”Yes, we can”

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巨人軍の王貞治選手、現役を引退(1980年)


Obama's Victory Speech



米国大統領選挙の日。民主党のBarack Obama上院議員が、第44代大統領に選ばれました。
それはまた、初の黒人大統領誕生、の瞬間でもありました。

投票権の無い身ではありますが、ナニゲに民主党支持のカリフォルニア在住民として、やはり嬉しいのが正直なところ。
「世界一タフなレース」と呼ばれる通りの、非常に苛酷な数ヶ月。アメリカという大国のリーダーになるには、それだけの強さと力が必要とされます。
我が国の最近の首相交代劇とは、比較することもできません。

前回・前々回の選挙で、開票が進むにつれ味わった、砂を噛むような悔しさと遣り切れなさ。政治的には全く無知でありながらも、そんな感情だけは身の内に。
良くも悪くも、あまりに強大な国ゆえに、どうしてもどこかで巻き込まれずにはいられなくて。

実際となるとどうなるやら、の不安もある、実力的に未知数のオバマ氏ですが、即効剤を期待する国民の背後で、長い目で効果を見守っていきたいなあ、などと思っております。


個人的に大統領選よりショックだったのが、Prop8、つまりカリフォルニア州での同性婚を認めない法案の可決です。
全米でも同性愛者が多く住むこの州で、しかもしばらく前に最高裁で、同性婚を認めないのは憲法違反と認められたことで、ようやく法案化に向けて動き出すかと期待していたものであったので。

大統領選という、4年に1度の大イベントで、いつも思い知らされるのは、一見かなりリベラルに見える、アメリカという国の持つ保守的側面。人種や宗教が作り出す、根強い壁の数々です。
特に今回の選挙では、オバマ氏が黒人ということで表面化してきたものは、ヒラリー・クリントンの”女性”ということ以上に、大きく厚いものであったように思います。

「サイレント・マジョリティ」を抱え込む、アメリカ独特のリベラリズムの渦の中で、ただオバマ氏の健闘を祈るのみ、でございます。

* * * * *

【雑事】

White Privilege: Unpacking the Invisible Knapsack

今回の大統領選で改めて見えた「人種問題」に関連して、思い出したもの。
Peggy McIntoshが書いた有名な記事なので、ご存知の方も多いかと。



彼女が書き出した、「白人としての日常的な優位性」は、全部で50項目あります。
私ごときが訳して書くより、皆様にそれぞれ原文で読んでいただくのが一番と思うので、興味のある方は、どうぞリンク先に行かれてくださいませ。

とりあえず例として、そのうちの幾つかをピックアップしたものを、以下にて。
ちなみに、白人の視点から見た意見、となっております。


1. 人種的に優位と見なされることなく、課題を上手くこなすことができる

2. 世界的に多数を占める人種・言語・文化に属していることを、罪悪感を感じることなく、忘れていることができる

3. 近所の住民が私に対して、公平で親切だと確信していられる

4. 自分の子供の教育において、彼らを日常的に保護する為に、民族的な差別について教える、という必要がない

5. 警察官が私を捕まえたり、国税局が私の税金の払い戻し金を調べたりしても、それは人種的な理由からではない、と信じていられる

6. バンドエイドを買う時、自分の「肌色」に合うものを選ぶことができる


人種問題と言うと、つい自身にとってネガティブな要因を挙げがちですが、客観的にポジティブな点を数え上げることも、また大事な解決策の一つ、と思うのです。

* * * * *

【個人的事情】

お嬢が学校でいい成績を取ると、度々言われる言葉があるらしい。
「だって、あなたはアジア人だからね (Because you're an Asian)」
そのたびに悔しくて言い返したいのを、ぐっとこらえているらしい。


単一民族の国で生まれ育った、というのもあるだろうけれど、どうも私はこのテのことに対して、かなりニブい自覚がある。
周りの人が、「アジア人だからって差別されてるのよ!」と怒りを爆発させてる時も、なんでそうなる?と、ハテナマークの連発で。

元々、人種のみならず、性別に対してもかなり鈍感。絶対フェミニストにはなれないタイプ。
勤めていた会社では、その部門で初の女性総合職で、随分と周囲は心配していたらしいのだけど、やってきた当の本人が、はあ、そうらしいですがそれがなにか、みたいなヤツだったので、かなり腰砕けの思いを味あわせ。(すみません)(でも変われない)

性別も人種も、私にとっては、その”人”を構成する一部であって。「趣味は読書です」と同じレベルで考える。
なので、もしかしてどこかで差別を受けたのかもしれないけれど、あいにく、それがわからない。
しかし、こんな脳天気なままでいられるのも、ビジネスや学校などの、厳しい場に身を置いていないから、ということは、十分にわかっているつもりであって。そういう場で毎日揉まれている人達に、だからこその声援と尊敬の念は、絶やすことなく抱いている。


それでも、そんな狭い狭い世界にいても、感じずにはいられないことは。
奴隷制という苦い歴史を経て。人種のるつぼと言われる国にあって。
差別をなくそうと、誠意を持って戦っている人達と異なったところで、物事の要因を、人種や性別のせいにすることを自然としている、そんな人達が確かにいる。
また、たとえ良い方向のことであっても、思考基盤は確実に人種や性別にある、と周囲に感じさせる人達が。

それは、中国や韓国と日本の関係にも似て。
いつまでも過去の戦争の悲劇を忘れず、日本人というだけで攻撃を加える人達。
決して記憶が失われないよう、恨みをひきずるように、次世代にも伝えるそのやり方。
これは勿論、その歴史をあまりに浅くしか教えない母国への、憤りと情けなさの思いも込めて。

アジア人だから。日本人なんだろ。黒人だから優遇されてるのよ。
相手が全く思ってなくとも、自らその言葉を発することで、相手に負を負わせると共に、自らもその網からますます抜けられず。
そんな暗さを感じずにいられない、切なく悲しい時がある。

宿題を真面目にやる・授業を真剣に聞く、そういうことは、確かにアジア人だからこそ余計に、家庭内で厳しく躾けられた価値観であるのかも、とは思う。
でも、いい点を取りたければ、真面目にやることが早道で。その手段を選ばないでいながら、他人の成果を人種のおかげにしようとする。家庭なり学校なりで受けてきた人種観は、このような歪みも垣間見せる。
また、こういう子が親になった時、その子に伝えていくのだとしたら、またその糸は続いていくのであり。真剣に人種偏見を失くそうと努力する人達にとっては、絶えることのない戦い、とその重さに絶望することはないのだろうか。


この国で時折見られる、「差別を失くさない為の努力」。それには2つの面がある。
一つは、悲しい歴史を決して忘れないで、教訓として受け継いでいく為の努力であり。
もう一つは、その歴史なりの中に、無意識にせよ自分を甘やかす種を見出し、それを声高に度々訴えることで、自分の繭を保つ努力、と言ったら、あまりにシニカルに過ぎるのかもしれないけれど。

初の黒人大統領の誕生は、そんな面も変える可能性を秘めている、と期待を抱かずにはいられないのだ。
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by senrufan | 2008-11-04 15:02 | Trackback | Comments(8)
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Commented by さく at 2008-11-07 02:21 x
実をいうと、なんだか反論するようで申し訳ないのですが、
(私の人種偏見に関する気持ちはみゆきさんと同じですからね)
私はこの「黒人」大統領という肩書きに非常に違和感を覚えるのです。
もちろん黒人の血を引く、マイノリティの彼が
大統領になったのは大変、大変喜ばしいことと思います。
でも彼の半分は白人です。
非白人の血が混じると白人とは呼ばれない、
そんな風潮はどうにかならないかと思ってきましたが、
やっぱり根強い意識はなかなか変えられないですよね。
実際に「純粋な黒人」がどれだけいるのか。
そして「白人」と呼ばれるためにはどれだけの純度を保たなければいけないのか、この現実は非常に重くのしかかります。

自分の日記にも書いたけど、私はオバマ大統領その人よりも
彼を象徴とする、皆が変わりたいと望んだそのエネルギーが
とても良かったと思います。
ただここで皆が自分の意識と行動を変えるのではなく
「オバマだったら変えてくれる」という期待感だけだと、
あとでしっぺ返しがくる可能性もある。
そうなったら嫌だなあ、と思います。

Commented by Miyuki at 2008-11-07 02:56 x
*さくさん
グッドタイミング! 実はアップしたものの、どうしても何か承服できなくて、珍しく朝からここに来てみたのだ。そしてコメントを読んで、すごく嬉しかったの~~。そなの、その”半白人”について言おうかどうしようか、すごく迷って、結局そのまま押し切っちゃえ、とやったのだけど、出し切れないものが残っちゃって。だから、さくさんが明快にここに書いてくれたこと、本当に感謝ですvv
今朝のニュースで、オバマ勝利を祝う黒人ばかりが映ってるのを見て、またどうしてこう……と、もやもや。人種という観点を避けて通れない、通りたいのだとしても、配慮せざるをえない。この問題の根深さを、何度も突きつけられている気がします。

その「しっぺ返し」への危惧も含めて、書いたつもりではありました。結局、人種さえも自分の都合の良いように解釈する人達が、自分を変えてまでオバマを支持していくか?ということに対して、悲しいけれど大いに疑問がある。だからせめて「長い目で見ていきたい」と考えているのだけど、私だけがそう思ってもなあ……掘れば掘るほど、あまりに強い根っこ。
しかし今は、さくさん日記を読ませてもらうのが楽しみだっ!!
Commented by mame-honey at 2008-11-07 03:37 x
私も、↑方がおっしゃっている”黒人”と言うくくりが微妙に違和感です。だから、お二人のコメントの会話をみてとてもすっきりです。
お嬢さんの"Because You're an asian"は嫌な言葉ですねえ。私は、アジアン人らしからぬ(苦笑)頭の悪さでしたので、学校でのアジア人だから、、のくくりがすごくプレッシャーでしたねえ。コミカレに通っていた時に自分が受けた"Oppression"についてエッセイを書くという課題があったとき、そんな思いうかぶようなOppressionの経験はないよ~と先生に言ったことがありました。その時先生に、”You should have! Because you are an asian and woman!"と言われました、、。これってある意味逆な意味で差別だろうと、、。結局、その時は先生に言われた言葉とこのエッセイのテーマがOppressionだと書きましたが、、。何がどうなれば解決なのか正直わからなくなるこの問題、、それでも新しい大統領の元でなら、一人一人が意識を変えて改革の道を歩ければ、、と思います。
Commented by すれっぢ at 2008-11-07 06:24 x
えー、全くの的はずれな意見かもしれないんですが。今回のアメリカ
大統領選挙を見てて感じたのは、この8年間自分の選んだ大統領が
あまりにも「おバカ」だったという反省ではないかと。アフガニスタン、
イラクでの戦争、そしてサブプライムローンの問題化等々。で、この
まま共和党にやらせたら、さすがにマズイんではないかと感じた
人々が民主党支持に・・・という図式です。個人的にはマケインの
じいさんは結構できる人なんではないかと感じてましたが、時期が
悪すぎた。それにオバマ氏なら確かにこれから何かを変えてくれそうな
感じはしますもんね~。と、いうわけで期待してますが、どうなるかね~。
Commented by Miyuki at 2008-11-07 10:45 x
*mame-honeyさん
おお、良かった、改めてさくさんに感謝です。
そして、貴重な体験話をありがとうございます! こおゆう生のお話が一番嬉しいです。なるほど、アジア人ということでの、逆(?)プレッシャーもあるのですねえ……その先生もまた随分な決めつけ、というか、そういうことから圧迫を感じない人もいるのだ、ということへの想像力を働かせていただきたいような。しかし、それだけ人種や性別への意識が数倍強い人達には、そういう感情は想定外なんでしょうね。やっぱりノホホン・無神経な私は、意識が足りなさすぎなんだよなあ(涙)
万人が納得する解決策はありえないので、オバマ氏が、せめて大多数が前向きになれる求心力を発揮してくれたら、と思いますね~。
Commented by Miyuki at 2008-11-07 10:49 x
*すれっぢさん
いえいえ、的外れどころか、相変わらずいいポイントをついてくださって。実際、その理由で民主党に投票した人の数は、相当なものと思います。そうですね、私もマケイン氏は大統領を勤められるだけの器の人、と思ってました。さすが、続けて大統領選に絡んでこられた方だけあります。むしろオバマ氏の方が、実力的には不安があり。しかしこの勢い、民意には勝てない、ってヤツでしたね~。あ、そだ、マケイン氏の失策の一つは、ベイリン氏を副大統領候補にしたことか(笑)
Commented by マミィ at 2008-11-07 17:46 x
私もすれっぢさんに同感です。あきれ果てて、こりゃあかんわと民主党へ鞍替えした米国民は多いでしょうねぇ。

あと、"Yes, we can"というのが壺にはまった!簡単で誰にでもわかり、そして声に出して言うとすごく元気が出てくるじゃ~ありませんか!

オバマ新大統領誕生のニュースで、南仏トゥーロン大学の米人大学教授がインタビューで「本当に嬉しいです。これでフランスにおいて自分がアメリカ人だということを恥じずに済みます。」と流ちょうなフランス語で応えていたのには笑いました。
Commented by Miyuki at 2008-11-08 11:23 x
*マミィさん
そうそう、いっぱいいたと思うですよ~。なんせブッシュですからね。けっ。
”Yes we can”は確かにいいですよねー! 大統領のスピーチって、どんな階層の人にもわかるように、というところに主眼をおいて作るんだそうですが、これなんてそれのいい例だなあ。

教授話に爆笑ですーーっ!! ただでさえアメリカに風当たりの強いフランスで、さぞかし肩身の狭い思いをなさってたんですなあ。ある意味、謙虚なお方なのかもしれませんねえ(笑)


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