のない時は。「グストー」のスタッフ達の手際は見事だったよなー。
えーとひじきを戻して、玉ねぎを切る。とうもろこしの実をはずして、芯で出汁。こっちではオクラを輪切り、残りはさっと茹でて。にんじんはうーん、千切りだな。これなら長芋のすりおろしも? あ、キャベツがあった。実験的におからもどうかな。
出汁で野菜を煮ても、ほんの1~2分で引きあげること、ふむふむなるほど。その間に豆腐のごまソース。やっぱりすり鉢が欲しいなあ。
しかしコレットの野菜を切る手つきはすごかった、って、こっちの材料は揃ったぞ。フライパンに胡麻油。にんにく入れてから焼こう。生地を流し込んで、片面焼いて、ひっくり返してもう片面。
その間にできたよ、ひじきの和え物。あ、もう豆腐がないや、買い物メモメモ。
よし、そろそろ焼けたか、生地チェック。フライ返しを手に持って、フライパンの蓋をさっと


ぶわああぁぁぁぁっっっ!!!! (予想もしてなかった大量の蒸気)



以上、「我はいかにして右腕に直径10cmの腫れと2個の水ぶくれを作ったか」の顛末です。
映画の余波に乗っての中継調でお送りいたしました。(棒読み)


キッチンは戦場だぜ……!

* * * * *

【映画】
何でも、誰でも、どこからでも_b0059565_1049364.jpg映画「Ratatouille」を観に行ってきました。
予告編を観た時、Pixarだし面白そうだけど、TV放映まで待つか、と思っていたのですが。
周りで行った人4人が、全員口を揃えて褒めまくり。しかも全員大人ですよ。
とどめがMミィ姉さまの絶賛映画評で、これは行かずばなるまい、と思うに至ったのでありました。



フランスの片田舎で暮らすネズミのRemy。ネズミらしからぬ嗅覚と味覚の鋭さで、仲間うちの毒見(毒嗅ぎ)役にもなっている。どうしても食材と料理への執着が捨てきれない彼の憧れの人は、名シェフのGusteau。彼の、「誰でも料理ができる」というモットーを支えに、夢はいつかフランス料理のシェフになることだった。
ある日、ハプニングで一族と離れてしまったレミーが、一人で辿り着いたのは、パリのグストーのレストラン。なぜかグストーの幽霊に励まされ、キッチンに入りこんだ彼は、そこで雇われたばかりの掃除人、Linguiniがだめにしてしまったスープを思わず作り直し、しかもそれをリングイニに目撃されてしまう。利害の一致を見た2人は、一緒になってパリ一番のシェフを目指そうとするが。


ネズミが料理できるのか? 人を操ることができるのか? などと考えてはいけない、というのはお約束。でないと本能に刷り込まれたネズミへの嫌悪感が、料理のシーンを台無しにしてしまう恐れあり。実際、家にネズミが出た経験のある私は、何度なくその忌まわしい記憶を封じ込めなくてはなりませんでした、いやはや。

それは思いっきり遠くにおいといて。いやあ、前評判通り、面白かったです。
ピクサーはとても”まとも”なストーリーを作るという印象があり、それが捻くれた大人のアタシには物足りなくもあるのですが、今作は個人的に「The Incredibles」と並ぶヒットだったと思います。
なんでもこの映画の為にスタッフは、フランスの一流レストランで研修を受け、厨房を徹底的に取材したそうで。その甲斐あって、食材一つ・料理の手つき一つとっても、臨場感のある素晴しい出来。

CG技術の粋を極めた、と言わんばかりの美しい映像。ネズミのヒゲや毛の1本1本まで、まるで実際に動いているような。
そして光のあて方が見事の一言。キャラの髪のツヤ、厨房の陰影、料理の立体感、朝日や夕日や夜景にまで。隙の無い光に対する心配りが、画面の奥行きをぐっと深め、それがまたストーリーを深めることにもなっています。

声優陣は、相変わらず世間に疎い私が知っていたのは、ほんの2~3人だったのですが、ピーター・オトゥールの名前には驚いた。なんという大物が(わなわな)

だからというわけではないのですが、彼が演じた料理評論家のイーゴが発する、クライマックスの言葉が圧巻です。
ここに凝縮されたあれやこれやが、イコールこの映画の主張になっており、抑揚を抑えた、しかしこの上なく深みのある彼の声で紡がれるそのセリフは、現実の厳しさを唱える中、しかし抱くべき希望をも盛り込んだ、しみじみと味わい深い言葉となっています。
「Anyone can cook」
レミーやコレットの支えとなるこの言葉、どう受けとめるかは我々次第。そんな風に穏やかに差し出された気がします。


ちなみに日本語版タイトルに関しては、周囲はブーイングだらけですが、私も当然その一人。一体全体、何を考えてやがるいらっしゃるですか、宣伝担当の方々(怒)
予告編を観た時に、うんうん、料理名のRatatoilleとレミーのRatをかけてあるのね、料理がテーマの映画に合ったタイトルだなあ、と思ったぐらいなのですが。映画を最後まで鑑賞すれば、それにもう一つの大事な意味があるのは、誰にでもわかること。
それがなじょして「レミーのおいしいレストラン」……腰が砕けて立てません。せめて良くあるパターンの、”そのままカタカナ”にしてしまう方がマシだったんではないかなあ。(ため息)


映画が終わった後、私が「うーん、料理したくなったなー」と言ったら、お嬢が「え!? 初めて聞いた!」と驚いてました。うん、母ちゃん、義務としての料理は嫌いだからね……
そんな私にまでその気にさせる、肩の力を抜いたところで楽しみたい、ほのぼの映画の一つです。
by senrufan | 2007-08-19 10:45


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