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大海の中の一粒に

French Community Holiday (Belgium)
Succot (Jewish)

* * * * *

【レストラン】
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愛しのkiyoちゃんと一緒に、遠足に行ったんだ。またもやベーカリー探索の旅で、今度はOaklandにね。
SFツアーと同様に、またまた優秀なナビと一緒で、しかも共に楽しんでくれる人と一緒で、私は本当に恵まれてるよ。(幸)

などと言いつつ、ベーカリーについての日記はまた後日。
というのは、何せ3軒も周ってどっさり買い込んできたので(…)、まだ全部を味わってないのだな。
なのでその前に、もう一つのお目当てだったレストランについてだよ。



本やサイトで教わったところによると、こちらはかつてある雑誌で、全米ベストイタリアンの3位に選ばれたことがあるらしい。そんな有名どころのディナーなど、到底私の行けるところではないだろう。(小心者)
でもランチなら何とかなるかも。おまけにこちら、レストランは2階部分で、1階のカフェはいつでも入れるらしいから、そちらでカジュアルの上、といった気分を味わうのも良いよね。

そんな思惑で、どきどきしながら行ってみた。
店の前でどうしようかと相談した後、思い切って2人でレストランに上がってみたんだよ。


おしゃれなお店が並ぶアベニューが見下ろせる、窓がいっぱいの明るい店内。
予約はないのだけど、とおずおずと言う私達に、にっこりと笑いかけて案内してくれたウェイトレスのお姉さん。ほっそりとして、でも背筋を真っ直ぐに伸ばした別嬪さん。
覚悟してたよりずっと快いカジュアルムードで、席についてほっと一息。

メニューはどうやら、その日によって違うらしい。手に入る食材によって決めるんだろうね。
スープ&サラダ、パスタ&メイン、デザートと、大きく3つに分かれた一枚のメニューを渡された。

あっさりと一文で説明された内容の、イタリア語部分がわからなくて、首をひねる私達。お姉さんが近寄ってきて、色々と優しく説明してくれる。
サラダを一品、パスタを二品。そして後でデザートを。そんな感じでオーダーしたよ。

ここでうっかり、メニューを書き留めることなく返してしまったので、返す返すも後悔・後悔。使われてた食材で初めてのものが幾つかあったのだけど、それの正確な名前もわからない。
すっぽ抜け頭の自分に、改めて激しく自己嫌悪……でもそれを慰めて余りあるぐらいに、絶品揃いのランチでした。


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まず運ばれてきたのはサラダ。目の前に置かれた色鮮やかな一皿に驚嘆する。

赤紫の普通のBeetはわかったのだけど、オレンジのものは何かと思えば、Golden beetなんだって。ビーツに他の種類があったことも知らなかった。
2種類のほの甘いビーツ、見た目がオクラの輪切りような小さい野菜のピクルス(なんとかberryという名前)の酸っぱさ、Watercressの苦味。この3つの味を、刻んだゆで卵が入った、まろやかなクリームドレッシングが包み込んでいて。
この一品ですでに目を丸くしている私達を、お姉さんが遠くからにこにこと気遣ってくれているのがわかるの。

お次はパスタ2種類。太い・極細の全く違うパスタなのに、共に絶妙なアルデンテ具合。

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Bucatiniという長いチューブ状の、それこそマカロニをそのまま長くした形のパスタを、玉ねぎ・ベーコンなどが入った、トマト&シェリーソースで和えたもの。
塩辛く、またぴりっと辛味があるのだけど、その両方共がぎりぎりのところでちょうど良く。

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もう一つはTaglieriniという、フェットチーネの極細版に、グリーンを練りこんで作ったパスタ。これとアサリを、オリーブオイルを主としたあっさりソースで和えてあるのだけど、これまた油っこさとは無縁の、またほんのり微かに感じる程度の塩味で。
これはお姉さんが「私のお気に入りなの」と薦めてくれたものだったので、改めて感謝の言葉を伝えたよ。

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デザートを待つ間に、先に運ばれてきたコーヒー。
そっと添えられたオリジナルのビターチョコレート。なんと徳利に入れられてきたミルク。こんなところでも、またすっと心が柔らかくなる。


デザートも二品。
Quince and Apple Tart with Vanilla Ice Creamと、Bittersweet Chocolate Cake

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まずはタルト。さくっとフォークを入れると、とろりと流れ出すソース。
花梨って買ったことも使ったこともないのだけど、意外とこちらのスイーツレシピで良く見かける果物。煮た食感はりんごと同様だけど、りんごほど甘くなく。

熱々のフルーツタルトにアイスクリームって、どうしてこうも合うんだろう。
フルーツに余計な味付けをせず、ただ甘さと歯応えが一番出るところで火を止めたような、素材の力そのままのフルーツ達。
厚過ぎないサクサクのタルト生地の中、抑えた量のソースだけに守られて。

そしてチョコレートケーキの方。見た目はデビルズフードケーキのような、シンプルな生地に見えて、上には粉砂糖、横には甘くないクリーム。
口に入れて味わった時、ちょっと私達の息が止まったかもしれない。冗談じゃなく、本当にそれぐらいの味だったんだ。

なんだろう、これは。ビタースイートという名前の通りにほろ苦いのだけど、とにかく普通にアメリカのチョコを思い浮かべた時に舌に浮かぶ、あの刺激のある甘さとクドさ。それが全くないんだよ。
こんなに穏やかなビターチョコって、この国のどこに行ったら会えるんだろう。もしかして日本の輸入品?(母国贔屓)

そして何よりもその食感。ほろほろと崩れる生地は、でも確かにしっとりとしているのだけど。それが口に入れると、絶妙な具合でほどけて、すうっと溶けていく。
日本のチョコで、エアーインのものがあるよね。食感としては、それにかなり近いと思う。どうしてケーキでそういうものが作れるのか、全く見当もつかないけれど。

こんなに、どれにもこれにも驚きっぱなしのランチなんて。加えて、フロアのサービスも素晴しくて。
思い切って来てみて、ほんとに良かった。それも一緒に驚いて喜んでくれる友達といられて、ほんとに嬉しかった。
今度はまた彼女と一緒に、カフェにも行ってみたいなあ。きっとそっちでも、値段以上の何かに会える気がするから。



分野を問わず、本物というものは。決して声高に主張する必要はないもので。

料理も同じで、本当に良い素材を厳選して、ほんの些細な一工程にも気を配り。それが一番力を出せるラインまでで、加える手は止める。
それを、余計な説明は何もない、ただ素材の名前を記したのみのメニューで提供する。
食べればわかる。触れれば届く。押し付けもパフォーマンスも、そこではひたすら必要悪に過ぎないもの。

真っ直ぐに、真正面に、全身の直球で。
ベストで、でも最も難しいと知っている、そんな姿勢に触れた気がする。


Oliveto Cafe & Restaurant
5655 College Avenue
Oakland, CA 94618
by senrufan | 2007-09-27 12:41


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