土から生まれて宿った先は

「人生は短すぎる。あくびで無駄にした時間は決して取り戻すことができない」
   ----- スタンダール
       (フランス人、作家、1783年1月23日生まれ)


フィドルについて読みたくて、久しぶりにとあるファンタジーを引っ張り出したら、こんな文を見つけました。
「赤はあらゆる土地において魔法の色であり、時の始まりからつねにそうだった。
妖精や音楽家の帽子はいつも、赤だった」
   ----- W. B. イェーツ著 「アイルランド各地方の妖精譚と民話」より

お嬢の日系の塾の友達で、皆の人気者だったお嬢さんが、先日日本に帰国されまして。
非常に個性豊かな彼女は、イメージカラーが完全に「赤」で、皆からも「赤い人」と呼ばれてて。
まあぶっちゃけ、毎日赤い服を着ていたから、なんですけど。

彼女と大の仲良しだったお嬢は勿論、先生までが寂しがった彼女の帰国。
しかし、それに慣れる間もなく、この冬に高校受験を控えた中3のお友達は、続々と日本に帰国していくところ。
赤い彼女を始め、全員の健闘と幸運を祈りながら、残りの冬を過ごすことになりそうです。

受験というのは、それまでの本人達の努力の積み重ね、ではあるものの。
最後の一押しをする魔法があれば、すがりたくなるのも無理はなく。
それでも、そんなことを考えるまでもなく、本人がやり切れた、という充実感を得られたら。

こちらの塾では、先週末で中学3年が終了。来月からは、高校のクラスが始まります。
今は、赤い色を見ながら指をクロスさせて、「ぐっどらっく」とつぶやいてます。カタカナ発音どころか、ひらがな発音でありますが、それでも効果がありますように。(念)

* * * * *

【イベント】

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Riverdanceを覚えていらっしゃるでしょうか。
'90年代後半から世界で大人気となった、アイルランド発のダンスを中心としたパフォーマンス。
タップのように、でもタップとはまた違う、鮮やかな足さばきのダンスは、ケルト音楽の響きと共に、各国でブームを巻き起こしたものでした。

私も御多分に洩れず、TVで見てすっかり魅了され。図書館でビデオを借りてダビングしたものを、家で何度も鑑賞して楽しませてもらいました。
お嬢が学校のアフタープログラムでタップを習っていたので、彼女はタップシューズをはいて、TVを見ながら、床で懸命に真似ていたことを覚えてます。

ブームが去って、滅多に思い出すこともなくなっていたのですが。
なんとあのカンパニーが、サンフランシスコとサンノゼに来る、という知らせをもらって、たちまちあの頃の感動がよみがえり。
即座におさえたチケットを手に、胸をときめかせながら行ってきたのです。我が家の正月、最大のイベントでありました。




リバーダンスの魅力は、そのダンスだけではありません。
歌も楽器も専属のメンバーがいて、彼らのパフォーマンスもかなりのもの。
そして今回、ダンス・歌・演奏に加えて、ロシアのフォークダンス団もそろった、豪華なコラボレーションでございましたよ。

Riverdance Irish Dance Troupは、現在3つの団に分かれてまして。
今回の北米ツアーを敢行したのは、そのうちのThe Boyne
リードダンサーのMarty Dowds、Alana Mallonを始めとする、ダンサー数十名。

カモシカのような足、とは良く言ったもので、正にその通りの、強靭かつしなやかな動きで、こちらの目を見張らせる足さばき。
アイリッシュ・ステップダンスから発展したそのダンスは、タップとは確実に一線を引いた、実に独特の迫力で観客を圧倒します。
その足の動きを見ていると、靴を1週間足らずで履きつぶしてしまう、という話を素直に信じられる、というか、そらあ無理もないよねえ……と嘆息。

アイルランドだけでなく、英国やカナダ、米国など、各国から集まったダンサー達で構成されていますが、そのほとんどが、あちこちの国際大会で賞を獲得してきたツワモノ達とか。
ソロの踊りもすばらしいですが、そんな彼らが一列に並んで織り成すダンスは、圧巻の一言でございました。


彼らのバックミュージックを勤めるのは、The Riverdance Bandの面々。
キーボード、Uilleann Pipe、Low Whistles、Fiddle、ドラム、Bodhran……4人のメンバーが操る楽器類は、時に支えとして、時に主役として、アイルランドの響きを伝えます。

フィドル(バイオリン)もすばらしかったのですが、なんといってもイリアン・パイプ
バグパイプのような響きですが、口ではなく、肘でふいごを操作しながらの演奏。uilleannとは、アイルランド語で”肘”の意味、ということをこちらで教わりました。
切なくしゃがれた、土の香りがするような。風と木々の為であるような。そんな音色が長く短く響き渡る数分に、今まで読んだケルト民話の、様々なシーンを思い浮かべてしまいましたです。

The Rivedance Singersは、ケルト語(ゲール語)を多く取り入れた歌を披露。
特に、ソリストのLaura Yanezの澄んだ歌声は、その幻想的な響きにふさわしい、実に美しいものでございましたよ。
ソプラノの彼女と対極をなした、バリトン・ソリストのMichael Samuelsも迫力でした。


床を打つダンスはリバーダンスだけじゃない、とばかりに登場するのが、The Riverdance Flamenco SoloistのRocio Montoya。
上半身をほとんど使わないリバーダンスに対して、手も顔も大変表情豊かな彼女のフラメンコは、直線と点の力強さで畳み掛けるダンスの中にあって、一際曲線の美を主張して、観客の目をうっとりと惹きつけます。

また、The Riverdance Tappers、Kelly IsaacとSean Scottの2人。
ウェストサイドストーリーのように、タップとリバーダンスの対決、というシナリオに沿って、ユーモアたっぷりにお互いのダンスを茶化すのですが、どちらのダンスも遜色なくこなしてみせる彼らに、改めて実力のほどを見せ付けられましたよ。
同時に、タップとリバーダンスの違いを、視覚的にはっきり教えてもらえたのにも満足でした。

そして、お嬢と私に大変ウケたのが、The Moscow Folk Ballet Company
ロシアからだろうと思われる、男女3人ずつの、民族衣装をつけたダンサー達なのですけど。
男性軍がそろいもそろって中年のおじさま方で、更に中年太りのお肉も身につけちゃってるのに、それでもがんばって、回って飛んで、女性をがっちりリフトしちゃうんですよ。
その姿が、ああ、ソ連がなくなって苦労してるのね、出稼ぎしなきゃいけないのね、外貨を稼がなきゃ食べていかれないのね……と、大変にこちらの涙をそそってくれまして。
懸命に踊れば踊るほど、我々の涙は更に溢れる(笑い声と共に)、という結果を招いてくれましたです。なんて迷惑な客なんだアタシってヤツは。
*-*-*-*-*-*-*-*-*

幼い頃から、民話・神話が大好きだった私は、ケルトやアイルランド民話も読んでまして。
図書館で何度も借りた、お気に入りのシリーズがあったのですけど、今となっては題名もわからないままで。
あの頃は、「フィドルの響き」というものにとても憧れて。後に、要はバイオリンのことだ、と知った時は、ちみっと肩透かしをくらった思いがしたものでした。

アイルランドを文学面から語るのであれば、はずせないのが↑のウィリアム・バトラー・イェーツ。ノーベル文学賞の受賞者であり、アイルランド文芸復興運動の中心的存在でありました。
同じくノーベル賞を受賞したバーナード・ショーも、アイルランド出身の作家でありますが、リバーダンスでは、イェーツの戯曲を参考にした一幕もあったそうで。

アイルランドの”ハイライト”の、断片的な寄せ集め、と言われてしまうかもしれませんが。
ダンス・音楽・文学と、アイルランドの芸術を多方面に渡って集め、その魅力を鮮烈に焼き付けるべくまとめられた「リバーダンス」というパフォーマンスは、アイルランドという国と、その背景の文化に、人々の目を惹きつける、立派な大使の役目を果たしている、と言えるでしょう。


この辺り、ケルト系神話のあれこれや、リバーダンスの最初のリーダーであったMichael Flatleyのこととか、書きたいことはいっぱいあるのですが。
それをやったら、またまた長くなるので、理性を持ってここで終了です。(唇を噛み締めながら)(誰かほめて)

久しぶりに目にしたリバーダンスのおかげで、再びDVDや本漁りをしてみようか、とまたもやマイブームが再燃しそうな気配。
長生きせずに、そこそこのところでこの世からおひきとりしたいと願いながら、この「やりたいことリスト」だけは、延々伸びていくのが怖いです……

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The Riverdance Irish Dance Troupe
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by senrufan | 2010-01-23 11:43 | Trackback | Comments(4)
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Commented by ゆう at 2010-01-27 23:44 x
こんばんは、ゆうです♪
娘さん、タップやってたの?!私もタップ好きです♪
高校受験で帰国かぁ~娘さん、ちょっと寂しいわね?!
そちらの塾は来月から高校クラスなんだ?!青春だわね~
アイルランド発のダンス&ロシアダンスの素晴らしさが、ほとばしる文章に
私も観たくなりました~♪
そうゆうダンスの本を探してみようぉ~楽しそう!!
「やりたいことリスト」ず~っと続いても良いのではないですかぁ~?
興味&探究心が無くなったら老けるわよぉ~(脅したりして^^;)
今のままで良いと思いま~す♪(^^)v
Commented by ☆Coco☆ at 2010-01-28 15:13 x
こんにちは〜。
ひさしぶりに拝見させてもらいました。
(日本に行っていたもので。。。)
相変わらず、おいしそうなものがたくさんですね♪
今年もよろしくお願いします。
Commented by Miyuki at 2010-01-29 03:29 x
*ゆうさん
そうかあ、確かにわくわくがないと老けますもんね! じゃあいいんだ。(きらきら☆)
でも問題は、「そんなことよりさっさとやりやがれ」リストもすごく長いということでございます……掃除とか掃除とか勉強とか…っ!!
ゆうさんならタップなどもお手のものでは?
ダンサーやアスリートの世界って、一生自分とは縁がないと思うからこそ、余計に憧れてパワーをもらえるのですvv
Commented by Miyuki at 2010-01-29 03:30 x
*Cocoさん
お久しぶりです~! そしてお帰りなさい、日本はいかがでしたか?
美味しいものもジャンクなものも相変わらず沢山で、すっかり過食の冬でございます、とほほ。
こちらこそ、今年もどうぞよろしくお願いします!


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