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とこしえに我らが心にあって

Boqueron Battle Day (Paraguay)


お嬢の社会の宿題で、アメリカ&メキシコの地図を作成せよ、というのが出ました。
それもただの地図ではなく、ボード状のものの上に、「小麦粉と水と塩で粘土を作って、それで立体的な地図を」というものでありまして。

はっと気づいた時には、我が家のオーガニック小麦粉と高価な(当社比)セルティック・シー・ソルトを使われていて、思わず悲鳴を上げた一幕もあったのでございます。ああ、まだ涙が止まらない。

小学校ならともかく、中学でこのような宿題が出たのは本当に久々のこと。粘土アート命の彼女は、小麦粉粘土で器用に山脈や湖を形作り、生き生きと課題に取り組みます。
作りながら、
「ママー、自分で地形を作るのってすっごく楽しい!」
と言うので、そうであろう、そうでなくば、と思って微笑んで頷き、その場を離れました。

しかしその後で耳にした、彼女の言葉と高笑い。
「ふはははは、I am God!!

彼女が危険領域に踏み込む前に、早く終わってくれと必死で祈ってます。

* * * * *

【映画】
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映画「The Prisoner of Zenda」を観に行って来ました。たまに訪れるオールドムービー専門館にて、1937年製作のモノクロ映画です。



原作は、読書ブログに感想も残してますが、私がずっと昔から大好きな歴史冒険小説。1894年に発行された、ルリタニア王国という仮想の国が舞台の話であり、一時はルリタニアンという言葉が生まれるほどの人気を博したそう。
それだけのものにふさわしく、過去何回にもわたって映画やTV作品が作られていますが、今回観に行った1937年版の映画は、中でも代表と言われているもの。
ということを、帰宅してから知りました。まあいつものことです(……)

元々ちょー原作派、しかも思い入れが強い作品であるほど、映像化されたものは避ける傾向にあるのですが、逆にここまで古いと抵抗がない。というより、古いが故の良さ、というものがほのぼのと好きであったりするので、自ら進んでカレンダーにマークをつけ、今日を楽しみに待っていたのであります。
ひそかなお気に入りのシアターは、いつものようにおじいちゃま・おばあちゃまが大勢来ていて、やや古ぼけたビロード張りの椅子と、漂うポップコーンの香りが、心を落ち着かせてくれる場所なのです。


映画のストーリーは、かなり原作に忠実で、これはしみじみとありがたく。
ルドルフ役のロナルド・コールマン、王女フラビア役のマデライン・キャロルは、この時代の美男美女といったらこういうイメージ、という配役の二人。
原作だと「燃えるような赤毛」が特徴なのですが、そこはモノクロ映画である為、残念ながら目にすることは敵わず。というより、むしろモノクロであるが故の穏やかなフォーカスが、圧倒的原作派の私でさえも嬉しく思えるものに変えてくれているようで、二人を中心とした古典劇を、十分に楽しむことができました。

ダグラス・フェアバンクス演じる、ヘンツオ伯ルパート。もう一人の主役であり、実際続編では堂々と二人主役を張る人物なのですが、私的にはややはずれていた感も。
伊達男という言葉に合った演技ではありましたが、もうちょっとこう、ワルの中にも品が、なあ。
でも最後の退場シーンは、ルパートらしい大胆不敵さで、思わず拍手も起こったほど。


原作の一作目も続編も、とにかくラストに涙させられるもので、それぞれ明確ではないにせよ、目をつぶればそのページの文章がぼんやりと浮かんでくるほど。それが映画ではどうなるか。
ちょっと不安に思いながら迎えたラストシーンは、確かに時代がかった大げさ感も否めない演技ではあったものの、目を奪われてしまったのは、王女フラビアの目に浮かんだ涙でありました。

モノクロであるので、目にするこちらは、光の陰影でそのものの存在を判断するわけですが、現代のカラーでは感じなかった、涙というものの持つ微かな、しかし確かな光沢。
目の際で、今にもこぼれて流れそうで、でも王女というプライドと、そこで別れなければいけないという強い自負と責任感が、涙を目の中に必死にとどめようとする。
フィルムが流れるその間、フラビアがルドルフから一瞬も目を離さずに自分の決意を語る間、彼女の目の中に留まり続け、動くにつれて光をはじく。それがルリタニアにとどまらなくてはならない彼女の身の上と重なって、たまらなく美しく映っていました。


The Endの文字が踊る時、必ず客席から拍手が沸き起こる。
そんな温かさが、またこのシアターに来たくなる理由の一つです。
by senrufan | 2007-09-29 11:55


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