She is the One

「寝るより楽は、世になかりけり」
とは、母が良く口にしてた言葉でして。
娘もしっかりうつってしまって、寝る時はついついつぶやいたり。

それだけン十年に渡って口にしてたのにも関わらず、実は正式には、
「世の中に寝るほど楽はなかりけり 浮世のばかは起きて働く」
という狂歌であったことを、ようやく先日知ったのであります。これを無教養と言います。

太田蜀山人という人が作ったそうですが、江戸の町人らしい、享楽味溢れる歌ですなあ。


と感心してないで、少しは働けゴクツブシ。>自分

* * * * *

【映画】

b0059565_14295868.jpg映画「Every Little Step」を観に行って来ました。
ベジ料理で満腹度120%になった後には、ちょうど良い休息になると思いきや、興奮に次ぐコーフンで、ベジでとった栄養が3倍にパワーアップされたがごとくの、元気をいっぱいもらえた映画でございました。

「A Chorus Line(コーラスライン)」と言えば、どなたもがご存知の有名ミュージカル。
NYはブロードウェイにて、1975年の初演から1990年4月の最終日まで、6,137回という、当時の最長ロングラン記録を作り、1976年では、トニー賞で9部門受賞を成し遂げるという、米国ミュージカル史の中では、金字塔とも言うべき作品の一つです。
1985年には、アッテンボロー監督の下、映画化もされました。

それから16年という歳月を経て、2006年に再演されたのですが、この時の配役を決めるに当たっての、実際のオーディションの様子をフィルムに収めたのが、この映画「Every Little Step」なのですね。




この映画は、舞台原案・振付・演出を手がけ、88年に44歳でこの世を去った、マイケル・ベネットへの追悼の思いも込めています。
フィルムが回り出し、ベネットの声が語りだす冒頭のシーンから始まって、合間合間に彼の映像や声、当時のスタッフのインタビューを挟みながら、8ヶ月に渡るオーディションを追っていったものです。
「コーラスライン」自体が、舞台コーラスのオーディションのストーリーであるので、映画を見ながら、実際の舞台を目にしているような錯覚さえ起こします。

個人的な「コーラスライン」との出会いは、実は映画からでして。舞台を見たい、でも劇団四季のではなくブロードウェイの、んなことできっこねえ、せめて映画でも見るか、みたいなノリで。
この映画、熱心な舞台ファンからは散々な評判だったようですが、私的には大満足。演出家役のマイケル・ダグラスはともかく(…)、やっぱりダンスといい歌といい、実力派ぞろいのことだけはある一本だったと思うのですよ。
レーザーディスクを買って、家で見た回数はかなりのものでした。

数年後に、念願のブロードウェイ陣の東京公演があったので、大枚はたいて行ったのですが。
大好きなマギーの熱唱シーンでコケられたのを始めとして、小さなアレコレが目について、残念な体験になってしまったのでございます。
返す返すも、映画からでなく、舞台鑑賞から入れていたら、と思ったのでした。

16年というほどではなくとも、それ以来10年は忘れていた「コーラスライン」。
いつの間にやら再演、いつの間にやらサンフランシスコ公演終了。世間知らずが故に逃した魚の数々に、この公演も加わることになったのでございますね。(ちくしょおぉぉ)


それにしても、本当に良い映画でございました。
私一人の思い入れでRogiさんや娘達に付き合ってもらったので、反応が気になっていたのですが、彼女達も大喜びしてくれて一安心。

今回の舞台の振付が、オリジナルのコニー役のバイヨーク・リーだったこと。
彼女の歯切れの良い指示に、即座に反応して踊ってみせるダンサー達。
マギー役のオーディションで、次々と続く”張り上げ”声に、スタッフと共に耳を押さえたり。
ポール役のジェイソンの熱演に、やはり共に涙を流したり。
有名ダンサーだった父親の回想まで。

更に嬉しいのが、今まで知らなかった生のエピソードの数々が、当事者の口から語られたこと。
ベネットについて、親友から、元・妻から、仕事仲間から。
最初は、キャシーが最後はオーディションに落ちる結末だったこと。
ドナ・マケクニーが実際のオーディションの時、いつまでしゃべらせる気だとうんざりしていたこと。
エイズで亡くなったベネットの、「僕はストレートだ」という言葉の持つ苦さ。……
挙げていけばきりがないほど、どの言葉も貴重で価値のあるものばかり。


そして、日本での公開が早まったのは、もしかしてこの人のおかげ?と思うのが、見事コニー役を射止めた、高良結香さんです。
沖縄出身の彼女は、オーディションの時、
「なまりがあるね」「いつからアメリカに?」
と聞かれ、98年に渡米した、と答えます。私より後じゃん。(関係ねー)
やっぱりアメリカ育ちじゃないと……という意見がその後出されているのを聞いた時は、胸がちくん、と痛んで、負けるなあぁ、と握り拳しちゃったりしたんですが。
その後、
「今、失業中なの。この仕事が必要なのよ」
と答えた時の英語がちと間違ってて、たは、と笑顔になっちゃったですよ。

そんな彼女は、計らずも友達とコニーの座を争うことになったわけですが、彼女に決まった後、涙を流しながら、
「これは、私達が通ってきた道そのもの。心をうつのは、本当のストーリーだからなのよ」
と語るところでは、こちらの胸までいっぱいになりましたです。


彼女の涙に象徴される通り、この映画の、そして「コーラスライン」の圧巻は、やはり受かった人・落ちた人の姿と表情、と思います。加えるならば、その後の姿まで。

最初のオーディションでは、ボブ・エイヴィアンに「君こそシーラだ!」とまで言わせたラシェールが、最終審査では思わしくなく。
オーディションが始まった8ヶ月前、ちょうど恋人と別れた時で、その心情のままにシーラを演じたが、今ではその時の気持ちを思い出せない……長く続く審査の厳しさ、どんな時でも”役”になれる力量。改めて知らされる、この世界の困難さ。

最終審査に残った人達は、甲乙つけがたい力の持ち主ばかり。
それでも、選ばれる人と選ばれない人とに分かれる、そのポイントは、と言えば、選ぶ側の要求するものに、合致するかどうか。
それはすでに、”上下”の優劣、ではなくて。個性とか。運とか。相性とか。
紙一重の。一瞬のいたずらの。そんな話なのかもしれなくて。

それでも、いつか、必ず。夢が叶う日を。
敗れた後で、涙を振り切って、清々しい笑顔を見せながら。
前を向いて歩いていく彼らの姿に向かって、指をクロスさせて祈らずにはいられませんでした。
次に何か舞台上の芝居を観る機会があれば、その舞台裏に何倍もの広さで横たわるあれもこれも、心のどこかにとどめて観られたら、と思います。


映画館から出た後、余韻のままに大はしゃぎで、足を振り上げたりダンスの真似事をする娘達。
未来という言葉を、臆することなく掲げられる、そんな時をどうか満喫してほしいなあ。

って、そんなに暴れられるということは、お腹はすっかりダイジョブなんだな君達。

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by senrufan | 2009-05-30 14:13 | Trackback | Comments(6)
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Commented by さく at 2009-06-02 02:59 x
いいねいいね、こういうドキュメンタリーって大好き。
私はミュージカルファンとは決して言えないんだけど、
(華やかではなく地味なものが好きなので)
でもこういう夢に向かってまっしぐら、というストーリーには
元気をもらえますよね。

Miyukiさんのレビューを読んで、観てみたくなりました。
Commented by mame-honey at 2009-06-02 05:55 x
こんなドキュメンタリー映画があったんですね。コーラスラインはあの有名な音楽は聞いたことがありますがお話は全然知らないんですよね。 こういうドキュメンタリーって好きなのでちょっと見てみたくなりました。
Commented by Miyuki at 2009-06-02 11:32 x
*さくさん
うんうん、これは良かったよー! ある意味、ひねりもゆがみもなくって(笑)、まっしぐらに夢に、って感じでね。
チャンスがあったらぜひ観てちょうだいな♪ Santana Rowでやってるよん。
Commented by Miyuki at 2009-06-02 11:33 x
*mame-honeyさん
お時間があれば観てくださいまし~。これを観れば、そのまま「コーラスライン」に繋がりますです。どちらもオーディション物。観た後のコーフンのままに踊ってしまいたくなりますよ(笑)
Commented by nikkeilife at 2009-06-02 15:27
うわ〜いいなあ!これ、私も観たかったんですよ!心知れたお友達と共感できると嬉しいですよね。コーラスライン、舞台でも映画でも観た事無いんですが(恥)、「One」など歌は大好きです。アメリカンアイコンのひとつですよね。これと「キャッツ」。(笑)土曜日主人が出かけるので、一人で観に行ってみようかな♬
Commented by Miyuki at 2009-06-03 10:06 x
*アヤコさん
おお、やっぱりアヤコさんはご存知でしたね! そなんです、友達と行けるのがまたいいんですよねえvv いや、私は「キャッツ」を観たことがない大恥さらしですが、やっぱり歌は知ってて大好きです♪ ぜひアヤコさんの感想もお聞きしたいです~。


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