頂上への道は幾筋か

「勝って、勝ちに傲ることなく、負けて、負けに屈することなく、
安きにありて、油断することなく、危うきにありて、恐れることもなく、
ただ、ただ、一筋の道を、踏んでゆけ」
   ----- 嘉納治五郎
        (日本人、柔道家、1860年12月10日)


本人・親族も欠席=史上2度目、異例の授賞式-ノーベル平和賞

今年のノーベル平和賞の授賞式。
受賞者不在の式には、中国及び、中国の顔色をうかがう18ヶ国が欠席でした。
おお、来るな、来るんじゃねえ。(けっ)(世間知らずの暴言)

対抗して中国が創設したのが、孔子平和賞というものだったんですが。
こちらも受賞者不在の式となりましたが、理由はどうやら、受賞者本人にも通知してなかったらしい、というところが違います。

Newsweekのコラムに載っていた、孔子平和賞での中国の公式声明の抜粋です。

「中国は平和の象徴だし、平和を維持する絶対的な力も持っている。10億人以上の人口を抱える中国は、世界の平和についてより大きな発言権を持って当然だ。
要するに、ノルウェーは土地もなく人口も少ないちっぽけな国に過ぎないので、自由や民主主義に関する発言権は相対的に小さくならざるをえない。従って「ノーベル平和賞」の選考は世界の人々に委ねられるべきであり、少数の思い込みで選ばれるべきではない。なぜなら彼らは人類全体を見渡す一番の高みに立つことはできないし、世界人口の大多数の見方を代表することもできず、選考が偏って誤ったものになることは避けられないからだ」


China creates peace prize to rival Nobel



* * * * *

【イベント】

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バイオリニスト・五嶋みどりさんのコンサートに行って参りました。
あ、そうでした、こちらではMidoriと名乗ってらっしゃるのでしたね。

みどりさんといえば思い出されるのが、1986年のタングルウッド音楽祭で起きた”奇跡”
アメリカの教科書にも載ったという、バイオリンを2度も持ち替えて、14歳の少女がやり遂げた演奏は、当時の日本でも大きく報道され。
以来、演奏を聴くチャンスこそなかったものの、私の中に、特別な音楽家として刷り込まれたのでございますね。

アメリカを活動の拠点としていらっしゃることから、いつか、とは思っていましたが。
こちらの地元、スタンフォード大学での演奏会があると知った時、とうとう、という言葉が胸に浮かんだことは言うまでもありません。
友人一家にも声をかけ、お嬢と一緒に、会場に足を運んだのでありました。




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当日のプログラムは、以下の通り。

WOLFGANG AMADEUS MOZART
Violin Sonata in G Major, K. 301 (1778)

BÉLA BARTÓK
Violin Sonata No. 1, BB 84 (1921)

JOHANN SEBASTIAN BACH
Sonata No. 2 in A Minor for Solo Violin, BWV
1003 (completed by 1720)

GEORGE CRUMB
Four Nocturnes (Night Music II) for Violin and Piano (1964)

KAROL SZYMANOWSKI
Nocturne and Tarantella for Violin and Piano, op. 28 (1915)
(PWM Edition)


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会場内は、ほぼ満席。
みどりさん、ピアニストのRobert McDonald氏、そして、譜めくり黒子のお兄さん(実際、黒服だったもん)。
3人、じゃない、2人で奏でられる見事な音楽に、全観客が酔いました。ええ、間違いなく。

オーケストラに所属していたくせに、しかも管楽器をやっていたくせに。室内楽には大変疎く、今までコンサートに行ったのは、ほんの数えるほど。
バイオリンについても、表面的なことしか知らない上(弓で弾くんだよネ!)、低音・脇役贔屓なので、弦ならチェロの方が好き。
こんな私が、どれほどのものを感じとることができるのか。もはやド素人の挑戦、といった趣だったのですが。

そんな私でも、真剣に、鳥肌の連続でございました。

最初のモーツァルトこそ、軽やかに明るく始まったものの。
次のバルトークでは、すさまじいばかりのキレと技巧を見せつけて。
バッハに至っては、どうしてこんなに温かな細やかさが表現できるのか、と唖然とさせられて。
残り2曲では、感動がすでに頂点越えで、頭の中は真っ白なまま、ひたすら音を追うことに集中しきっておりました。

特に、彼女の奏でるピアニッシモ。
私は勝手ながら、ピアニッシモが美しく弾けるかどうかで、その音楽家の実力の一端がわかるように思っているのですが。
みどりさんの音は、絹糸のように微かで、しかし鋼のように強く、何小節でもそのまま、安定して光っているような。
たったの一瞬も途切れることなく、遠くへ、遠くへと伸びていくのです。

そしてみどりさんだけでなく、ピアニストのマクドナルド氏もまた、負けず劣らずの素晴らしさ。
定番曲もさることながら、立ちながらピアノの中の弦を弾いて演奏する、といった難曲も、文句のつけようがないほどの出来。
みどりさん目当てで訪れたコンサートでありましたが、なんのなんの、主役は2人でありました。
最後は、3度続いた総立ちのスタンディング・オベーションに応えて、アンコールにラベルを演奏してくださいましたよ。


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どの曲も聴くのは初めてだったので(えーと多分)、彼女の曲の解釈やスタイルについては、他の演奏と比較できず、全くわからないのですが。
7歳でパガニーニを弾いた少女は。奇跡を起こした14歳の天才は。
そのまま燃え尽きて消えてしまうことなく、更に遥かな距離を進んで、今では世界的に認められた演奏家に成長して。
演奏活動のみならず、非営利団体を設立し、公立学校の音楽教育に貢献する傍ら、
各国を巡りながら無料のコンサートを実施する、国連ピース・メッセンジャーという肩書きも。

その背後で、どれだけの努力と、どれほどの葛藤があったのか。
そういうことを一切感じさせることのない、圧巻のコンサートでありました。


20歳の時、拒食症治療の為、一時演奏活動を休止した経験を持つみどりさん。
その後の財団の設立や、音楽教育への積極的な参加も、大きな人生の転換期を経て叶ったこと。
ある意味、それ以降の活躍は、摂食障害を自ら癒し、克服する為の努力の道筋にあったのかもしれません。

彼女のお母さま弟さんから、彼女について語るあれこれを聞くことができたとしても、最後の最後は、本人でなければわからない経緯と葛藤があるでしょう。

だから、何百万人いるかわからない彼女のファンの中の、たった一人として。
演奏を聴けたこと、彼女の姿を見られたことを幸運に思い、言葉にならない感動を与えてくれたことに感謝して。
これからもまた細々と、彼女の足跡を追うことを続けていくのです。


Stanford Lively Arts:Midori and Robert McDonald

Violinist Midori Official Website (五嶋みどり公式サイト) 

Midori & Friends (みどり教育財団) 

NPO法人ミュージック・シェアリング (みどり教育財団東京オフィスから組織変更) 

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「母と神童-五嶋節物語」
奥田昭則著、小学館(1998/10)

私が摂食障害について関心を持ち始めた頃、ゆみたちさんから借りた本の中に、たまたまこの本がありました。

他にも、前回記事のCafé Gratitudeのオーナーの生い立ちや、学校の先生についての記事など、まるで自分が意図して寄せたかのように、摂食障害がキーワードとなって、手元に次々と集まった情報。
改めて、現在どれほど多くの人が罹っているのか、つくづく思い知ったのでありました。

Skills for Livingのシリーズが終わった後、改めて摂食障害についてのシリーズを始めたい、と思っております。
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by senrufan | 2010-12-10 13:33 | Trackback | Comments(4)
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Commented by さまんた at 2010-12-14 01:01 x
なんだか遠い国に思えるなぁ・・・お隣さんなのに(笑

五嶋さんのヴァイオリンがとても聴きたくなってしまいました!そんなすばらしいご成長を遂げていらしたとは・・・パリご出張(?)の際は私もがんばって行ってみたいものですなぁ。
Commented by Miyuki at 2010-12-14 10:28 x
*さまんたさん
もはや最果ての国でございますな。(きっぱり)

ぜひぜひ! パリにも行ってくれるといいですねえ♪ 私もCDでしか聴いたことがなかったので、生があれほど素晴らしいとは、と感動でございました~。
Commented by こっぺ at 2010-12-15 08:37 x
クラシック音痴なもので、五嶋をごしまと読んでたくらい。なぜ天才とよばれてたのか、youtubeで初めて知りました。ここ読んでからしばし夢中で五嶋さんちについてググってしまいました。いつか演奏を聴いてみたいです。
Commented by Miyuki at 2010-12-15 13:28 x
*こっぺさん
ね、ね、すごいでしょ? でも彼女のお母様から見たら、天才ではないんだそうです。あくまで教育と努力だと。機会があったら、こっぺさんにもこの本を読んでいただきたいです。エキセントリックな子育てに圧倒されます(笑)


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