それを回り道と思うなら

飛行機の日
蓮華王院(三十三間堂)が完成(1164年)
ライト兄弟が動力機の初飛行に成功(1903年)
衆議院議員の選挙法改正案が公布(1945年)


ウザきもの。黒く、小さく、うごめくもの。

秋から冬になって、雨季に入るカリフォルニア。私の苦手な季節でございます。
それは、寒いとか暗いとかしもやけとか、色々と理由はあるのですが。
中でも大きな理由の一つが、あの黒くて憎いヤツラのせい。
その名を、、と申します。

ここ1週間、連日どっかこっかで軍団に遭遇しては、掃除機と殺虫剤で迎え撃ち。
昨夜は食糧庫の天井から入り込みやがりまして、延々と棚の中に軍隊闊歩。
食べ物にたかるならわかるんですが、なんでパン用の霧吹き器にむらがる必要があるんだ、ええおい(怒怒怒)


築7~80年の家が普通のこの市では、皆さん、大層アリには悩まされているご様子。
きっと我が家も、取り壊したら、天井から壁から、真っ黒に埋め尽くされている気がします。

* * * * *

【イベント】
b0059565_108684.jpg

友達からの嬉しいお誘いで、行ってきたのは、ピアノのチャリティーコンサート。
ママ友達4人で連れ立って、うきうきと夜のお出かけだよ。

夜の大人だけのお出かけも久しぶりだけど、ピアノコンサートときたら、一体何十年ぶり。
しかも、一緒に行った友達がすごいんだよ。一人は元ピアニスト、一人はボランティアやコーラスの伴奏で活躍中、残る一人も、本格的に先生について習ってる。
私ですか? えーとえーと、一応十数年習ってはいたのですが、今では演奏どころか、ヘ音記号の楽譜さえ読めません……だって、管楽器にはいらなかったんだもん……




弾いてくださるのは、ジョン・ナカマツ氏というピアニスト。
名前からわかる通りの日系アメリカ人で、私達が住んでいる、このエリアで、生まれ育った御方である。
地元のクラシック専門のラジオを良く聴いているのだけど、ピアノ曲では、彼の演奏が流れる率が多いなー、と思っていたら、そういう背景があったのだね。

しかし、彼の経歴は大変面白い。
有名ピアニストとなれば、音楽一家に育ち、幼い頃から英才教育を受け、というコースが浮かんでくるが、彼は全く違う道。
エンジニアの父と公務員の母の間に生まれ、6歳からピアノを習い始め、その時にはすでに才能の片鱗を示していた。
が、高校卒業後、彼は音楽ではなく、スタンフォード大学でドイツ語を専攻。その後、このエリアの市の高校で、ドイツ語教師の職につくんだな。

こおゆうコースを辿りながらも、ピアノへの情熱は衰えず。
独学で勉強を続け、年に数回はコンクールに出場する、という生活を続け、いつかプロのピアニストになる夢を抱き続け。
そんな彼の夢がとうとう実現したのが、1997年の、ヴァン・クライバーン・コンクール。アメリカ人として初めて、金メダルを受賞した時だった。
今では全米はもとより、ヨーロッパや日本を演奏して周る、多忙な人気演奏家の一人だよ。


今回彼が演奏するのは、このエリアのとある学区の、音楽教育資金を集める為のコンサート。
彼自身が育った学区であり、彼の息子さんがいるところ。

毎年毎年、教育予算がカットされまくっているカリフォルニア(シュワちゃんのいぢわる…)。そういう事態に陥ると、まずリストラされていくのが、音楽や美術であることは言うまでもない。
しかし、音楽にはお金がいるのだ。楽器がなくては成り立たないのだ。
教育熱心な地域であれど、決してその手の教科を切り捨ててほしくない、と願う私には、喜んで協力したくなる催し。


b0059565_1010565.jpg

まずは、Oxford Street Brassという金管楽器アンサンブルによる、クリスマス音楽の演奏から。
深いコルネットの響き、久々に堪能できて満足、満足。


b0059565_10123937.jpg

そして登場したのが、ナカマツ氏。大きな拍手でお迎えだ。
演奏→トーク→演奏→トーク、という順で、ユーモアたっぷり・歯切れの良いおしゃべりをはさみながらの、見事な演奏のオンパレード。

シューベルトの「即興曲」。
ベートーヴェンの「月光」。
シューマンの「献呈」。
ショパンの「幻想即興曲」。
メンデルスゾーンの「ロンド・カプリチオ」。

私の大好きな曲ばかりを、なんと見事なテンポで弾き上げていくことか。
非常に小柄で、恐らく手も小さいと思われるのに、それを全くハンデと感じさせない、鍵盤の上を魔法のように踊る指。
しっとりした曲であっても、感じられるのは重さではなく、むしろ、絶えず上に昇るようなエネルギー。

私と違って、鑑賞眼、じゃない、耳を持つ友人達から聞いたところによれば、
彼のペダルさばきは超人級。
指が届かないところでは、グリッサードでカバーしたりと、工夫を凝らしていること。
ダイナミックなのに、素晴しく正確。
興奮した様子で語られるのは、絶賛続き。

b0059565_10125411.jpg

惹き込まれて圧倒されて、曲が終わってはっと覚めると、今度は優しい声で、楽しいトークを聞かせてくれる。
さすが元先生だけあって、大勢の前で話すコツを心得てらっしゃるなー。

私もこの学区の音楽の授業で、4年生からトランペットを始めました。ピアノしか知らなかった私は、人と一緒に演奏することの楽しさ・素晴しさを、そこで知ったのです。
当時のピアノの先生にトランペットを聞かせて、どれだけ楽しいかを語ったところ、先生は、「うん、とても良い経験をしてるね! でも君はピアノを続けた方がいいね」と言われました。

母は全く音楽のことを知らないので、私が弾いてても、「何それ、何の曲? どうでもいいわ!」とばかり言います。
が、どんな人にも思い出の曲があるように、ノスタルジィを抱く曲があるように、彼女にもそれがあります。

「何を考えながら弾いているか?」と時々聞かれますが。
そうですねえ、例えば目の前にある髪の毛。一本、ぱらりとピアノの上に落ちているんですよ。
気になって仕方がなくて、演奏の途中にさりげなく払い落とします。しかし、またふと見ると、今度は違うところに落ちています。
さて、どうしようか、誰の髪の毛か、誰のせいなのか……そんなことを考えたりしながら弾いてます。

いやもう、爆笑に次ぐ爆笑。演奏と同様に、軽快なテンポが快く。

b0059565_10132680.jpg

ショパンの「軍隊ポロネーズ」の、力強い演奏で締めくくった後は、学区長とのQ&Aタイム。
学区内の生徒から寄せられた様々な質問に、一つ一つ、真摯に答えていらっしゃったよ。


大きな大きなアンコールの拍手に応えて、弾いてくださったのは、永遠のロングセラー、「スティングのテーマ」でありました。
厳しい音楽学校にも行かず、音楽の学位も持たず、それでも、もしかしたらだからこそ、これだけの力量の演奏家。
これから彼の名を耳にするたび、この軽やかなメロディーが浮かんでくることになるんだろう。
[PR]
by senrufan | 2008-12-17 10:06 | Trackback | Comments(6)
トラックバックURL : https://senrufan.exblog.jp/tb/10057786
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Commented by マミィ at 2008-12-19 15:51 x
げげげ、またですか、蟻の行進。絶滅させるのは無理なんでしょうかね。何か良い方法はないのだろうか。台所で悲鳴をあげているマイ・エンジェルMiyukiさんを思って涙ぐむ朝。

ナカマツ氏、ユニークですねぇ。人生に無駄なことなし。彼が遠回りをしたおかげで出合ったひとつひとつのことが、今の彼の奏でる音に反映されていることでしょうね。英才教育で育った人が弾くドレミファソラシドとこのユニークなナカマツ氏の弾くドレミファソラシド、その弾き方も音色もきっと全然違うんでしょうねぇ。
Commented by すれっぢ at 2008-12-19 23:47 x
蟻さんですか~。さすがカリフォルニア・・・暖かくてまだ活動できるんですね。
ttp://www.thefrugallife.com/ants.html
に色々撃退方法が書いてありました。シナモンが効くとか、他では輪ゴム
置いとくだけで嫌がってこないとかってのも見ましたが??ですね~。
冬休みの自由研究課題です。(笑)
Commented by peartree22 at 2008-12-20 11:06
わー、蟻。そちらでも!?
実は先々週くらい妹宅がすごかったようです。寒くなってきたというのに。
我が家近辺でも聞いてます。幸い、去年の薬が効いているのか、我が家は今年はセーフでしたが。やはり油断できぬとピリピリしちゃいます。

ナカマツ氏の経歴。きっと才能もおありなんでしょうけれど、普通の間隔から言うと”周り道”でも、今の彼の音楽には通らなくてはならなかった道なのでしょうね・・・。あー、こういう方の話を聞くと、「自分も何か!」と思うのですけれど、所詮凡人は凡人(いえ、努力をしない怠け者)で、どうにも、こうにも・・。
Commented by Miyuki at 2008-12-20 11:44 x
*マミィさん
もうねえ、季節行事といえますが、こんなに嬉しくない恒例はありません(涙) 家を丸ごと消毒しても、またすぐ戻ってきちゃうらしいですよ、まったく。

人生無駄なことなし、おお、このフレーズ、私がちょうど友人の日記にコメントで書いたものでした。わあい、シンクロ♪ でもって、そうそう、ナカマツ氏こそ、この言葉を体現してくれる人ですね!
Commented by Miyuki at 2008-12-20 11:50 x
*すれっぢさん
おおっ、すごい、皆さんそれぞれの工夫がずらりと! 情報ありがとうございます~♪ ちなみにシナモン、娘の部屋の床に出た時に試したのですが、我が家のアリには効きませんでした……切れた娘は、結局ろう粘土で穴を塞ぎましたよ。加えてうちの場合、出るのが天井なんで……シナモンまけません~(涙)
Commented by Miyuki at 2008-12-20 11:53 x
*ちゃんさま
妹さんのお宅でもですか! そりゃあ大変でしたねえ。いっそ家をかわろうかと思い、近所でもうすぐ引っ越すという人に、その後に入れるかどうか聞いてみたら、「いいけどこの家、アリがすごいわよ」……

ねー、私も、「こんなことじゃいかーん!」とあの場では思いましたが、3秒で思い直しました。”回り道”を見事に糧にしている精神力、本当に心から敬服しますね!


<< 緑と合うのはどんな色 大きな輪の内に在る >>