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無数にある側面

お嬢が11月7日~10日、学校の泊りがけのScience Campに行く。
臆面もなく本人の前で大喜びしてみせた私(…)、早速友達と夜遊びする約束をしたりして。

今日判明したことではこのキャンプ、各種書類とお金を事前に払わなければいけないらしい。
締め切りは実は今月の12日だったらしい。


私なんか断崖から飛び降りた方がいいと思うことが時々ある。(書類を書きなぐりながら)

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【読書】
無数にある側面_b0059565_15215774.jpgジョアン・フルーク著「ファッジ・カップケーキは怒っている」を読む。クッキーショップを経営するハンナのシリーズ、第5弾。
限られた地域・決まった登場人物でミステリーのシリーズを4巻以上続けていくのは、生半可な苦労ではないと思うのだが、このシリーズはハンナが作るお菓子に美味く上手く絡めて、毎回最後まで読ませてくれる。

こういう地域型ミステリーのパターンの一つが、「長い間知っている人間が、実は自分が知らない面を隠し持っていたことの発覚」。
新しい人間が災いを運んでくるのではなく、実はそれぞれの歴史があるご近所同士の、個々の軋轢が生む事件。長い時間くすぶっていたものが、ある日突然あふれ出す。
もしかしたらお隣さんも…?と思わせたら、まずは成功。自分にもあるかもしれない、というのが一番恐怖がリアルになる。
誰かがどこかで見ているかもしれない。その笑顔の裏に突如表れた、隠された暗い過去……!

以上、火曜サスペンス劇場についてお送りしました。

ところでハンナシリーズ、ありがたいことに全然そんなスリルもサスペンスも恐怖もなし。
事件は勿論悲しいけれど、犯人はやっぱり怖いけれど、おいしいクッキーと愉快な家族と、にぎやかな恋のさやあてもあって、十分笑顔で読み通せる。
毎回レシピが幾つかついていて(クッキー10ダースの分量!)、ハンナも登場人物も、どのお菓子もこぞって褒め称えるのだけど、そんなところがとってもファミリア。
だってこっちの料理番組で、作っているホストが「This is really,really,really good!!」を連発するのと同じだもんね。



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【時事】
ローザ・パークスさんが昨日、デトロイトで亡くなった。92歳。
彼女の勇気が世界を変えるきっかけになった。


お嬢が今日の昼休み、カフェテリアで友達を待っていたら、上級生らしき女の子のグループが寄ってきて、まずは英語がわかるかと確認し、さらに「黒い髪の子とは一緒に食べたくないんだけど、Little girl」と馬鹿にされたそうだ。その女の子達は、白人と黒人のグループだったという。

お嬢が幼い頃にディズニーランドなどの人が大勢集まる場所に行くと、こっそり彼女に悪いことを仕掛けてきたり、嫌な言葉を投げかけてくるのは、なぜか決まって黒人の子だった。

幾つかの会社のビジネスマンの方達と話す機会があった時、たまたま人種偏見について皆の意見が一致した。黒人がヒスパニックやアジア系をいじめ、ヒスパニックはアジアを馬鹿にするという図式が良く見られるという。「黒人は、今や自分達がアメリカでNo.2の地位を獲得したと思っているようだ」と意見した人もいた。

自分達がつらい歴史を持つ為に、それを繰り返すまいとする人達がいて。
そのつらい歴史がゆえに、いつまでも恨みを捨てられず、自分の子孫にまで伝えていこうとする人達がいて。
自分の境遇を、その歴史や人種のせいにする人達がいて。
先祖の罪を、せめて自分達ができることで返そうと奮闘する人達がいる。

過去に起こった出来事はあくまでそこに横たわるだけで、それをどう解釈するか、自分をどのように関わらせるかは、どこまでもその人の問題であり、他人が軽々しく口出しできることではないのだけれど。
過去に、何かを良い方向に変えようとひたむきに努力した人を真っ向から否定することは、決して安易にやってはいけないことと思う。
歴史とは過去の事象であり、経験であり、自分達が何かをそこから得る為の材料である。そして国を超えての歴史を学ぶことに関して、制限はあっても可能である。学ぶべき材料は無限に近い。

しかし歴史という規模のものに限ってのことでは決してなく、その根本にあるものは。
例えばいじめられて悲しく思ったなら、他の人にはしないよう努力することで。
自分が言葉がわからなくてつらい思いをしたなら、せめて自分の国への来訪者にできるだけのことをしたいと願うことで。
立ち向かう勇気と共に、とどまる勇気、律する勇気も確かに存在する。
フェアであろうと心を砕く人を、勇気ある人と呼ばずにいることはできはしまい。

お嬢はその小さな身体でもって、私の何倍もの密度で、このアメリカという国を体感し続けている。
by senrufan | 2005-10-25 15:22


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