私の欠片を探して

【舞台】
b0059565_132714.jpg劇団・大人計画の舞台劇、「キレイ~神様と待ち合わせした女」。以前に友人からもらったDVDを観て、大層感激しまくった。
それがキャストを一部変更して再演されたものがTV放映されたとのことで、またまた彼女がDVDにおとして送ってくれたんだよ。今まで彼女からもらったものや教えられたものは、例外なく私の宝物になっている。

初演よりセットや演出が洗練されて豪華になってる分、ストーリーもわかりやすくなった印象。その分、初演の勢いある舞台から、ややそつなくなったような感じも受けたけど、それは役者さんの交代によるものか。
ストーリーに関しては初演版を観た時に書いたので(過去日記)、今回は役者さん中心に感想をば。



今回の主演は元々酒井若菜だったのが、急病により鈴木蘭々になったとのこと。私は彼女の演技は観たことなかったけど、歌は好きなので、ミュージカルでどうなるか楽しみで。
期待通り、すごく歌が良かったよー! かなり短期間しか練習できなかったと思うのに、演技も私的には十分満足。

奥菜恵がとても良かったのは、あの全身ポジティブみたいなパワー。7歳の頃から地下に監禁されて、年数としては10年たっていても、彼女の内面の時間は誘拐の翌日から始まっているような、子供の好奇心いっぱいな感じだった。
それが未来のケガレ(ミサ)を演じた南果歩の、また全身から力をふりしぼって叫ぶような演技とよく繋がっていたように見えたんだね。
今回の蘭々はというと、むしろずっと監禁されてて、暗闇からいきなり明るいところに出てきて、恐る恐る始めてみるってところからスタート。回収業にどんどんはまっていっても、やっぱり隠し切れない危うさみたいなのが香ってた。
ペアを組んだ大人役のミサは高岡早紀。昔の元気いっぱいはちきれそう!な頃しか見てなかったので、随分きれいになってて驚いた。私が見てなかった間に彼女が備えた(と勝手に信じる)たおやかさや柔らかさが、蘭々のどこか脆いケガレの成長した姿にふさわしく、ラストシーンの抱き合う2人にはマジ泣きだ。

他に変わった役者さんはというと、まずはハリコナBの岡田健一。アイドル時代から全然アナタを知らない私を許して。
初演の篠井英介は個人的にちょっと物足りない気がしてたけど、岡田君はかえって濃いよーっ!ってぐらいのノリの良さ。歌から踊りからゲイから女装まで、どんなことでもやっちゃうよ。
ハリコナAの阿部サダヲの可愛さに対抗するなら、これぐらいでないとな!って最後は思ったよ。だってサダヲちゃん、可愛すぎなんだもん。客席でちゅーしてもらった人が羨ましいのなんのって。最後の「なんと、まあ!」って叫びは、ほんとサダヲちゃんが言ってくれて嬉しかったなー。

ダイズ丸は大好きな古田新太から、橋本じゅんに。古田さんの飄々ボケボケ味のダイズ丸がどう変わるかと最初は心配だったけど、そこはさすがじゅんさん。あの勢いと迫力でつべこべ言わさーん!みたいな。「生きたい!」の叫びが響きわたる。テンポの早いダイズ丸も良いもんだ、と思わせてくれました。

クドカンはジュッテンからマジシャンに役を移したわけだけど、これは舞台に結構な変化をもたらしたような。
この「キレイ」は、マジシャンという狂人が引き起こした悲劇であるわけだから、彼のキャラがどう演じられるかというのは重要だと思うんだけど。
初演の山本密は、ギャグもこなしながらも、どこか正統派の悪役っぽさがあったんだが、クドカンはなんというか、ああクドカンが演じているのねーというようなカラーになってて、それが前のジュッテンとも重なってしまって、面白いけどちょっと複雑な味。これが初演だったらそれで受け入れていたと思うけど。
新しいジュッテンの大浦龍宇一、これまた前回のクドカンのイメージがあって、彼の方が真っ直ぐな分、アクに欠ける気もしたりして。サングラスとっちゃうといい男なのが幸か不幸か。でも劇のバランスからいくと、この配役の方が良いのかのう。

前回のままの役者さん達には、前回以上に脱帽しきり。
片桐はいりは化粧度アップで、でも根本の頼りになるぜ肝っ玉母ちゃんパワーは相変わらず。胸の谷間がくっきりと!(笑)
大好きだった秋山奈津子、今回で一層好きになったよ。彼女がミサに言うセリフ、「もしあなたが苦しんでるなら、一からやり直してみるのも悪くないわ。そうなっても、きっと私は変わらずあなたが好きよ」というのが、このお芝居の中でも大好きな言葉のうちの一つ。これをケガレ=ミサに言うということに意味があるんだもん。彼女はいろんな面で、ケガレの背中を守って押してくれた人だなあ。偽善業と言い切って、ケガレの親切を自分のものと言い切って、そんな底抜けの潔さが最高です。あの脱ぎっぷりにも表れてたし(笑)
マタドールの猫背椿さんの「シャブーー」は健在でした。前回より外見は気に入ったけど、お尻ペンペンシーンがなくなったのが残念だ。
メンスシスターズはメンバーが増えてたね。アクの強いギャグのようでいて、これまたケガレの内部に繋がる大事なファクター。なので、メンバー強化は良かったな。


と、一頻り自分勝手に吐き出した後で、やっぱりいい話だなあとしみじみとしてしまう。
人の数だけ悲喜劇があって、自分という一人をとっても、消したい過去ややり直したい思い出も色々と。そんな思いと時間を内包して、人間という存在はできている。
全部を曝け出して並べてみたら、一体どんな風に見えるんだろう。
だけど、たとえば自分の中身から、嫌いなものだけ消してしまえるとしたら、そこにいる自分はどうなるか。好きなもの、いい思い出だけ残して、理想的な自分になれるだろうか。

ケガレは外に出て、忌まわしい過去を全て忘れて、キレイなものをいっぱい見て、触れて、そんな思い出で自分を満たそうとしたけれど。それでも最後は置き去りにしてきた過去=ミサのところに戻っていった。

本当の自分を探そう、なんて言うけれど。嫌なものを剥いていった中心にあるのが本当の自分なんじゃないはずだ。そんなことを言う人達は、ただ自分が忘れたいものを受け入れられないから、何かにすり替えようとしてるようで。
だってどんな小さな欠片さえも、今の自分を作っているものだから。
嫌なことも楽しかったことも全部ひっくるめて、今この瞬間の自分だから。

それでも背負うものがあまりに重くて、ケガレのように投げ出そうとしても、責められないよ。
荷物が多すぎると、足を前に出すこともできないから、一旦降ろして自分という器を大きくしてから、また取りに戻ってもいいじゃないか。
そうして時間をかけて、いつか一つになればいい。何度も何度もやり直して、どんなに長くかかっても、そうしようとあがくあなたを誇りに思う。
キレイになったあなたの笑顔が、きっと誰かの糧になる。
選んで自由で 裸の世界 はばからないわ あたしはキレイ
裸で まぬけで あたしはキレイ
けがれて けがれて あたしはキレイ

ラストのケガレ=ミサの笑顔は、初演でも再演でも、忘れられない素晴しさです。
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by senrufan | 2006-05-24 11:59 | Trackback | Comments(0)
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