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目に映るだけでなく


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12月の1・2週目の週末は、あちこちでホリディセールです。これまたクリスマスギフトを調達する良い機会なんですね。

特に今週は、木曜から日曜までの4日間で、私が知っているだけで6つのセールが催され。
全部を回ったら身体も財布ももたないので、厳選してあれとこれと。

収穫は眼福や舌福の至福ばかり。
食べ物はおしいただいて、飾り物や陶器はできる限りの時を過ごして。


で、肝心のお世話になっている方々へのギフトは一体どこに(愕然)(自分のものしか買ってない)

* * * * *

【雑事】
映画「硫黄島からの手紙」
クリント・イーストウッド監督の手による、硫黄島の戦いを描いた二部作のうち、日本側視点を描いた作品。米国側視点作品は「Flags of Our Fathers(父親達の星条旗)」にて公開されている。
米国内公開を来月に控え、当作品が先日の米国映画批評会議賞(NBR賞)において、最優秀作品賞を受賞した。



米軍の硫黄島総攻撃。擂鉢山に星条旗を立てようとする米国兵士6人の写真は、あまりにも有名だ。
日本兵士約2万人に対し、16万人という数で攻め入った米軍部隊。5日間でおちるだろうと思われた硫黄島は、しかし予想を遥かに裏切り、36日もの間の激闘となった。その日本側の指揮をとったのが、栗林忠道中将である。
硫黄島を突破されれば、日本内地への攻撃に至る。無数の地下壕を張り巡らし、ゲリラ戦法で米国を苦しめた栗林の心中にあったのは、ひたすら日本の家族への愛情と思い。
戦地から家族に宛てて書かれた41通の手紙は、妻と子供への労わりに溢れ、訥々と温かい言葉が並べられていて、背景を思うと更に涙を誘われずにいられないものばかりだ。


最近読んだある本にのっていた一文。おぼろげだが、
「たとえ夫が極道であっても、妻はそれに目を向けることはない。彼女にとっては、ただ目の前に見える、家庭の中での夫の姿が現実なのだ」
というような内容の文だった。
これを読んで思い浮かべたのが、チャップリンの名作、「殺人狂時代」。主人公の連続殺人犯のヴェルドゥは、外では冷酷な殺人者、家に帰れば妻子を愛する温かい父親であった。

例えば友人と会った時、たまに別なご主人の悪口を聞かされることがある。それが私の知っている人で、私は好意を抱いている場合、その人の別な側面を突きつけられるようで、一瞬の困惑は隠せない。
そういう経験が続くと、それは別な不安を生み出す。つまり、では自分の旦那は果たしてどうか。私は家庭内の彼しか知らないが、会社内での評判はどんなものか。
職場では職場での彼の姿と、それに対して他人が抱く感情があるのが当然であるのに、なぜかその事実が輪郭をクリアにして、不安と共に訪れる。

栗林中将の話を聞くたび、もう一人の中将の話が浮かぶ。日本陸軍の本間雅晴中将。フィリピンでのバターン死の行進の責任を問われ、戦後のマニラ戦犯裁判で死刑となった人である。
学生時代に友人から借りた本、「いっさい夢にござ候-本間雅晴中将伝」。この中で綴られた彼も、やはり家族を愛する良き夫・良き父親であり、最後の裁判において、彼を弁護する為に証言台に立った富士子夫人の言葉は、いまだに忘れることができないままだ。
彼女は凛とした姿で立ち、本間がいかに素晴しい人間であるか、自分が本間の妻であることでどれだけ幸せであったかを得々と語り、最後はどこか夢見るような視線で述べる。
「私共には娘が一人おります。彼女が結婚する時、どうか本間のような男に嫁いでほしい。私にとって、本間雅晴とはそういう男です」
本間本人も人目をはばからず号泣し、裁判に臨席する人々もたまらず涙を流したという。

自分の夫に対し、こんな風に言い切ることができる妻が何人いるだろうか。
富士子夫人にとっては、彼女の目に映る本間の姿が、かけがえのない現実であったのだ。


今日の夜、お嬢の英検合格祝いの為に訪れたレストラン。
一緒に来てくれた友人に向かって、自分の仕事について語る旦那を見ながらよぎるものは、決して一言で表せるだけのものではない思いばかり。
by senrufan | 2006-12-09 14:26


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