語り始めればきりがなく

終わったーーーっっっ!!!


と、いきなり歓喜の絶叫で失礼致しました。

先週・今週と、お嬢のサマースクール&スイミングで、月~土、合計12日間、
一日平均70マイル以上を運転してたのでございます。
ということは、総計840マイル(約1,340km)は走ったということで、

もしかしてサンディエゴまで往復できたんじゃないか。

と考えると腹が立つので考えない。考えない。(二度言う)

まあ運転自体は「ハリー・ポッター」の朗読CDのおかげで、特に苦痛ではなかったのですが。むしろ「この章が終わるまで!」なんて、聴きながらその辺を余分に走っちゃったりしたのですが(おい)
何しろ、自分用にまとまった時間がとれなかったのが、ちっとばかりイタかった……昼の12時から夜の7時まで、切れ切れに拘束されてた感じだったもんなあ。

こおゆうことをつぶやくと、さぞかし教育熱心な親のように思われる方がいらっしゃるようですが、そういうことでは全くありません。(断言)
日本と違い、「公共交通機関を利用しての子供の習い事通い」というのが、物理的にも安全常識面でも難しいエリアである為、親が送り迎えをしない限り、ほとんどどこにも行けないのであります。このエリアのお母さん方はご承知の通り。日々の学校ですら、車での送迎が一般的。

それでもうちは一人っ子なので、こんな程度で済んでおりますが、2人・3人とお子さんがいらっしゃるお母さん達は、文字通り子供のマネージャー状態。更にお仕事を持っていれば、どれほどの負担になることか。頭が下がる、という言葉ではとても足りません。
だから私程度で愚痴っちゃいけない。愚痴っちゃいけない。(二度言う)


何にせよ、お嬢も私も、明日から本当にフリーな夏休みに入ります。
新学期が始まる28日まで、のんびり遊んで過ごす予定。

ちなみに先月半ばに日本に発った旦那ですが、予定では7月31日に帰るところ、諸事情で延びまくり。現在の最悪の帰国予定は、今月の30日でございます。
しがない別宅の家政婦の身ではありますが、さすがにご主人様のお身体が気になっている今日この頃。 おーい、ダイジョブかー。

* * * * *

【映画】
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地元市のダウンタウンに、小さな映画館があります。
古色豊かな建物の中、ゆったりと赤いビロード張りの椅子が並んだ館内。「ハリウッド黄金期」の映画専門の劇場です。



毎日2本ずつ、クラシックの名画を上映していますが、特にこの7月は、「Fred Astaire and Other Classics」と名をうたれた、アステア映画の特集が企画され。
彼を始めとする、この時代のミュージカル映画のファンである私は、そのお知らせを見た時から行きたくてたまらなかったのですが、如何せんスケジュールと全く合わず。ほとんど最終日の今日、ようやく1本観ることがかなったのでありました。


観られた映画は、かの有名な文学作品の映画版、「Daddy Long Legs(足ながおじさん)」です。
相手役にレスリー・キャロンを得て、原作とはだいぶ筋立てが異なるものの、ダンスシーンをふんだんに盛り込んだ楽しい作品。アステアの歌声も堪能できます。

紳士の代名詞とまで言われたアステアが、この作品に出演した時、「あのアステアが初老の役を……」との嘆きもあったとか。
しかし時を経て、まとめて彼の作品を観る世代である私には、むしろ衰えることをしらない彼のステップ、快く響く歌声など、どれも嬉しいばかりです。

レスリー・キャロンは、最初に「巴里のアメリカ人」で観た時、ジーン・ケリーが一目ぼれするほどの美女には見えなくて。踊りはバレリーナ出身だけあって見事なのですが、顔と髪型がちと好みのレンジからはずれてまして。
この「足ながおじさん」ではしかしぐっと磨きがかかり、ぽっちゃりとした唇も艶っぽく、なかなかの美女ぶりであります。バレリーナ出身らしい、きりっと上半身を伸ばしたダンスも見事。

彼女の出演作の中では、「リリー」が一番好きな作品で。
学生時代、名画専門の映画館に、3日続けて観に行ったことがあります。その頃はレンタルビデオなどなかったので、大画面で観るのが手だったわけで。

今思えば、ある意味贅沢であったあの頃。同時に、名画専門の小さな映画館が次々と閉鎖された頃でもあったので、そういった映画館の閉鎖前の名作上映スケジュールを入手しては観に行って。
大学の授業時間と合わなくて、必死で駆けつけた時にはすでに満席、3時間立ち見で通した、なんてこともありました。

それから何年も経って、当のアメリカに来てみれば。
TVにはクラシック映画専門チャンネルがあり、こんな映画館がありで、嬉しい驚きを享受して。
ただ一つ、あの頃と違っているのは、無意識にあるのが当たり前と思っていた、日本語字幕がないことです
あの時に映画に行かずに、もっと英語を学んでいれば…!(ぎりぎり)(ハンカチ噛んでます)という後悔の気持ちも味わいながら、レスリー・キャロンの(意図的な?)フランス訛の英語を、必死に聞きとろうと努力した(そしてかなわなかった)2時間でありました。

* * * * *

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ハリウッドの黄金期(Hollywood's Golden Age)。年代としては1930~40年代を中心とし、この時に米国映画史で今もなお名作と謳われる、数々の傑作が生み出されました。
ジョン・フォード監督の「駅馬車」、大作「風と共に去りぬ」、今でも映画史上ベスト1に挙げる人の多い「市民ケーン」……
古き良きアメリカ、というフレーズを聞いた時、真っ先に私が思い浮かべるのは、これらの映画から得られたイメージに他なりません。学生時代から大の映画ファンで、特にジョン・フォード監督作品に詳しい父の影響も、多分にあったと思います。

中でも私が好きなのが、この時代のミュージカル作品。どれか一つと言われたら、悩んだ末に「雨に唄えば」を挙げるかと。
この映画の監督・主演をつとめたジーン・ケリーは、「黄金期」を代表するスターの一人であり、ダンスのみならず、監督や脚本もこなす多才ぶりを示しました。

このジーン・ケリーと並んで、MGMスタジオの二枚看板と言われたのが、フレッド・アステアです。
ケリーとまた違う味わいの、上品で洗練されたダンスにより、20世紀最高のダンサーとまで言われた彼。特にジンジャー・ロジャースとのコンビは有名で、トップハットに燕尾服、そしてホワイトタイというスタイルをトレードマークとして、黄金期の名にふさわしい名ミュージカル映画に多く出演しました。

アステアはまた完璧主義者としても知られ、ダンスの練習に対する厳しさはかなり有名。名コンビの片割れだったジンジャー・ロジャースとの決裂は、彼のその性癖が原因と言われるほど。
しかしそのダンスこそ、私がまたこの時代のミュージカルに魅かれる理由の一つであるのです。

現在作られる映画でのダンスシーンは、撮影技術を駆使したものが多いように感じます。足や顔の短いショットを頻繁に挿み、数カットごとにめまぐるしく視点を移し、スピードと迫力のある場面を実現して、心地よい臨場感をもたらしてくれます。
勿論ダンサー達の技量も、アステアの時代より進歩しているに違いないのでありましょう。

それでも尚且つ、アステアやケリーを忘れられないのは。
この時代の撮影では、特に技巧を凝らさず、真正面から等身大に撮っています。また、ひたすらにダンスをカメラで追い続けるシーンが多い分、場面を細切れに分けない分、ほんの一箇所のミスでさえも、最初からやり直すという事態を招きます。
結果、他の技術に助けられることなく、本人の技術のみでの勝負になるわけで。それも、「この一回!」という気迫が背後にあるわけで。
いとも簡単にすさまじいステップをこなしてみせる彼らの、そういう”職人芸”的なところに、心惹かれてやみません。
弱さや挫折、素人っぽさ、そういうものを映し出すストーリーが多くなった昨今、それもまた良しとしながら、かの時代にあった「プロフェッショナル」というものの強さを、スクリーンのこちら側で受けとめるのです。
それはあの時代の気の利いた温かいユーモアをも含み、父の世代が憧れたアメリカというものの全体像をも、また目にすることができるのです。

アステアのダンスシーンでは、客席から数回、拍手と歓声が起きました。
それは私の隣に座る、全くこの時代への感傷のないお嬢からでさえ、素直に賞賛の気持ちをこめて、沸き起こったものでもありました。

* * * * *

b0059565_10434643.jpgここの映画館には、今まで数回来たことがありますが、お客さんのほとんどがおじいちゃま・おばあちゃま。
彼らがにこにこしながら映画の名シーンについて語り合ったり、バケツサイズのポップコーンとコーラを手に、どこか懐かしさを湛えた表情でスクリーンに向かっているのを眺めるのも、また楽しみの一つです。

現金オンリーの窓口と、古めかしい感じのチケットもぎりのおじ様が立つ、見かけは小さな映画館。しかし館内は意外に広いです。

b0059565_10441134.jpg入口を入ったところに売店が、その奥にはホールがありますが、右側は小さなギャラリーになっていて、数々の名画のポスターなどが展示されています。
色数の少ない、アメリカンポップアートの見本のようなポスター達。セピアがかったそれぞれに、映画ファンなら一枚一枚歓声を上げてしまいそうなタイトルや俳優陣の名前。
ちなみに売店の向かいの壁には、「北北西に進路をとれ」の日本語版ポスターがありました。


この映画館のもう一つの名物が、Mighty Wurlitzer organです。
1920年代にアメリカで生まれ、映画館に設置されて、無声映画の伴奏に使われていたというパイプオルガンの生演奏が、毎日ここで聴けるのです。
スクリーンの両脇の金の壁。お嬢が「あれは百合の紋章なのかな、それとも仏陀の顔なのかな」と悩んでいた壁の正体は、実はオルガンのスピーカーに当たるのでありまして。

7時半の上映の前後、今日ならば我々の観た映画が終わった後。するすると舞台中央の台から、オルガンと演奏者がせり上がり。それからゆっくりと始まる音楽。
”one man orchestra”と呼ばれた、多数で多彩なサウンドの雨が、天井から壁から、観客席の我々に向かって、温かく柔らかく降り注ぎます。

このシアターでは、毎週水曜、このオルガンの生演奏付の無声映画が上映されるとのこと。それだけを目当てに行く価値のある、ノスタルジックな一時です。
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今月末に、長い間観たいと思っていた映画が上映されるので、それをねらってまた行く予定。


The Stanford Theater
221 University Avenue
Palo Alto, CA 94301
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by senrufan | 2007-08-04 10:22 | Trackback | Comments(10)
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Commented by frogfreak at 2007-08-06 12:06
お嬢さんの運転手、お疲れ様でした。
アメリカで子育てをする以上、避けられないとはいえホントに大変ですよね。これで奥さんが仕事でもしていた場合はどうなるんでしょうねぇ?
はぁ、まだまだ先とはいえ気が重いですわ・・・

Commented by すれっぢ at 2007-08-06 22:51 x
Miyukiさん、映画にも造詣が深かったのですね、玉手箱のように
色々出てきて凄いです。Fアステアのダンスシーン、確かに今の
映画みたいに本物ダンサーの足だけ(フラッシュダンス)とか使わず、
ご本人がず~っとワンカットで踊ってて凄いですよね。Singing in
the rain、映画を通しで見たことがない・・のですが、あの有名な
シーンはいつTVでやっててもずっと見ちゃうんですよね~。
Commented by usayamama at 2007-08-06 22:54
お疲れさまでございます。すごい走行距離ですね!
すごく味のある劇場ですね。開演前も色々楽しめそうです。
しかもハリウッド黄金期」の映画専門の映画館だなんて!
さすがアメリカだな〜。
日本でもチャンバラ専門映画館が一軒くらいあっても良さそうだけど。
Commented by まきりん♪ at 2007-08-07 00:40 x
おお、ダンサーの鑑とも敬されているアステアのバイオ、興味深いですね。完璧主義、彼のダンスを見ていると分かる気がします。

これからは自由な夏休みに入るのですね。
夏をエンジョイしてね!
Commented by shina_pooh_at_sfo at 2007-08-07 03:23
「語り始めればきりがなく」の題名どおりなブログでしたね(笑)でも、この時代の映画にまったく疎い私、じっくり読ませていただきました。

University Ave.を通るたびに古い映画館があるんだなぁと思って見過ごしていたんですが(Fred Astaire のポスターも何度か見てました。)、そんな素敵なミュージカルをやっていたんですねー!(涙)私もミュージカル大好きで、でも、この時代のミュージカルって恥ずかしながら観たことがなくて。映画館で見れなかったのは残念ですが、早速「雨に唄えば」を Netflix に追加しました。映画館に足を運ぶだけでもアンティークを楽しめそうな素敵な場所。紹介してくださって本当にありがとうございます!今月末に上映される「長い間観たいと思っていた映画」ってなんでしょう??
Commented by Miyuki at 2007-08-07 08:53 x
*frogfreakさん
終わりました~。ほんと、こればっかりは避けられない親業の一つですねえ。
共働きのご両親は、共に手助けし合いながら、祖父母や友人と助け合ってがんばってらっしゃるですよ。デイケアセンターやベビーシッターに頼んだり。アメリカって学費がタダなので、教育費が安く見られがちですが、実はそういうところにかかるお金がハンパじゃないですよね……(涙)
Commented by Miyuki at 2007-08-07 08:56 x
*すれっぢさん
はあい、玉手箱のように、開けたらババアな私は、昔のものばかり好きで、現在のものに大変疎いのでございますよ~!(笑)
「フラッシュダンス」の吹き替えは有名になりましたねえ。あの女優はあれからどうなったんだろう。機会があったら、「雨に唄えば」をご覧下さいまし。面白いですよー。余分なシーンも多いですが(笑)
Commented by Miyuki at 2007-08-07 08:57 x
*usayamamaさん
ありがとうございます! これが日本なら、東京からどこまで行けるか?とかまた考えちゃって、考えない考えない(言い聞かせ中)
チャンバラ専門館、あれ、どっかになかったかなー。あ、あれはヤクザ映画専門だったっけ。
Commented by Miyuki at 2007-08-07 08:58 x
*まきりんさん
ダンサーの鑑、確かにそうですね~。でもイマドキの人達、名前を知ってるんでしょうかね(笑)

ありがとうございます、とりあえずのんべんだらり~と過ごします。って、それはいつもなので、何かやれよ自分。
Commented by Miyuki at 2007-08-07 09:03 x
*shinaさん
たはは、お恥ずかしゅうございます~(汗)
今まで数回行ってたのですが、そういえば日記には書いたことなかったなあ、と。こういう場所が存続できるのが、Palo Altoという市の強さかもしれない、と思います。shinaさんがお好きなクラシック映画がある時に、一度足をお運び下さいませvv
今度行く映画は「ゼンダ城の虜」という、大変古い歴史ファンタジーです。原作大好きなのですが、映画は観たことなかったので、うきうきと行ってくるですよ~♪


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