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背負う歴史を問うよりも

「努力だ。勉強だ。それが天才だ。だれよりも、三倍、四倍、五倍、勉強する者、それが天才だ」
   ----- 野口英世
        (日本人、細菌学者、1876年11月9日生まれ)

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【イベント】

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芸術の秋ですね。
だからというわけでもないのですが、ここのところ、舞台やコンサートなどの予定が幾つか入っていて、ほくほく顔なのでございます。

たとえば先月末ですが、サンフランシスコで開かれた、Fall Antique Showに、家族で行ってまいりました。
歴史好き・ヨーロッパ好きのお嬢は、それがそのままアンティーク好きに繋がったらしく、最近その手のショップに、2人で行ったりしているのですが。
こういう大きな展示会は、彼女には初めてだったので、前から楽しみにしてたのです。

私はといえば、アメリカに来て間もない頃に、上司の奥様方に、大変規模の大きいアンティークフェアに連れて行っていただいたことがありまして。
場所名も忘れてしまったという情けなさですが、それこそ日本の体育館並みの建物を3棟使っての開催で、アクセサリーから家具まで、数セントから数万ドルまで。
蚤の市の巨大版といった感じの、本当に楽しいフェアでした。

なので今回のショウも、その時のイメージのままに訪れたのですが。
全く予想に反して、大層きらびやかで、アンティークどころか新商品?みたいな、お金持ちの香りが漂うイベントでございました。(庶民の嗅覚)




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入り口はいきなり、チャイナ風。中国の陶器や小物が、赤々しく飾られて。
そこから通路を進んでいけば、アンティークの家具や絵画、陶器に絨毯などなど、各ブースごとに美しくディスプレイ。
50以上ものディーラーが、それこそルイ14世の椅子からスカンジナビアの銀器に至るまで、腕によりをかけて、それぞれの専門商品をお客に見せてくれてます。

展示のみならず、講演も色々と予定されていたのですが、そちらはあっさりパスしまして。
家族3人で、おおっ、へえぇ、などと歓声を上げながら、あれやこれやと目の保養をさせてもらったのでございますよ。


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Richard Gould Antiques

さて、当たり前ですが、圧巻はやはりアンティーク家具。
永遠の憧れのライティングビューローから、テーブル、チェストに椅子に時計。
そこかしこに傷などはあったりするものの、それが風格に変わるところが、アンティークの魔力でございます。(勝手に)


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Heller Washam Antiques

アンティークって、いつ頃の物を指して呼ぶのか?という疑問が、素人には浮かぶのですが。

それは弁護士なら、100年以上前の物でなければ、アンティークとは呼べないと答えるし、
鑑定家なら、本物のアンティークとは、ほとんどの手作業が新しい機械や道具に取って代わられた1820年代から1840年代以前に作られたものと主張する、

なんてことを、とある本で読んだことがあります。
例えばこの机のように、pigeonhole、つまり伝書鳩がとどまる為の巣箱を備えているようなものは、その年代から”本物”であるらしい、という推測を強めることができるのでしょう。


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Mitsui Fine Arts

私が絶対アンティークは買えないなあ、と思うのは。そらあ勿論、財政的なことが一番ですが。(……)
全く見る目も知識もないので、商品の真偽の程や、つけられてる値段の正当性が判断できないから、というのが大きいです。


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Jeff R. Bridgman American Antiques

アンティークって、どなたもがご存知の通り、宝探しのようなもので。
華やかに商品を並べたお店以上に、蚤の市や古道具屋、知らない人の屋根裏部屋。そんなところで果たせるかもしれない貴重な”出会い”が、何よりも楽しみだったりするのでは。


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Robert Young Antiques

そういう宝探しに”無事に”邁進する為には、相当の経験と勉強が必要で。
頑張ってそうなれたらいい、などと憧れはするものの、そうはいっても、勉強だけじゃカバーできない部分もきっとあるだろう、なんて思ってしまうわけで。


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Daniel Stein Antiques, Inc.

それこそ、欧米の古い家に生まれ育って、幼い頃から親しんできた、という背景もその一つ。
お嬢がヨーロッパに憧れるのは、やはりその手の「歴史の重み」もあるのですね。

歴史の古さで言ったら、日本も全く負けてませんが、アメリカはね、どうしたって新しい国でありますから。
といっても、「200年以上も続いた、我らがold country!」と絶賛してたりするところが、大変ポジティブなのですが。
アメリカのカントリーテイストの品々、ポスターやキルトなど、歴史は浅くともアメリカならではのアンティーク類は、十分に人々を惹きつける魅力がある、と思います。


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Peter Pap Oriental Rugs, Inc.

アンティーク、つまり骨董品の価値を正確に評価するには、公式があるそうです。
年代+状態+品質+希少性=価値

つまり、どんなに良いものであっても、ありふれた物には価値は無く。
珍しくても、質や保存状態が良くないものには、高値はつかない、となるんですね。

それに加えて、その時々の市場の流行もありますし。
某貴族がかつて持っていた、なんていう来歴がプラスされれば、一気に値段が上がることもありえます。
ううむ、つくづく大変な世界だな。


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Bauman Rare Books

もし私がアンティークに手を出すとしたら、稀覯本について勉強してみたい、と思ったり。
本や作者についての勉強だったら、元々活字が唯一の趣味のようなものですから、自分的にかなり楽しそうで。
ディーラーにも収集家にもなれませんが、学ぶこと自体にわくわくできそうな。

ちなみに自分の本も、一応版数などはちょっとだけ気にしたり、帯を保存しておいたり、ぐらいはやってます。って、マンガでそれをやる意味があるんか。(爆)
こちらの稀覯本のブースでは、米国児童書の定番、「The Cat in the Hat」の初版本が、$2,000で売られておりました。(ひええ)


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Il Segno Del Tempo

などなど、その金額に重きを置くなら、ヘタな株式よりも、よほどスリリングで儲けの可能性大の、美術・アンティーク市場。
ですが、どうしたって根本にあるのは、その品物が好きかどうかに尽きる、ということは言うまでもありませぬ。

例えば、遥々イタリアはミラノからいらっしゃったらしいこちらのお店、人体模型や昔の入れ歯、医療器具の骨董品など、マニアじゃなければ買わねえよ、という品々を並べておられまして。
店番のダンディーなおじさまは、どこかドラキュラチックな服装と雰囲気で、お店の一部として立派に溶け込んでいらっしゃったのですね。(ほめてます)

好きであればこそ、というより、好きであることがその人にとっての一番の価値、なのであって。
どんな高価な芸術品でも、それを愛でて大切にしてくれる人がいてこそ、更に輝くわけですから。

ウィンザー公爵夫人のティアラより、祖母が使っていた珊瑚の数珠の方が、私にとっては価値があるように。(ちみっと無理してます)
長く、親しく、愛しむ。物との理想の付き合い方を教えてくれるのが、アンティークという存在である、のかもしれません。


THE SAN FRANCISCO FALL ANTIQUES SHOW
by senrufan | 2010-11-09 12:07


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