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出たとこ勝負の道行きは (10)

「国民国家の動揺、大衆社会の問題、代議制民主主義の機能不全、帝国主義と人種主義、
反ユダヤ主義、民族問題や難民問題、国外追放と収容所による『民族浄化』の政治、
イデオロギー的思考停止、どれ一つとして、昔話にはなっていない。
その意味で、全体主義は過去の出来事ではないのである」
   ----- 川崎修 「ハンナ・アレント」より


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感謝祭前後の大セール。
Black FridayからCyber Mondayの期間、皆様は欲しいものを無事ゲットされましたでしょうか。

実は11月に入ってから、右手首がやや腱鞘炎気味になりまして。
PCワークが増えていた時期で、前々から、気をつけないとヤバいな、と思っていた右手首が、
マウスでクリックするたびに、とうとう悲鳴を上げ始めちゃったんですねえ。はあ。(ため息)

で、考えたのが、マウスからトラックボールへの変更。少しでも負担が減るかな、と。
別にセール時期をねらわんでも、という備品でありますが、一応Fry'sに見に行ったんですよ。
当然、安くもなんともなってなかったんですけど。

でもサンプルを試してみて、ううむ、これは慣れるのに時間がかかりそう、と思い。
短気な私は、結局買わずに、家にあった別なマウスを取り付けて、両手でマウスを使うことにいたしましたです。
マウスの二刀流。ゾロみたいに口にくわえれば、三刀流。(なにをしたいんだ)

意外とこれが良くってですね、たとえば右手のマウスでカーソルを動かして、当該箇所を左手のマウスでクリック。
トレーニングもいらず、すぐに楽に使えるようになった上、右手の負担が減って、痛みがかなり軽減されましたです。

ちなみに隠れた目的は、両手を使うことによるボケ防止です。(堂々)

* * * * *

【旅行】

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バンクーバー旅行記録、あと2回!
なのに、なぜ今回は、米国ワシントン州から、なんですか。

や、フェリーに乗って、ビクトリアからバンクーバーに戻った夜、翌日はどこに行くかを相談したのですが。
家族全員、バンクーバーで絶対観光したいところ、というのが、ほかに見つからなかったんですよ。
有名なキャピラノつり橋は、高所恐怖症の私が死ぬし、グラウスマウンテンもゴンドラに1人$42と聞いて、心が折れまして。(軟弱すぎ)

目的なく、あちこちのんびり回るのが一番楽しそうだったので、そうしようかとも思ったのですが、
翌日の夜はシアトル泊ということを考えて地図を見ていると、どうしても行きたくなってしまった場所が。
それは、ワシントン州にあるオリンピック国立公園でございます。

一度訪れてみたいと思っていた場所なのですけど、広大なので、とても短時間でどうこうできる公園ではなく。
おまけに移動時間を考慮すると、公園に滞在できるのは、せいぜい3時間。
そんな短い時間で、かえってヨッキュウフマンになるんじゃないか、
でも、ここまで来たならせっかくだし、と心を決め、
早朝にバンクーバーを出発し、再び車で国境を越え、一路オリンピックを目指したのでありました。




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ビジターセンターに辿り着き、レンジャーさんに、一番短時間で楽しめるところはどこですか、とうかがったところ。
オリンピックは大きく3箇所、つまりCoast(海岸線)・Forests(温帯雨林)・Mountain(オリンピック山脈)に分かれているのだけど、
一番短時間で周れるのは、Harricane Ridgeだ、と教えていただいたのです。

ところが、教えていただいたにも関わらず、私が行きたいのは、
実は温帯雨林のHoh Rain Forestのエリア。決めてるんなら聞くんじゃねーよ。
行くとしたら、これぐらいの時間がかかりそう、というのを旦那がざっくり計算してくれて、なんとか2時間以上はいられそう。
旦那もお嬢も、いいんじゃね?と言ってくれて、あああ、ありがとう、ありがとう。
頑張って運転するから! 飛ばすから!(ヤメロ)


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途中で通りがかったのは、Lake Crescent
三日月形のGlacial Lakeで、氷河の湖水は大変に澄んでいます。
その美しさに、ぽーっ、としばし見惚れていましたら、旦那から急かされて、おお、いかん。


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予定時間より早めに着けて、一安心。
何本かあるトレイルのうち、ぐるりと一周して戻ってくるSpruce Natureと、
本当は片道18マイルのHoh River Trailを、時間が許すところまで行って戻ってくるという、
トレイル2本を歩く計画で。
まずは、1.2マイルのSpruce Natureから出発です。


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歩き始めると、というか、その前から、空気の違いが歴然で。
毎年雨量が減って、水不足が年々深刻化しているカリフォルニアから来た私には、
こちらのしっとりとした空気は、思いっきり吸い込んでも、なお足りないぐらいに甘く感じられましたですよ。


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Hoh Riverに至ってから、起点に戻るトレイル。
どうでもいいけど、こおゆうところに来ると、なぜか必ず石を積んだり、流れを小さく堰き止めたりと、土木工事を始める旦那です……


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続いて、長いトレイルを真っ直ぐに。
空気の綺麗さを物語るように、木々に生える苔も豊かです。


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なんでオリンピック公園の、それも温帯雨林に来たかったか、というと。
動機は大変単純で、以前に読んだミステリーがオリンピックの雨林が舞台だったので、
それが頭にあったのですね。

人類学者のギデオン・オリヴァー教授を主人公とするシリーズの一作目、「暗い森」
オリンピック公園で、数年前に殺されたと思われる人間の骨が見つかり、
その凶器とされたのが、一万年前に絶滅したと言われる部族のものであると鑑定されたことから、
オリンピックの中を探索することになるオリヴァー。
書かれたのが1983年ですから、今のような複雑なトリックや心理劇はありませんが、
その分、すっきりと力強く楽しめるミステリーで、シリーズ全て、何回も読み直しているお気に入りばかりです。


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で、なぜ特にこの本が印象に残っているかというと、この中にヤヒ族という、
今では絶滅したと言われるネイティブ・アメリカンが数人登場するのですね。
この本のおかげで、イシという、ヤヒ族最後の人間と言われた人の存在を知りました。

ネタバレになりますが、犯人かと疑われた男性は、この雨林の奥深くで、
すでに彼らが過去に営んでいた生活様式も失って、キャンプ場のゴミを漁って食料や衣類を得るような生活をしていた彼らに、
彼自身が研究していたヤヒ族の生活を教えて、自分もまた、彼らの一員として暮らしていきます。
そのことが、すごく心に残ったというか、いろんなことを考えさせられてしまったのでございます。


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文明が、とか、白人とインディアンが、とか、そういう定型の話も、勿論大切なのでしょうけれど。
ただ、そういう術を徐々に失っていく怖さ、失ったことにも気づかない悲しさ。
またその思いは、単に傲慢な見下しなのではないか、という葛藤など。
歴史上のこの手の話に触れるたび、いろんな気持ちが心の中で交錯するのです。


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何回も書いていますが、私が定期的に国立公園のような場所に来たくなるのは、
自分の手が決して届かない何かがある、ということに対して覚える畏敬の念を、
時折強く感じたくなるからで。
絶滅という言葉に感じる感傷は、あくまで人間という立場だからこそ覚える、
非常に身勝手なものにすぎない、ということを、自分に言い聞かせたくなる時があるのです。


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念願(?)叶ってのオリンピックは、鬱蒼と茂る森と、その隙間から差し込む光で、とても美しい場所でございました。
願わくば、ほかの場所も行きたかったのですが、それはまた機会のある時に。


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それでも、必死こいて歩いたおかげで、時間に余裕ができて、
もう一本短いトレイルを歩くことができましたよ。
Hall of Mossesという0.8マイルのトレイルで、文字通り、様々なモス(苔)が見られてゴキゲンです。


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もしこの森で、原人に出会ったら。(妄想)
どうしたらいいのか、どうやればベストな邂逅となるのか、全く見当もつきません。

それは突き詰めてしまえば、相手の”本来”を尊重したいという気持ちがあるから、と言えなくもなく。
数多の不幸な歴史を通じて、それが学べたことのひとつですから。
ただ実際には、そう簡単にいかないとわかっているのも、同時に学んだことでありますね。


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夏の家族旅行の最後を飾るにふさわしい場所でございました、なんつって。
自然は当分遠慮したい、とお嬢が言ったから、バンクーバーを目指したのに、
結局、大自然で終わったね、という、なんとも我が家らしい締めくくりです。

あとはもう一回だけ、旅行中に行ったレストランのまとめで終わりです。

(続く)


Olympic National Park
3002 Mount Angeles Road
Port Angeles, WA 98362
by senrufan | 2014-12-14 14:23


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