世界が美しくあるように

「人より少なく苦労して人より多くの利益を得ようとするのは薄志弱行の者のやることだ。この考えが一度芽生えると、必ず生涯不愉快の境遇に陥る」
   ----- 陸奥宗光
        (日本人、外交官、1844年8月20日生まれ)


お嬢の学区では、22日から新学年が始まるのですが。
同時に、そろそろ大学進学の為、お子さんが親御さんの下を離れる時期でもありますね。
我が家も来年の今頃は、涙にくれているのではないかなー、と思うです。ええ、私が

先日Twitterで、こんな言葉を教わりました。
2009年7月に亡くなられた川村カオリさんが、7歳の愛娘のルチアちゃんに残した手紙からの言葉だそうです。

「ママからのおねがい

夜更かしをしないでください
ジャンクフードを好まないでください

乳製品をさけてください
体が冷えることは避けてください

がまんをしないでください
強くあろうとしないでください

いっぱい運動をしてください

こうでなきゃだめというマイルールをつくらないでください
まちがってもまっいっかと思ってください

こんなひもあるかと鼻歌でもうたってください
理想など追い求めないでください

ここじゃないと思ったら逃げてください
あなたを大切にしない人と長くいないでください

この世界は強くはできていないから
この世界は思ったよりきれいじゃないから」


乳ガンで苦しまれたことから、最初の部分はそのことに対するアドバイスでありますし、ほかの文章も、この時期の別離と一緒にして良いかどうか、なのですが。
それでも、母親が一人娘に贈る言葉として、これ以上正直なものがあるかなあ、と思いましたので。

新しい年を前にして、真っ直ぐに頑張ってほしい、夢を持って欲しいと願い、言葉にして子供に伝えるものの。
実はいつも心配でたまらなくて、困難に遭えば恥じることなく逃げて欲しいし、嫌な思いは絶対しないで欲しいし、その為ならヘタな夢など持たないで、などという思いを必死に隠しているのが、親である私なのでございます。

* * * * *

【学校】

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お嬢のこの夏のアクティビティは、針治療や母ちゃんの強制お供(…)だけでなく。
初めて地元のカレッジのオンラインクラスを、1つ取ってみたのですよ。
社会学カテゴリーの中、Social Problemを扱ったクラスです。

なんせ初めてなもんで、申し込み時にもアレコレぐあああ、なことがあったのですが、まあそれは置いといて。
無事クラスにログインして、どきどきしながら自己紹介をポストして。
30名ほどのクラスの中で、お嬢は当然ながら最年少。あとはほとんど社会人の人ばかりで、最高60歳近い人もいらっしゃったとか。

購入したテキストを元に、いよいよクラスが始まったのですが。
いきなりお嬢が打ちのめされたのは、
「米国社会の問題は、大抵が金持ちの白人、そして社会的に成功した移民に原因がある。特に、日本人はその最たるものだ
という、テキストの主張でございました。




Environmental Racismなどについての以前の記録で書いた通り、米国では居住地によって、所得・教育レベル・安全性などがかなり明確である為、どこに住んでいるかによって、その人の背景もある程度判断できるのが現状です。
今回のお嬢のクラスでは、大変言いづらいことではあるものの、ある程度豊かなエリアを住所としていたのは、お嬢とほんの2~3人だけで、他の生徒さんは治安が悪い、低所得エリアの人がほとんどだったのですね。

そしてそういう人達が、一斉にテキストに賛同した主張を熱く展開し始めたものですから、世間知らずの最年少、富裕エリアの日本人という三重苦を背負ったお嬢は、とても口を出すことができなくなってしまったのでございます。
おまけに、そういう人達に押されたのか、比較的穏やかに見えていた人達がドロップしてしまい、ますます孤立無援の状態に。

お嬢も、自分が恵まれていることは承知していましたし、思い上がっていたわけでもないと思うのですが。
周囲に全く味方がいない状態にまで囲まれたことが初めてだった上、なまじ自分が恵まれていることを知っている分、反論することもできないという、大層ストレス度の高いクラスとなってしまったのですね。
実際この期間で、またアトピーが悪化したもんなー……


元々今回のクラスは、成績や単位目的ではなく、ただ学んでみたかったから取ったというものだったので、早々にDを覚悟はしたのですが。
それでも言える時は言おうと、子供に差別意識を持たせないようにすることも大事という考えの元、
「自分が小さい頃、クラスの子は移民がほとんどで、髪の色や国が違うというのは、自分にとって当たり前のことだった。子供が差別や違いを意識するようになるのは、親や大人の意識付けが大きな原因であるので、それは極力避けていかなければ」
という意見をポストしたところ。
早速ついたレスは、
「それはただの理想で、実際は金持ちやProfessional immigrant(特に日本人)達が、自分達にその差を意識させるのだ」
という反論で、メキシコ出身の35歳の男性からでした。
ちなみにこのProfessional immigrantというのは、高学歴であったり特殊能力を持つ為、仕事の保証があって米国に来た移民のことを指すそうですが、クラスの彼らは、ある程度以上の生活レベルを持つ移民であると拡大解釈して、攻撃目標としていたそうです。

その後テキストは、更に「核家族」についても言及し。
政府が核家族を前提にした政策を立て、メディアがそれを煽るようなホームドラマを作り、アメリカ中が核家族=しっかり両親がいて、子供が2~3人、が幸せであるかのように見せていることを批判しています。
これについては賛同できる部分も多々あるのですが、ここでお嬢は、核家族という、もう一つの”苦”を負わされてしまったのですね。

親が大学出だから悪い。両親が揃ってるから悪い。
お金を持っているから悪い。収入があるから悪い。学校に行ってるから悪い。
それらが人種に結びついて、ますます絡み合ってしまえば、早々ほぐすことは叶わないのです。


お嬢が通った小学校で、色々ボランティアをしてきましたが。
家で宿題をやってくる子というのは、親がそれなりの収入や教育がある人達が多いのですね。
逆にやってこない子というのは、親自体がそれなりの教育を受けてこなかったこともあって、そういう意識が芽生えない家庭の子が多く、それがヒスパニック系の家庭に特に多かったことは否めません。

アジア人が金持ちだとか非難されますが、彼らはちゃんと努力するのです。
中国人、韓国人、そして日本人、皆英語は全然わからなくとも、わかろうと努力もするし、必死に追いつこうと勉強するのです。
中にはやり過ぎの場合もあるでしょうけれど、宿題がどういうものかを知っていて、教育が大事だということを子供に伝えている点に置いては、到底非難される筋合いはないのです。

でも、家庭環境がそうではない子供達にとって、努力することのアイディアそのものを植えつけるのが難しい。
加えて、上に上がろうとする時、仲間や理解者がいない状況で、一体どこまでできるのか。
荒れている高校に熱心な教師がいて、生徒を引き上げようとするに、その子は結局周りの悪い仲間に強制的に引き戻され、諦めてしまう。ドラマのようですが、これが相当現実、だったりするのですね。

周囲に合わせること、周囲の圧力を感じること。
その方向性は違っても、生じる気持ちと行為は同じとして。
だったら、その方向性をポジティブなものにする為には、少なくともメキシカンや南米の人間を雇用しない政府が悪いだの、金持ち移民のせいだの、そんなネガティブ意見が多い環境では、絶対果たせないわけで。
特に大人が口に出していけば、続く子供もそうなるので。世代を渡って続けることは、ぜひとも阻止したいことなのに。

出口がないなあ、と思います。
それが、辛くて仕方がないのです。

お金持ちという意識は全くない私達ですが、少なくとも寄付と言われた時に、ある程度の金額を出すことができ、保険にも入ることができ。
贅沢品を買う余裕こそないかもしれませんが、本当に必要なものには、迷うことなく手を出せることを、しみじみありがたく思っております。

そんな自分が、そうではない人達に対して、一体何を言う権利があるのか、と躊躇いながら。
同時に、自分達は努力してきた、それだけのことをしてきた、そうしないあなた達が悪いのだ、と言いたくてたまらない。
こういう気持ちを抱いてしまったことが、このクラスを通じて、お嬢が一番ぞっとしたこと、だったそうです。


米国の人種差別がなくならないのは、差別をする側が何より悪いのですが、差別される側にも問題がないわけではない、というのが個人的な意見です。
実際、本当に苦しんでいる人達が大勢いる中で、その立場を言い訳にして、自分を楽にしている人達が確かにいる、と感じずにはいられません。

何か批判されれば、自分達の肌の色のせいだ、人種差別だと反論する。
何もせずに、ただただ自分の人種のせいで、周りが差別するのだ、と言ってはばからない。
そうしていれば、自分が努力しないですむから。人のせいにしている限り、自分のプライドは保たれるから。
そして、こういう人達の方が声が大きかったりするせいで、そのコミュニティ全体が、ネガティブな方向に引っ張られてしまうこともあるでしょう。
全く、人種に限った話ではないこと、なんですけれど。

そういう人達は、相手が自分より下にない限り、プライドが許さないので、私達が彼ら以上に苦しまないと気が済まない。そんなことに、私達が付き合う義理はない。
が、生まれた場所がそこだったというだけで、本当にどうしようもなく辛い思いをしている人達も、確かにいて。
そういう人達の為に、私達はどうしたらいいのか、これからどう変えていけるのか、ということについての答えがない。
いや、実際はやることは決まっていて、例えば子供の教育などから、やれることは色々とあるのに、それを口にすることができない場と空気。

良い場所に住んで、良い学校に行けて、親が揃っているということで、口に出さずに飲み込まなければならなかったこと。
差別されていると訴える彼らからお嬢が受けたのは、やはり差別であった、と思うのです。

そういえばずっと前に、移民について、こんなことも書いてたなー。


そのクラスも、今月初旬に無事終了。
いっそドロップしようか、と迷いながら、こんなことを学べる機会はないから、という思いと、あんなヤツラに負けてたまるか、という意地で続けたクラスは、Participationの点こそ悪かったものの、あとは予想以上の成績を修めてくれたお嬢です。(親バカ)
本当にいい経験だった、と言った彼女に、親バカ万歳。いじめっ子の大人に、中指立て。

さて、高校の最終学年が始まります。
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by senrufan | 2011-08-20 14:12 | Trackback | Comments(8)
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Commented by こっぺ at 2011-08-23 20:34 x
そうでしたか。お嬢さんすごいですね。私はとっととずらかってたと思います。。。。前にカレッジで、Ethnic Studyをとった時のことを思い出しました。Native American vs Whiteでしたけど。差別の歴史を知るってある意味差別を助長してるなと思いました。
辛いけど、いずれぶつかる現実ですね。
彼らとはどこまで行っても平行線なのです。だって本当に、最初から違いすぎる。それで逃げてきたから、いつまでもなじまない私があるのです。涙。きっといつかそんな困難を乗り越えて仲良くできるひとができたらなあと思うけど。
Commented by ゆみたち at 2011-08-24 02:02 x
お嬢、、!
出かける直前で、でも書き込まずにはいられない。
川村さんの娘への言葉も、同じ親としてとてもわかる。
辛かったら逃げていいんだよ、と私もお嬢にも息子にも言いたい。
けれど、逃げてばかりで本当は楽をしたいだけの人間になったら。
強くあろうとせず逃げて、何かを成し遂げた人を批判するだけの人間になったら。
でも辛い思いをして心と体を壊したら、、。
でもでも、これからの過酷な時代をいやだからと逃げていくだけでいいのか、、。
と、堂々巡り。
うああ!うまくかけなくてすまん!
これからの未来を思うと暗澹とする事もあるけれど、彼らが生きていく世界が美しくあるように、私も自分にできる事をしていこうと思う。
まずは今夜スタバだ。



Commented by Miyuki at 2011-08-24 08:53 x
*こっぺさん
オンラインだから続けられた、と彼女は言ってます。普通のクラスだったら、そんな四面楚歌のような場所にいられたもんじゃありませんよね。と同時に、もしかしたら生で会って話をすれば、そんな意図はなかったのかもしれない、文字だから強く受け取ってしまったのかもしれない、とか、もう考え始めればきりがないのですけど。
ほんとにおっしゃる通り、繰り返し差別について教育することで、逆にそれを刷り込んでしまっている面も大きいと思うです~。だって、繰り返すということは、それだけ意識しているということですよねえ。差別意識がなければ、はなっからそんな言葉自体出てこないと思うんですよ。
いえいえ、これはぶつかったら解決する問題とは言い切れないですよ~。そう言って、踏み出さない理由にしてしまってる私が一番最低です……(涙)
Commented by nikkeilife at 2011-08-24 08:56
Miyukiさん、お久しぶりです。それはお嬢さんにとって、そしてそれを受け止めてあげるMiyukiさんにとって、辛い体験でしたね。でもこの「成功した移民が悪い」説、恥ずかしながら聞いたことありませんでした。つか、これこそが移民が求めるアメリカンドリームじゃないんですか?!核家族の批判も受け入れがたいです。それより「どんな構成でも本人同士が良いならそれを家族と受け止めてあげよう」みたいな説を押して欲しかったです。

若い頃は組合運動や草の根活動を支援したのですがその頃知り合った方々、移民人で最小限の生活もままならぬ状態の方々でも、世間知らずでそこそこ裕福に育った私を同志として快く受け入れてくれたことが思い出せます。あの方達のことを考えると、お嬢さんのクラスメートたちのコメントやテキストの主張などが冒涜としか思えなく、とても悲しい思いに駆られます。

何かを学ぼうと学校のクラスをとったのはいいけど、自分の考えに問題はないか、違う論理や意見を考察するつもりがないんですかね。問題多いアメリカ、こんなネガティブな考えを持つ人たちが増えたらどうなるんでしょうか。と、こちらまでネガティブなコメントになってしまい、すみませ~ん!
Commented by nikkeilife at 2011-08-24 08:57
再度コメントですみません、前回のは字数が多すぎたみたいです。話はそれますが、↑のゆみたちさん、お会いしたことはありませんが、最後のスタバの一言、笑えました!とても素敵です!
Commented by Miyuki at 2011-08-24 08:58 x
*ゆみたちさん
お忙しいところ、ありがとうですー!
そだよね、むしろ積極的に逃げてほしいし、いつも安らかでいてほしい。でも、それだとどうしようもないだけのヒトになっちゃう。
誰かのせいにするばかりの人間にはなってほしくないけれど、自分で全て背負い込もうとするのは、どうかやめてほしい。
なんて身勝手なんだろうね。結局は自分で掴んでいかなきゃいけないってわかってるのにね。
うん、私も自分にできることをしなきゃいけないね。マンガに逃避していちゃいかんのだ(……)
ということで、後ほどスタバで!
Commented by Miyuki at 2011-08-24 09:06 x
*アヤコさん
わーん、リアルタイムコメント、嬉しいですー!
そうそう、そうなんですよ。彼ら自体が移民なのに、移民同士で足を引っ張り合ってどうするんだよー、って思いますよね。

アヤコさんが出会われた方々、素晴らしいです。いじめでも国際問題でも根っこは同じだと思うんですが、自分が辛い思いをしたなら、それを他の人にやっちゃいけないんですよね。差別も虐待も戦争も、続くということは、自分が受けた経験を他人に施す、自分しか見えないところから来ているものなんですよね。

と言いつつ、私はほんとに恵まれてきたので、そこまでドン底の思いをしたことがないから言えるのかも、と思わずにもいられず。追い込まれた時、それだけの心の余裕を残していられるのか、全く自信がないのです……(涙)

なので今できることは、せめて少しでも、あと1cmでも、自分を大きくしていくこと、にまた帰ってきてしまうのです。そういう意味では、何かしようとクラスを取った彼らは偉いですよね~、とほほ。
Commented by Miyuki at 2011-08-24 09:09 x
*アヤコさん
ふっふっふ、ゆみたちさん、すっごく素敵でしょう? 私を始め、大勢のファンがいるのですよ~♪
ちなみに裏話として、実はこの後スタバで会うことになっているのでした、あはは(笑)


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