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色褪せさせることのないように

ジグソーパズルが大好きです。ジグソーでなくとも大好きです。
小さい頃は、新聞の折り込み広告の派手目なのを選んで(宝石屋とか)、自分で切ってパズルを作って、嬉々としてやっていたぐらい。

大人になってからも、なるべく複雑そうな絵柄のジグソーパズルを選んで買っては、ちまちまと折を見て手がけるのが、日々のぢみな楽しみで。
最低でも3,000ピース以上のものを買うので、完成までに何日も何週間もかかるのですが、それだけ楽しみが長く続くので、むしろその方が嬉しいのですね。

完成した後、額入れされる方も多いのですが、私にとっては、そこまでの過程が一番の楽しみなので。
さっさと崩して、再び取り掛かるか、次のパズル選びに勇んで出かけたものでした。

そうしたパズルも、渡米前に全て手放してしまったので、ここ数年やってなかったのですが。
先日COSTCOに行った時、クリスマス向けに「2箱で$19.99」セールコーナーがありまして。
うわあぁぁ、と内心で歓声を上げて、1,000ピースを2箱購入したですよ。
これで冬休み中の楽しみができた、と喜んだですよ。


なのに、なんで、どうして、

2日で仕上げちゃうんだよアタシったらーーー!!!(絶叫)


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再度の挑戦も、2日で終わってしまいました……
こうなったら腹をくくって、5,000ピース以上のものを買ってくるしかないでしょうなあ。(満面の笑顔)

* * * * *

【レストラン】

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ユダヤ教を信仰する人達は、kosherという食事規定を守っていらっしゃる。
日本語の翻訳だと、「清浄食品」。カタカナ表記では、「コーシャー」が米国内の読み方だと思うのだけど、私が読んだ本では、「カシェル(カーシェール)」との表記も有り。イディッシュ語やヘブライ語の読み方かな。

どういう内容の規定であるかは、Wikiに解説をお願いするとして。
隣の市のダウンタウンに、そのコーシャーのレストランができたと聞いたので、友達2人との忘年会を機に、訪問してみたのだよ。




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ガラスのドアを開けて入れば、重厚でシックな内装に驚いた。
銀色の仕切り壁の向こう側には、バーカウンターがあるらしい。
架けられた沢山の額縁には、ユダヤ系家族の写真がいっぱい。生活の一端を垣間見ることができるという意味から、できたら一枚一枚鑑賞したかった。
ヤムルカ(ユダヤ教徒男性のかぶりもの)をつけたお客さんもちらほらいて、改めてここは、ユダヤ教の人が安心して食事できる場所、と思う。

それはさておき、さて、何を注文するべきか。
ユダヤならではの料理名も並んでるし、食材の組み合わせも興味深いものが多く。どれにしようか、またもや嬉しい迷い道。
優しいウェイトレスのお姉さんのアドバイスをもらいながら、前菜やメインから数品オーダーしたんだよ。


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前菜から2品頼んだうち、まずはCurry-Brined Eggplant
Tahini Sauceで和えてあって、ピタパンがずらりと添えられてる。

カレーというから、辛いものを想像していたら、むしろちょっと酸っぱさをも感じる刺激。
友人の、「何か思い出すよね……あ、あれだよ、ウスターソース!」という言葉に、思わず全員で膝ポンだ。
淡白なんだがほっとできる味で、ピタパンがまたソフトで美味しいよ。


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もう一品は、Tuna Ceviche
Fried Plantain Chipsと、Spicy Avocado Relishと一緒に。

スパイシーというには穏やかなアボカドに、とろっとしたマグロが混ざって、口ざわり滑らかな一品。
カリカリのプランテーンチップにのせて食べれば、食感の違いまで楽しめる。
上品に見えるけど、味わいの素朴さが、どこか日常の延長のような気軽さを。


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Soup of the Dayは、Celery root soupだよ。
カリフラワーも使われてて、フライドオニオンが散らされてある。

濃厚な「食べるスープ」は、お腹の中までぐん、と届く安定感。
大家族のお母さんが、大きな鍋でことこと煮込んだような、大らかなあったかさがあるんだな。


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ユダヤのパイのKnish(クーニッシュ)は、 具が多くて皮は薄め。
定番のClassic potato knish、中はぎっしりじゃがいもだ。マスタードドレッシングで和えた、フリゼとにんじん添え。

これがまた、うまくてなあ。
英国料理のpastyや地中海のfiloとか、パイの名物料理は色々あるけれど。時々油っこいもの、質の悪い油で練ってあると分かるものに当たることもあるんだが。
このクーニッシュは、十分合格。薄めなのに、どっしりした、と感じるパイに、ほくほくじゃがいもが、またんまい。


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メインから選んだ2品のうち、Heirloom Grain Bowl
ソテーしたHeirloom Grains, ローストした野菜類、新鮮ハーブの混ぜ合わせ。
マッシュしたアボカドと、グリーンがいっぱいのせてある。

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調味料がほとんど使われていないような、ほぼ素材の味だけの丼仕立て。
でも、スクワッシュやベルペッパーといった、季節野菜の味の濃いことったら。
硬い歯応えの穀類と一緒に、もぐもぐとしっかり噛めば、更に味わいが広がるよ。


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運ばれてきた途端に、「でかっ!」と声をそろえてしまったのは、Grilled Portabella Burger
サイドには、Green Saladを選んだの。

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Challah(ハラー)と同じ生地?と思えるバンズにはさまれたのは、ただでさえ分厚いポートベロの2枚重ね。これはすごい食べ応え。
パンにはマヨネーズが塗られているけど、ポートベロそのものには、やはりほとんど調味料を使ってない。なので、中に持ってる美味しい汁、余すところなく味わわないと勿体無い。


ここまでで、すでに大満足の私達。
今年に入って、3人で訪れたレストランは数々あるけど、中でもトップクラスに入るよね。
これはデザートまで試してみなくては、と、3品選んで注文だ。

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Bubby's apple cake with caramel frozen custardと、Winter Pear crumble with Pistachio frozen custard
これがもうもう、真剣に全員が、口にしてしばらく固まったほど。どうしてこんなに美味しいの。

温かいケーキと焼き菓子に、冷たいカスタードアイスの取り合わせ。
見かけはとてもアメリカンなのに、どれも食べた時に、喉にぐっと来るあの”感じ”がない。すごくすーっ、と軽やかなの。
これはもしや、アレかなあ。


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ホリディシーズンのデザートということで、Sufganiyot with Satsuma mandarin "jelly"
Sufganiyotとは、Chanukah(ハヌカ)の時のドーナツ、だって。

これも、どう見てもとってもアメリカンなのに(しつこい)。すごく軽くて、ひっかかるクドさがなく。
中に入ってるチョコレートクリームも、濃くてダークなんだけど、流れてすっきりシャープでね。

この味わいは、白砂糖や動物性のものを使ってないとか、そういうデザートのはず。
と、わいわい騒いでる我々に、ウェイトレスのお姉さんは、親切にもパティシエさんを呼んできて、質問させてくれたんだよ。

思ったとおり、こちらの店では、乳製品は使ってないそうで。
必要な時には、Soy製品やココナッツミルクを使うんだって。
デザートと一緒に頼んだコーヒーにも、添えられていたのはSoy creamであったんだ。


改めてメニューの下を見たら、
VAAD Hakashrus of Northern Californiaから、glatt kosherの認定を受けていること、
乳製品とピーナッツは使っていないこと、
が記載してあったよ。
glatt kosherというのは、ユダヤ教の食事規定の中でも、最も厳しいレベルのもので、こちらの店は北カリフォルニアで、唯一その認定を受けている店であるそうだ。

コーシャーの規定では、乳製品は摂っても良いと思っていたけれど。
牛肉と乳製品を同時に食べてはならない、という決まりがあって、食べる時は数時間あけなくてはいけないそうなので、食事のすぐ後のデザートには、乳製品は使えない、ということか。(推測)

コーシャーは、”清浄食品”という訳語から、食材に特別な加工を施してある、と思われがちだけど。
規定を読めばわかる通り、屠殺法に決まりはあるものの、あとは食べ物に、食べていいものと悪いものがある、という内容。
四つ足の動物では、牛・羊は食べて良い、
豚・貝類・甲殻類は食べてはならない、
などの掟があるんだよね。
ユダヤ教徒といっても、厳しく戒律を守る正統派から、より柔軟な改革派・保守派もいるので、個々人や各家庭によって、守るべきラインは少々異なるのだろうけど。

旧約聖書という成文律法(更には口伝律法まで)の教えに従っている、ということは、何千年の昔に言われていたことを、いまだに守っているということになり。
ユダヤ教は母系に伝わる、という点と合わせて、私が妙に惹かれるところであるんだな。


ずっと以前に読んだので、記憶は定かではないのだが。
確か曽野綾子さんの本だったと思うのだけど、ユダヤ教のラビに、

なぜ何千年も昔のことを、現在に至るまで守っているのか、

という質問をしたところ。

昔正しかったことが、あとになってから間違いだったと判明することもあれば、逆の場合もある。なので我々は、まだ間違いと証明されていないことは、理屈抜きに忠実に守っていくのです。

という答えが返ってきた、というんだね。(うろ覚えが悔しい)

この言葉が、じんわり心に響いたのは。
太古の昔から、どの地においても迫害され続けてきた民族が、それでもなお伝統を受け継ぎ、信仰を受け継いでこられた、真の理由を見た気がした、ということと。
何でも論理で説明しなくては通らない現代で、理屈じゃなく、人間として守らなくてはいけない一線があるはず、と思う心に、励ましをもらった思いがしたから、であったのだ。

三世代以上に渡って母国語と文化を伝えられた移民は、ユダヤ人とジプシーだけ、と言われてて。
自分の子の母国語保持でさえ苦労する移民のハシクレとして、これがどれだけすごいことなのか、身を持って知っている。

そして、子供の躾において悩む、「やってはいけないこと」の線引きと、その理由の説明。
弱いものいじめはいけない。卑怯なことはいけない。
それは、欧米流に理屈で説明できないことがしばしばあって。それがゆえに、子供相手だけでなく、負けてしまう悔しさも味わうものであり。

それでもやはり、いけないものはいけないのだ、と。
明確な理由はなくても、ずっと昔から、それはやってはいけないことなのだ、と。
そういうものが確かにあると思い、それを守ろうとする自分が、理屈でなければ説き伏せられない事態に遭うたび、くじけそうになってしまうけれど。
ラビの言葉は、そういうものを信じて良い理由を、大きな形で与えてもらったように思えたんだよ。


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私の住む市は、住民の4割近くが、ユダヤ系の人が占めるところで。
それだけ伝統を継承していける証のように、その頑固さと我の強さは相当、という人も大勢いらっしゃって、正直苦い経験もないことはない。
なのに、どうしても惹かれるものを感じて、以前から本やネットで、表面的な知識を漁ってる。

文字で読むだけだった彼らの「食事」で、今まで実際に口にしたことがあったのは、ベーグルやクーニッシュなどぐらいであったけど。
頭で描くのみだった食卓の光景、このお店で一例を見ることができたのが、素直にとても嬉しいよ。

おしゃれな外見を持ちながら、味わいは素朴で、調味料もぐっと控えめなこちらの料理。加工品に頼ることなく、全て一から手作りしているとか。
カリフォルニアのコーシャー・ワイナリーで、地中海テイストを加えたレストランで働いていた、というシェフは、伝統的な東欧系ユダヤ料理に、チリやアイオリといった新しい素材を加えることで、より多くの人に受け入れられるレストランを目指しているそうだ。

「ベジタリアンの娘が、乳製品を摂らない叔母と、ラムが大好きな叔父、グルテンアレルギーの母と一緒に、食事を楽しむことができる」
そんなコンセプトを謳われて、ベジィな私が喜ばないわけがないんだな。
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と、大感激の我々だったのだけど。
今日再訪したら、ちょっとつけ加えることができたので。

最初に行ったのは、開店と同時の11時半だったので、どの料理もほくほく・出来たての新鮮な美味しさを味わえたんだが。
今日はかなり遅めで、1時半近くになってしまったせいか、クーニッシュがへたってしまっているとか、ポートベロがしょっぱくてへなっとしてるとか、少々残念なことにも出会ってしまったよ。

デザートはまたまた美味しかったから、最後は満足して出られたものの、次回に来る時は、なるべく早くに来ようね、と誓った我々でありました。


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The Kitchen Table
142 Castro Street
Mountain View, CA 94041
by senrufan | 2009-12-27 10:56


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