扉を開けたら溢れたものは

仏壇の日、さくらの日
NHKが有線によるテレビ実験放送を公開(1939年)
フルシチョフがソ連首相に就任(1958年)

* * * * *

【アクティビティ】
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先日、知り合いの韓国のおばさまから、サンフランシスコのAsian Art Museumの割引券をいただきまして。(歓喜)
今週はお嬢が春休みである上、ちょうど先月から、見たい!と思っていた展示の真っ最中。
なので、これはラッキー、とばかりに、券をしっかり握り締めて、2人でSFまで行ってきたのでありました。




その展示とは、ボストン美術館(Museum of Fine Arts, Boston)秘蔵の浮世絵展
ボストン美術館自体は、数年前に両親と一緒に訪問し、中に収められた貴重な浮世絵のコレクションに感嘆しきりだったのですが、今回の展示は、その美術館の奥深くに眠っていた作品ばかりなのです。

アメリカの医師であった、William Sturgis Bigelow氏。明治時代に、エドワード・モースやアーネスト・フェノロサと共に日本に渡った、最初のアメリカ人の一人です。
その後は長く日本に滞在し、日本国内の美術の保護と後援の為、積極的に経済支援を行ったとのこと。
滞在中に彼が収集した日本の絵画や仏像などは、まとめてその数、4万点以上にのぼります。
帰国後、それらはボストン美術館に寄贈されましたが、春画などを含んでいた為、その当時の社会には受け入れられなかったらしいということに加えて、彼自身の遺志により、館外への貸し出しも禁じられていたこと、更にその数があまりに膨大だったこと……これらの事情により、ずっと倉庫に保管されたまま、眠り続けていたのです。

96年から行われた日本人研究者による現地調査によって、初めてその全貌が明らかになります。
浮世絵の中でも特に貴重な、肉筆画の膨大なコレクションが、なんと700点近くもあることがわかり、驚嘆の連続の調査だったそう。

浮世絵というと、通常は「版画」が多いのですが、中には武家や豪商に依頼されて制作する肉筆画もあり、これは版画の原画とは異なり、正に世界に一点だけのもの。特注品。オートクチュールなわけですね。(ひつこい)
北斎や歌麿の肉筆画。それがどれだけの貴重品であることか。
その価値を見出し、買い取り、海を渡った遥かボストンで守ってくれていたことに対して、改めてビゲロー氏とボストン美術館に、しみじみと感謝の念を覚えます。

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この展示会は2月半ばからスタートし、展示と同時に、それと関連したイベントも幾つか企画されています。
残念なことにすでに1ヶ月以上たった今、目ぼしいものは終了しており、4月にある着物ファッションショーは、人気で早くもチケット売り切れ、とのこと。
しかしまだ俳句のワークショップ、春のファミリー・フェスティバルなどがあるのと、こちらの美術館では、定期的にお茶のセレモニーも行われておりますので、興味のある方は美術館のカレンダーをチェックの上、お出かけ下さいませ。
尚、現在のところ、毎月第一火曜が無料解放日となっておりますが、5月からは第一日曜に変わる、とのことです。平日じゃ意味ないじゃん!とハンカチを噛んでいた我々にとって、これはありがたい変更です。


歌川広重、司馬江漢、菱川師宣、宮川長春、そしてなんと葛飾北斎の娘まで。無知無教養の私でさえ、名前を耳にしたことがある浮世絵画家のそうそうたる作品群。その色彩もいまだ衰えず鮮やかなままに、私達の目の前で、華麗な絵巻を展開します。
長く保管されていた為、作品の状態がとても良い、というのも勿論あるのですが、その影にあるのは、やはり数多の修復師達の力に他なりません。
彼らの息を詰めて見守るような作業ぶりは、展示会内のTVで鑑賞できるようになっています。


この巡回展が終わったら、これらの作品は再び厳重に保管され、あと50年くらいは人目に触れることは無い、との話。
あの線、あの色、あの雰囲気に、改めて強く惹きつけられてしまった私。機会があれば、期間内にもう一度訪れたい、と思っている次第です。

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Drama and Desire:Japanese Paintings from the Floating World 1690–1850
February 15–May 4, 2008
Asian Art Museum
200 Larkin Street
San Francisco, CA 94102

*-*-*-*-*-*-*-*-*

さてさて、例によって例のごとく、自分の為の覚え書帳を以下にて。
つまらないこと必須なので、読まれる必要は全くアリマセン。


展示の冒頭と終わりにおいて:
「... living only for the moment, turning our full attention to the pleasures of the moon, the snow, the cherry blossoms, and the maple leaves; singing songs, drinking wine, diverting ourselves in just floating, floating;
caring not a whit for the pauperism starting us in the face, refusing to be disheartened, like a gourd floating along the river current: this is what we call the floating world
...」


(参照)
「浮世」の意味・語源:
頼りになるものがなく、はかないこの世の中。つらく苦しい俗世間。
「うき(浮)」は、「苦しい」「辛い」を意味する「憂し」の連用形「憂き」が本来の形で、平安時代には「つらいことが多い世の中」を指した。
やがて仏教的思想が定着し、その厭世観から、この世を「無常のもの」「仮の世」と考えるようになり、「うき世」も「はかない世の中」の意味になっていき、漢語の「浮世」を当てた方がふさわしくなり、「憂き世」が「浮世」と表記されるように。
江戸時代に入ると、「はかない世の中であれば浮かれて暮らそう」という、享楽的世間観が生まれ、男女の恋情や遊里で遊ぶことの意味となり、「浮世絵」や「浮世話」のように、名詞の上について、「当世の」「現代風の」「好色な」といった意味も表すようになった。
                   「語源由来辞典」より


展示会のテーマ(3つ):

1. Enjoyments of the Four Seasons
一年の行事、例えば新年の祝い、春の桜の祭り、夏の隅田川、そして冬の家ごもり。
こういったものを描いた作品群。


2. The Pleasure Quater, Courtesans, and Geisha
幕府の厳しい統制の下、階級も住む場所も明確に区別された世間の中で、市民がいかに楽しみを見出し、独得の文化を育んでいった様子。
 
 ・着物と髪型
 ・友禅と染料
 ・絵看板
 ・吉原図
 ・春画


3. Dance, Drama, amd Kabuki Theater
江戸の一大娯楽、歌舞伎について。舞台や役者絵多数。



主な画家と作品:
葛飾北斎、菱川師宣、水野廬朝、鈴木春信、歌川豊国、宮川春水、喜多川歌麿、鳥居清満、奥村政信、渓斎英泉

歌川豊国 「三代目中村歌右衛門」
葛飾北斎 「鳳凰図屏風」 「唐獅子図」 「鏡面美人図」「大原女図」
無款・菱川師宣 「遊女道中図」
水野廬朝 「花下の若菜摘み」
勝川春章 「石橋図」


その他:
葛飾応為(おおい)
北斎の娘であり、やはり浮世絵画家とされる。本名はお栄。
北斎が娘を呼ぶ時の言葉(「おーい」)からつけた雅号とのこと。
展示作品は「三曲合奏図」で、今回とても気に入った作品の一つ。

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by senrufan | 2008-03-27 13:15 | Trackback | Comments(9)
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Commented by peartree22 at 2008-03-31 18:21
うわーー、海外でこんな催し物が!北斎の娘さんも浮世絵師だったとは今日まで知りませんでした。雅号の由来もなんともウイットに飛んでますね。巡回展、日本はすでに終わってしまったのかしら・・・。
このような文化的な場所にとんとご無沙汰なので、この春はもう少し
私もMiyukiさんを見習って出かけることにしなくちゃ。
Commented by peartree22 at 2008-03-31 18:32
続けて失礼します。Miyukiさーーん♡日本でも今年巡回されるようです♪今は名古屋で4月6日まで。
規模や内容は違うと思いますが、確かにボストン所蔵のもののようです。
http://ukiyoeten.jp/index.html
福岡で夏にあるようなので、ぜひぜひ足を伸ばせたらと思います。
Miyukiさんのブログで知らなければ、見逃すところでした。
ありがとうございまーす!
Commented by マミィ at 2008-03-31 20:22 x
どひゃ~、浮世絵の肉筆画、オリジナルとはすごいだす。やっぱり色やタッチが版画とは全然違うんでしょうね。こんな貴重な世界への扉を開けることのできたたMiyuki母娘がうらやまし~い!
Commented by kiyo at 2008-04-01 10:10 x
教科書でしか見たことのないものですが、日本人としてやっぱりみておきたいような。おまけに、これを逃すとあと50年は見れない、、、となると、生きている間に見れるのは今だけ?急に行きたくなっちゃう私ってやっぱり貧乏性?? 貴重な情報をありがとうございましたー♪
Commented by Miyuki at 2008-04-01 12:24 x
*ちゃんさま
私も北斎の娘のことは、この催しがあることを知ってから教わったのですよ~。でもほんとにいい絵でした! 娘とか関係なく、とても気に入ってしまいました♪
わあ、ほんとだ、日本でもあるのですねー! 別のコレクションのようですが、それでもありがたい凱旋ツアーですよ絶対! 楽しんできてください~。そして内容を教えて下さいませませ。
このビゲローコレクション、一昨年あたりに東京で開催されたらしいのですよね。だから50年とは言ってても、きっとどこかでもう一度……と思うのですが。
Commented by Miyuki at 2008-04-01 12:27 x
*マミィさん
はい、やっぱり版画より一際鮮やか、一際新鮮な線と色でございました~。妖怪絵巻も幾つかあって、そのタッチの見事なことったら。さすがに春画コーナーでは、かなり恥ずかしかったです……思いっきりリアルなんだもん……(もじもじ)
Commented by Miyuki at 2008-04-01 12:29 x
*kiyoちゃん
え、あなたはあと60年は軽いよね?(真顔) 私はすでに人生後半なので、逃してなるものかと思ったけど。
興味があったらぜひご訪問をば♪ ちょっと追加情報もアップしときますので。
Commented by frogfreak at 2008-04-01 13:32
おお、面白そうな催しですね。行きたいなーっ。でも、流石に赤ちゃんフレンドリーなアメリカでもベビ付きで美術館は駄目だよね。びーーってきたら館内中響きそう。
北斎の浮世絵は一瞬を捉えながらにして、その女性が情事を終えた後だなとか、あ、好きな人を待っているのねとか、すごく語るところが多いので面白くて好きです。
肉筆画とかもみれちゃうんだ。ボストン美術館の浮世絵所蔵量はすごいとは聞いていたけど、本当にすごいですね~。
春画はホント恥ずかしいかも。なんだか、そこにたっていると"日本人でごめんなさい”って気になりそう。笑
Commented by senrufan at 2008-04-01 14:59
*frogfreakさん
いやいや、試してみる価値はありですぞ! 赤ちゃんや幼児連れの親子も沢山来てますもん♪
おお、その北斎評、すばらしいっ! 正にその通り、ほんの一瞬垣間見せる色気や表情を、あそこまで絶妙に捉えるなんて、と、見るたびに驚き、魅せられます。
春画、恥ずかしかったです……そのコーナーについた時、思わずお嬢から隠そうかと思いましたが、5秒後には、あ、もう知ってるよね、とあっさりスルーした自分もどうなんだろう……とあるアメリカ人のご夫婦、鑑賞しながら、口元が妙ににやにやしているのが、とても気になりました。


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