笑いと涙と沈黙と

Ramanavami (Hindu)


朝一番でネットで見たニュースが、植木等さんの訃報でした。

大学生活も後半になってから、理想の男性は?と聞かれるたび、「植木等」と答えてました。99%の人に引かれました。
他にはと言われて、「えーと江川卓とか、デーモン木暮とか」と述べると、90%の人が去っていきました。

直に接することができない人に憧れることはほとんどなく、だから芸能界とは縁遠く。当然、植木さんの人となりを知っていたわけでもないので、「トーク番組などで見ている範囲で」との限定条件付で、憧れていた人でした。
男性として、という面以上に、人間として憧れる。そんなタイプの人達が現実・二次元とりまぜて確かに存在するのですが、それは私が決して持ち得ないと知っているものを持っている人達だから、余計に憧れが募るわけで。

その後、ハリー・ポッターのダンブルドア校長と、「剣客商売」の秋山小兵衛が理想の男性像に加わりましたが、植木さんの地位は変わらないまま。
亡くなられた、という文字を目にするだけで、ただただ寂しくて悲しくて。
そんな朝は、まるで冬に逆戻りしたかのごとくの、寒い寒い始まりでした。

* * * * *

【個人的事情】
気温が急激に下がって、冷たい強風が吹き続いた外と、ヒーターが壊れた家の中。自分でも不思議なぐらいにやたらと寒くて、家にいる間、また真冬なみの格好に戻っていた日。



夜、電話が鳴って、取ってみたら日本の母から。大学のゼミの同級生から手紙が来ているとのことで、開封してその場で読んでもらった。
中身は、同期生が亡くなったとの、もう一つの訃報。私の代のゼミ長をつとめた男性で、新潟の山で凍死しているところを発見され、警察の調べにより自殺と判明したとのことだった。

文学部で社会学を専攻していた私達が属したゼミは、担当教授が色々と問題のある名物教授。その教授のゼミのリーダーとなると、自動的にお守り役兼防波堤を引き受ける羽目になる。
感情を荒立てることなく、いつも淡々と落ち着いて微笑む彼は、私たちの代のリーダーとして、ゼミ員全員に慕われていた。あまりに飄々とした態度が過ぎて、「本音はどうなのよ!」と、胸倉を掴んでふざけ合うこともあった。
「ゼミ長」と呼ばれるたびに、どこか照れたような、いつまでも慣れないような表情を見せる。そんな彼の姿を思い出す。

ご本人のお父様から、ゼミで親しくしていた同期生に連絡があったのが先月のこと。同期生2人でご実家を弔問し、2時間ほど色々と話してきたことが、手紙の中で報告されていた。
卒業後、ずっと一人暮らしで、仕事でも私生活でもトラブルの兆候は一切なく。ただ、彼の自宅から簡単な遺書は見つかったらしい。

突然の訃報に動転する彼らに対し、ご両親は落ち着いたご様子で、大学時代のことを色々と聞かれたとのこと。その会話を通じて、ゼミ長は自身の中で、納得してこの結果を選択したのだと思うに至った経緯が綴られていた。
落ち着いて。動揺せず。いつも静かに笑っていて。最後までそんな彼を貫いたまま、逝ってしまったのかもしれないと。学生時代から続く彼の線の、延長された末の到達点であったのか。


死を選ぶほどの絶望や悲嘆、もしくは諦観。想像は幾通りにも広げることはできるけれど。
私自身はそれほどの感情に至ったことがないので、あくまで想像するしかないけれど。せめて理解したいと、そうして冥福を祈りたいと思うのだけれど。

そんな感情を味わえない私でも、残された人達がどれほど辛いかということだけは知っている。本人しかわかりえない何かを抱えたままで逝かれることが、どれほど切ないかは知っている。
ましてや親として、子供に先立たれることがどれほどの不孝かということも、親となった今では知っているのだ。

どうして黙って逝ってしまったのかと、あの時のように胸倉を掴んで詰め寄りたいのに。この手が行き場所を見つける前に、その場所はなくなった。
来年は我々の卒業20年目に当たることが、訃報の手紙の中で知らされた、もう一つのことだった。
[PR]
by senrufan | 2007-03-27 11:47 | Trackback | Comments(10)
トラックバックURL : http://senrufan.exblog.jp/tb/6664428
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Commented at 2007-03-29 14:01 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by まきりん♪ at 2007-03-29 15:06 x
このお頃亡くなる方が多くて、人生ってって考えてしまいますよね。

特に人望があった方が選んだ自殺というのは残されたものに怒りと悲しみを与えますね。私も高校時代に友人の自殺からどうようの気持ちを体験しました。

とっても残念だけど、その人にはそういう人生の終わらせ方の決断しかできなかったのでしょうね。たまには故人が生きていたころを思い出し、そしてご冥福を祈りましょう。
Commented by マミィ at 2007-03-29 15:41 x
「ゼミ長」のご冥福を、心からお祈りします。

もしかしたら、ご両親はこういう日が来るやもしれないと、どこかで息子のことをわかっていたのかも知れませんね。

残される者の悲しみ・・・。
大学時代に一緒にバンドをやっていた男友達が、某大手広告代理店に就職直後に突然人生を放棄してしまったことを思い出しました。原因は何なのか、思い当たることはないかとご両親に訊かれ、ただただ途方にくれるだけの情けない自分でした。
Commented by Sledge at 2007-03-29 22:14 x
植木等さん、私も人生の師匠でした・・・と言っても自分が知ってるのは映画やTVの中の植木等さんですが。父親のことを書いた著書を読んだことあるのですが、かなりお父さんは変り者だったらしく、それがあの植木等を産んだのか?と感じる部分もありました。

あちこちで報道されていますが、地の植木等さんはまじめな方だったようで。やはり演じる部分と違うのだな~と。
Commented by usayamama at 2007-03-29 23:05
ゼミ長さんのご冥福を心からお祈り致します。

ニュースを見るにつけ植木等さんてとっても愛されていた方
だったのだな、と改めて感じています。
今夜は追悼で「日本一のホラ吹き男」がテレビで放送されています。
私は好みを聞かれて「武士みたいな人」って言うとかなりひかれます。
ストイックで良いと思うんだけど・・・。
Commented by senrufan at 2007-03-30 10:48
*非公開コメントさま
ああ、同士がこちらにもいらっしゃった!(がしっ) 肩を寄せ合って一緒に泣きたいです~(涙涙) そなのです、訃報なんて続いてはいけないものなんです。6~7年前にも、1週間のうちに知り合いが病死や自殺で3人も亡くなって、しばらく立ち直れなかった時がありました。何がつらいって、「自分には何もできなかった」「今もできない」というのが何よりも……お互い、ゆっくり時間をかけて、堂々巡りから抜け出していきたいですね……
Commented by senrufan at 2007-03-30 10:50
*まきりんさん
そうですね、病気や事故もつらいですが、自殺というのはまた違った辛さがあって。本人が納得した終わり方、とこちらの気持ちを納得させることが、とても難しくて。
おっしゃる通り、せめて色々と思い出して、自分なりに偲んでみたいです。
Commented by senrufan at 2007-03-30 10:53
*マミィさん
ありがとうございます。ご両親がせめてそう思っていられたのなら、まだ少し救われるような気もしますね。
マミィさんのお友達の場合は、ご両親もマミィさん達ご友人も、さぞかしお辛かったことと思います。理由を全て言ってくれれば自ら命を断ってもいいわけはないのですが、でもせめて何か、手がかりが。そう思ってしまいますね。
Commented by senrufan at 2007-03-30 10:56
*Sledgeさん
すばらしい方でしたよね、植木さん。地は真面目、それも信じられます。演じられている外側しか知りませんでしたが、なんというか、それだけの器を持っていらっしゃる、と思わされてならない方でした。私も著作を読んでみたいなあ。
Commented by senrufan at 2007-03-30 10:59
*usayamamaさん
ありがとうございます! 皆さんからいただけるその一言で慰められます。

ああ、私も植木さんの追悼番組を見たいです~。大学時代に色々と見たのですが、もうすっかりぼやけてしまってて。
「武士みたいな人」、それは私も理想ですよ! 潔さと責任をとる強さ、流されない優しさ、我を抑える意志力。そんなものを「武士」という言葉に全て託して、理想と思います。


<< それでも高みに手を伸ばし 理想は常に輝くけれど >>