あなたのその目に映るもの。それがあなたの見たいもの。

民法テレビスタートの日、バイオリンの日、気象予報士の日
国産初のバイオリン完成(1880年)
第1回国勢調査発表(1921年)
初の気象予報士国家試験が行われる(1994年)

* * * * *

【アクティビティ】
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自然界の何かしら、例えば花でも空でも、岩でさえ。どんなアーティストでも作りえない、唯一つの色と形を持っています。
始終でなくても構わないけれど、それでもどこかで触れながら実感する瞬間を持たないと、身も心も息が詰まっていく。私にとって、自然とはそういうものであって、その真っ只中にいる時は、どんな教会に佇むよりも、素直に頭を垂れることができるのです。

しかし、そんな人間の手の届かない”作品”を。あくまで人間としての目と心で捉え、一対の手で自分の”作品”を創り出すことを貫き通す。
芸術家を名乗る人々全てが、尽きることなく挑み続ける業ですが、それが同じ人間の目で見た時に、「成功」と呼べるだけのものを生み出せたアーティストは、果たしてどのぐらいいるのでしょう。

そんな数多の芸術家の中で、確かに”成し遂げた”と認められる作品を創り上げた一人が、ガラス工芸家のDale Chihulyだ、と思うのです。




サンフランシスコのGolden Gate Park内にある、de Young Museum。ここで開催中のChihuly展に、家族で行ってまいりました。
とても人気のある作家の、人気のある展覧会と聞いていたので、早めの時間に訪れたのですが、それでもすでにかなりの盛況ぶり。
フラッシュを使わない・周囲に迷惑をかけない、という条件付で、写真撮影も許されていたので、ここぞとばかりにパシャパシャと撮りまくってまいりましたよ。
Webでもっと鮮明で美しいSlideshowが見られるのですが、これもまた記念ということで。


Dale Patrick Chihuly。1941年9月20日生まれの、アメリカ人のガラス工芸家です。
ワシントン州タコマ市出身で、シアトルにあるワシントン大学にて、インテリアデザインと建築を学び、その後はウィスコンシン大学やロードアイランド・デザイン学校で、彫刻の修行に勤しみます。
1971年に、シアトルにPilchuck Glass Schoolを設立。ここが現代ガラス工芸世界において、非常に重要な地位を占めるようになっていきます。
旺盛な制作活動、そしてガラス・アートにもたらした貢献度を認められ、1992年、初のNational Living Treasure in the United States(米国人間国宝)を受賞するに至ったのです。


Chihulyの作品と活動がもたらした影響。それはガラス・アートにとどまらず、芸術界全般に与えられた、と言っても過言ではありません。
1976年の自動車事故により、左目を失明、立体感を失った彼は、自身での制作をやめた代わりに、選び抜かれた制作チームを率いることになります。
チフーリが図をキャンバスに描き出し、チームが一体となって作品を創り上げる。”The Boathouse”と名づけられたスタジオで、繰り広げられているこの方式により、更に複雑でインパクトのある美を生み出す。
限られた広さのアトリエで、限られた制作活動を行っていたガラス工芸界にとって、チフーリと彼のチームが行ったことは、正に革命とも言うべきものでした。

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私個人としては、実は大掛かりな現代アートは得意ではありません。しかし、チフーリの巨大なinstallationを前にした瞬間、そんな好悪のレベルを遥かに超えて、圧倒的な感情しか沸いてこないのです。
あまりに鮮やかな色彩と、眩暈がするほどの模様の洪水。それぞれの個性を持つ個々のパートが、並びあってぶつかりあって生み出すものは、相性とかバランスとか、そんな言葉を吹き飛ばすほどの、ありえないまでの強烈さ、に他なりません。
どの作品も、出発点は自然界にあるものであったり、人間の歴史ある創造物であるはずなのに。彼の手にかかった途端に、内部に潜む力だけが凝縮された形で取り出され、出会ったことのない要素を加えられて、何百倍にも拡大される。それは正に、熱したガラスに息を吹き込むごとく。
そうして出来上がっていくのが、チフーリの作品である、と感じてやまないのです。

チフーリが真に目指すもの。それは、境界を越えた美しさ。
「the triumph of creativity over convention, of art over craft, and of nature over culture」
人間であるが故に、人間であるからこそ、生み出せる美、というものが確かに存在する。
彼の作品を見ていると、それを信じられる、と思うのです。


展覧会の出口を出ると、チフーリの作品や写真集などが並んだミュージアムショップ。
そして更にそちらも抜けると、チフーリと彼のチームが、観客の前でガラス制作のデモを行った映像が見られる部屋が。この映像は、「Chihuly in the Hotshop」というタイトルで、DVDに収められて販売されています。

でもって、この映像を見てびっくり。
デモが行われたのは、シアトルのタコマにある、the Museum of Glassというところなのですけど、なんと敬愛するまきりん♪さんとすれっぢさんご夫婦とご一緒させていただいた、シアトル旅行の際に訪れた場所、だったのですよ。

改めてこのガラス美術館のWebサイトを見てみると、チフーリとの関わりは深い模様。
えー、じゃああの時見たデモのお兄さん達は、チフーリチームの人達だったのかなあ。
うーん、やっぱり知識がないと、見逃すものが大きい。逃がした魚は大きい。覆水盆に返らず。(動揺してます)

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CHIHULY at de Young
June 14 - September 28, 2008

Golden Gate Park
50 Hagiwara Tea Garden Drive
San Francisco, CA 94118
*-*-*-*-*-*-*-*-*

以下は、展覧会での作品です。
いつも言ってますが、またまた自分の記録の為なので、特にご覧になる必要はありません。ええ、ほんとに。


1. Glass Fprest #3 (1971-1972)
Glass Forest #1と#2を融合させた作品。
ガラスの持つ自然な形態と過程を模索したもの。

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2. Ikebana

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3. Venetians (1988)
チフーリの作品を代表するシリーズの1つ。
1968年にヴェニスに留学した時の記憶を元に、「水と光」という、チフーリ作品において重要な要素を用いて、ヴェニスの伝統的なバロック芸術の美と色彩を表現。

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4. Persians (1986)
「ペルシャについてリサーチしたわけではない。その形が神秘的な庭園や寺院を連想させ、ビザンチン、ヴェニス、極東といった場所の香りや感性を思い起こさせるが故に、Persiansと名づけたのだ」
観る人に、探検家のマルコ・ポーロをイメージしてほしい、と望むチフーリ自身、ガラスの歴史や文化を求めて、世界各国を旅する探検家である。

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5. Tabac Baskets 
チフーリが1977年、故郷であるタコマ市はWashington State Historical Societyを訪れた時に、北西海岸のネイティブアメリカンのバスケット(籠)のコレクションを見て、インスピレーションを得たシリーズ。
Tabacとは、タバコのような色、という意味だそう。
自ら集めたバスケットと、これらのガラスバスケットのコレクションは、シアトルのスタジオに設けられた”Indian Room”に、大切に保管されている。

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6. Macchia Forest (1981)
Macchiaとは、イタリア語で「点々、まだら」の意味。
スタジオにある300もの色を全て使おうと思い立ち、ありとあらゆる場所に異なる色を選んで作り上げた。
ガラス工芸の真髄、つまり熱と流れ・冷却と凍結を見事にコントロールして創り上げた”lip wraps”、花を彩る縁の薄いリボン状のガラス。ワシントン州の活火山・Mount Rainierの姿のように、チフーリのMacchiaシリーズもまた、創造の火で輝いている。

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7. Reeds (1996)
フィンランドのガラス工房を訪れた際に目にした、大量のガラスの流れから発想を得た作品。

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8. Boats
揺れるボートは、日本の新島(Niijima)への旅と、子供時代に故郷のPuget Soundの浜辺で見かけた日本製の漁網。
ボートに乗せられた大量の、万華鏡のような色彩を放つボールは、日本の漆器と、子供時代に遊んだ石のおはじき。
「私が旅への情熱を失うことは、決してないだろう」とチフーリは語っている。

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9. Chandeliers
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10. Persian Ceiling
チフーリのトレードマークであるシリーズ、Seaforms(1980)とthe Persians(1986)を融合させた作品。
珊瑚や海の生物に囲まれながら水中を漂っているがごとくに、様々なパーツをランダムに散りばめたのは、「ちょうど海の波が事物を散らすように」との意図に基づくもの。
この作品が象徴するように、チフーリが水に抱く感情は特別なものがあり、海へのこだわりは更に強い。

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11. Mille Fiori Garden
イタリア語で、「千本の花々」の意味。チフーリ作品の集大成とも見られる。
自然をコピーするのではなく、その過程と感性を写しとろうとするチフーリ。彼が色彩に対して感じる強い魅力の元は、母の豊かな花壇と、母と共に眺めた夕日の、子供時代の鮮やかな記憶なのだ。

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by senrufan | 2008-08-28 12:55 | Trackback | Comments(12)
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Commented by すれっぢ at 2008-08-30 22:28 x
を~、あの眼帯のおっちゃんですね。(だちかい?)
どうも明日のジョーの丹下段平を思い出しちゃいます。

あのおっちゃんの作品、タコマの隣りで売ってましたが・・・・
ガラスでこの値段!!地震が起こったらどーなるんだ!!!
って貧乏人な感想でした。それにしても色使いとか、見せるとこは
さすがですよね。ガラスやってる知人によると、オーケストラの指揮者
みたいにみんなのコーディネーションやったりする天才らしいです。
Commented by Miyuki at 2008-08-31 09:01 x
*すれっぢさん
そうだ、段平のおっちゃんだった! 誰かを思い出すな~と思っていたのです。ちなみに私が一番最初に連想したのは、石立鉄男でした……

わはは、地震が起こったら! そらあまずいですわ~。
そう、なんというか、絶対無視できない存在感と色で迫ってくるんですよね。コーディネーション、それが上手くなければ、大勢の作ったものをこれだけのものには仕立てられないでしょうなあ。天才だ。
Commented by ayumin_moo at 2008-08-31 09:39
ちょうど、友人も行ってきたと聞いたところでした。こんな美しい作品たちだったのですね。
実は、私も8月初めの美術館無料の日にデ・ヤングへ行ったのですが、SFMOMAとはしごしたため疲れていて、無料で見られる所しか回らなかったのです。(恥)
チフーリさんはデザインだけして他の方が作っているという話だけ聞いていましたが、そういう理由があったのですね。
ボートに乗っているボールが夏祭りのヨーヨーみたいでかわいいです。
Commented by マミィ at 2008-08-31 16:46 x
いやぁ、圧倒されて昨日は言葉を失い。
今朝また見て、段平のおっちゃんだの石立鉄男だのと言われているのを見て大笑い。それにしてもこのおっちゃんの作品にはコメントの仕様がありませぬ。口をぽかんを開けて、ただひたすら眺め続けている私をご想像くださいませ。

新島への旅がこんな偉大なアーチストに影響をもたらしたというのが、なんとも日本人として嬉しいものがありますね。

それにしても直接見てみたいな~これらの作品!あぁぁ・・・(うっとり脱力)
Commented by Chico at 2008-09-01 01:05 x
素敵な作品の数々ですね♪
色鮮やかな海底の生き物たちっぽい。
ガラスならではの透明感がありますよねぇ。
機会があったら、実際に見てみたいです。
Commented by Miyuki at 2008-09-01 12:19 x
*ayuminさん
美しいでしょ~、実物には更に圧倒されますよ。
いやいや、無料の日→混むに違いない、というだけで気力が失せる私より、よっぽど大したもんですよ。ビンボー人のくせに節約努力が足りないヘタレなのです……最初に彼の眼帯を見た時は、アーティスト→ファッションかな、と連想したオマヌケでもあります。
あはは、確かにヨーヨーっぽい! 実物はバランスボール並みにでかいですよ。
Commented by Miyuki at 2008-09-01 12:22 x
*マミィさん
センス溢れる姉さまを圧倒させたとは、さすがチフーリ氏! あの眼帯はダテではありませんな(笑) ほんと、ぜひ実物を見ていただきたいです~。こんなヘタレ写真じゃいけません。作品とは、質感が伴ってこそ、ですもんね!

そう、私も新島話にはつい嬉しくなってしまいました。やっぱり母国贔屓です♪
Commented by Miyuki at 2008-09-01 12:24 x
*Chicoさん
はい、素敵でした~vv
海底天井の作品では、何千ものガラス細工が所狭しと並べられているのですが、ヒトデもあり、貝もあり、タコやサンゴもありの中で、なぜかキューピッド像がところどころに置かれている、というお茶目さでした(笑)
Commented by frogfreak at 2008-09-01 15:19
はじめて見た彼の作品はシャンデリアだったのかな。どこで見たのかも覚えていません。第一印象"きもちわり~"
若かったので率直に気持ち悪いでした。
生々しい感じが嫌だったんでしょうね。でも、ガラスでそんな"生々しさを出せる"っていうことが凄いんですよね。ガラスなのに生き物みたいなの。
ボートの作品は光が飛び遊んでいるようですごいですね。竜宮城とかそんなイメージでしょうか。
Commented by Miyuki at 2008-09-02 07:20 x
*frogfreakさん
うん、私もねえ、もっと前に見ていたら、ここまで圧倒されなかったと思うんです。モダンアート、それも大型のは特に苦手だし。それが今回は、そういう好悪の情を越えて、こんなにすごいなんて!という気持ちばかりで。年をとって変化を感じるのは、悲しい点もありますが(笑)、こういった変化は嬉しいなあ、と思うです。
ボートは、私が一番長く足をとどめていた場所かも。竜宮城、それぴったりーー!!
Commented by peartree22 at 2008-09-02 17:10
初めてこの方を知りました。ほんと、Miyukiさんのブログは為になることばかり。シャンデリアとやはりボートの作品が一番印象的です。
私の知っているガラスアートとは違って、かなり生命力を感じますね。生で見るとすごく迫ってくるでしょう。きっとちょっと疲れているときはダメかな?(現代アートを見る時ってパワーを使いますよね)
日本にも所蔵している美術館ってあるのかしらん。調べてみようっと。
Commented by Miyuki at 2008-09-03 12:20 x
*ちゃんさま
シャンデリアもボートもすごいですよね~! 私も今までちらっと知ってただけだったのですけど、いやあ、今回はやられました。くらくら。
生命力、疲れてる時、ほんとにおっしゃる通りです~。”癒し”にはならない、というか(笑)
日本でもどこかにありそうな。また日本で展覧会やってくれたらいいのにねえ。


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