大小の波は果てがなく

お嬢からもらったクリスマスプレゼント。

   「お手伝い券(3回分)
     *英語以外   」

英語以外の何を。(悩)←家事手伝いは義務と見なしているので券を使いたくない

* * * * *

【読書】
b0059565_13533078.jpg北原亞以子著「傷~慶次郎縁側日記」を読む。元・同心の森口慶次郎が出会う人々と事件簿の第一弾。



まずは慶次郎があと半月で江戸は南町奉行所の同心から隠居する、という時から始まる。そしてこの短編集の中でも、一番悲しい事件が起こる。
実の娘が暴行を受け自殺、という悲劇に見舞われ、突きとめた犯人に対し、同心として対峙するか、親として復讐を遂げるか。そんな激しい葛藤と苦悩を描いた「その夜の雪」。
以降、酒問屋の寮番として隠居生活に入った慶次郎だが、なかなかどうして、事件は身近なところで色々と起こるのだ。

北原さんの作品は、以前にエッセイを1冊読んだ時に惹かれるものがあって、早く本業(?)の時代劇を読みたいと思っていた。どれにしようか迷ったところで、出会ったのがこの慶次郎日記だったのだね。

時代劇で今まで読んだ池波正太郎や藤沢周平に比べ、まず目に留まるのが、どこか現代に近いような文調と、非常にきめ細かな表現だ。
大げさな表現は無く、むしろ控えめに抑えた、しかしきちんと中身のある。池波氏のような娯楽性はないものの、実に誠実な印象を受ける。

時代物というと勧善懲悪がつきものだが、この作品に関してはその色合いは薄い。それより、事件に関わる人間の、正義も悪も関係なく、ただその心情を描き出すのが主眼であるようだ。
空き巣の伊太八の、”仕事”というものに対する葛藤。幼いながらも少女を助けようとする源太の涙。ろくなことにならないと知ってはいても、亭主を見捨てられないおせん。短編とは思えないほど、凝縮された感情が一文一文から溢れている。
慶次郎が主人公の位置にいるのだが、どちらかというと数々のドラマの見届け人のような、話を結末に持っていく為の案内人に見えることもある。

その時々の感情を主題とすれば、では最後はどうなるか。
この本の中の幾つかの物語は、明確な結末を持たない。ぼかすようであったり、一見尻切れトンボのようで、でも考えさせられるだけの材料は提示されていたりする。
短編の終わりになって、確かにその中で起こった事件は幕を降ろそうとする。が、登場人物達の胸からそれが消えることはなく、これからもその味わった思いを抱えて生きていく。そんな道筋が見えるのだ。
悪が罰せられて終わり、というのは、非常に胸がすっとするし、それが時代劇の醍醐味の一つであるのは間違いない。しかしこういう描き方で、こういう捉え方で、何もかも人間が関わるが故のこと、そこには途切れることのない感情があるのだ、と教えてくれる。
最初に”どこか現代”と思ったのは、この点にあるのかもしれない。

こんな時代物に出会った。大きな収穫と実感している。
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by senrufan | 2006-12-27 13:51 | Trackback | Comments(4)
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Commented by peartree22 at 2006-12-30 23:19
おおお、この方、まったく知りませんでした。面白そう、面白そう。
早速また、メモ、メモ。
お嬢様からのクリスマスプレゼント、いいですね♬そして母娘のやり取りもまたいい、いい。
家事手伝いは義務というの、私も賛成です(笑)。今は嬉々としてお手伝いをしてくれるんですけれどねぇ~。ビデオに撮っておいて、将来見せようと思っています(笑)。
あ、もう作ってしまわれましたでしょうか?黒豆。もし間に合えば、黒豆UPいたしました。写真、ぼけてしまいましたが・・・。
Commented by Miyuki at 2006-12-31 13:17 x
*ちゃんさまあ
いやあ、いい本でした。じっくりとストーリーを味わいたい時にお薦めです。
そう、家事の手伝いは義務! むしろ邪(ピーッ)なのを我慢して教えるんだから、こっちに何かよこせ!ってなもんです(笑) うん、アネネちゃんの年頃辺りが一番手伝いたがりますよね。で、ほんとに役に立つようになってからは来てくれないのです、あうう。証拠ビデオ、必須。
ふっふっふ、私がちゃんさまブログをチェックしないで黒豆に手をつけましょうか。拝見しましたよ~、無茶苦茶感謝ですよ~vv 今、煮汁につけているところです。教えていただいた秘訣を胸に、明日はがんばるです!
Commented by USAに住む江戸っ子 at 2011-02-05 07:00 x
母の日に息子から【肩たたき3回】券を貰った事があった(笑

あれから古い順に読んで、ようやくここ迄きました。
このブログを本のブログにしようかと、お考えになられたと
いう箇所があるくらい本がお好きなのですね。

ボキャブラリー豊かなタイトルにとても魅かれますが
読後の感想文にはMiyukiさん心のありようが溢れていて 読めば読むほど
ずっと前から知っている人のように懐かしくなる。

今度、本屋に行くチャンスがあったら養老孟司氏のを買ってみよう
それと、山本夏彦氏にも魅かれました。

私もBOOK。。Fをヒイキにしていて、後のことを考えずに買いこみ
スーツケース一杯の重い本を自分で運んだ事があって、ソリャアしんどい思いをしました。

優しい ご主人さまに感謝ですねえ!



Commented by Miyuki at 2011-02-05 11:52 x
*USAの江戸っ子さん
肩たたき券は永遠のベストセラーですよね!(笑)

はい、一時はほとんど読書感想日記と化してましたから~。
そして読書感想ブログを新たに立ち上げたら、そちらは今ではすっかり止まってしまっております(爆)

わあ、ほんとにいつも優しいお言葉をくださって、ほんとにもう、なんてお礼を申し上げたら良いか。(じ~~~ん)
本があること、本が読めることにいつも感謝しているので、それをカケラでも伝えられて、どなたかが読んでくださればいいなあ、と思って書いていました。
なので、江戸っ子さんのお言葉は、何よりの喜びでございます。

そうなんです、旦那に足を向けて寝られないのです。まあ実際、横並びに寝てるんですけど(殴)
出張と聞くたびに喜ぶという、大変な悪妻でございます。


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