知性と括るその中身

昨夜回った補修校の緊急連絡網&メール。
「借用している現地校でガス漏れが発生した為、明日の補修校はお休みとなります」
今日は、授業参観と個人面談が予定されていました。
なんでまた、よりによって、計ったようにこの日に。

* * * * *

【読書】
b0059565_1393199.jpgA.J.ジェイコブズ著「驚異の百科事典男」を読む。ジャーナリストである著者が、百科事典「ブリタニカ」全32巻読破に挑戦した過程。原題は「The Know-It-All」。

まず、雑学好きな人にはとても面白い本。「ブリタニカ」の項目AからZまで、それぞれ著者にとって目新しい言葉を挙げ、中身について触れている。
同時に、エッセイ好きな人にも興味深い。その挙げられた言葉について書かれているのは、詳しい説明よりも、彼の生活雑記や個人的感想が主体である。
更に、私のような複数併読型にもありがたい。細切れに区切っても問題なく読めるのだ。



ではトリビア的な本かというと、本筋がちゃんとある。著者がブリタニカを読み進めるうちに感じるようになったこと、周囲の反応、自信の獲得と喪失、メンサ(米国高IQ集団)への入会などを経て、最後はTV番組「クイズ・ミリオネア」に挑戦するのがクライマックスとなっている。
あとは、夫人との子作り奮闘とか。なかなか子供ができなくて悩むのは、私も少々覚えがあるので、明るく書かれてはいるが悩みの深さを感じるところ。
元々の動機は、父親に対するコンプレックスであることが明言されている。自分を神童だと信じていたが、大学卒業後から低下の一途を辿り、35歳では恥ずかしいほど無知だと感じるようになる。著作も多く、優秀な弁護士である父に対して抱く劣等感が、父がかつて試みて中断した「ブリタニカ」読破に繋がっている。

挑戦を始めてからの彼の心情と行動は、アメリカのTVや映画に良く出てくるような、と言えばいいのか、そんな印象を持っている。
自分が始めたことを皆に告げたい、賞賛と励ましが欲しい、チャンスを狙っては薀蓄を垂れ、それで周りの空気がさめても見ないふりをする、でも実は密かに傷ついている。明るく冗談めかして書いていて、得た知識に対して深刻にならず、謙虚さがうかがえても、その影の自信と自己顕示欲は隠しようもなく、何度も笑わせてもらった。
ポップカルチャー誌の編集者という職業に良く合った人物像と内容、と思ったのは私の偏見かもしれないが。

「クイズ・ミリオネア」の出場が終わり、Zの項目に至り、最後に彼が得たものは何か。知識を詰め込んだ結果、それは芳醇な知恵となりうるか。
そんな深刻な哲学などはないけれど、彼が辿り着いた心境がある。睡眠不足という犠牲を払いながら、彼が得たものは知識だけではないと告げてくれる。彼に近づいて握手を求め、肩を叩きたい気持ちになる。

私自身、本を1ページも読まない日はないが、それで知識や知恵が身についたかというと、むしろ読めば読むほど自分は何も知らないと感じ、もっと読みたい本が増えるばかりだ。
ジェイコブズ氏も、これ以降は普通の読書に戻るだろうが、決して以前と同じ姿勢ではないだろう。読んだ後は、読む前の自分には戻れない。知った後は、知らなかった自分には戻らない。
父への劣等感から始めた偉業を成し遂げた彼は、今度は念願の父親になって、新しい父子関係を築いていくのだろう。
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by senrufan | 2006-11-04 13:08 | Trackback | Comments(2)
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Commented by まきりん at 2006-11-06 16:19 x
よりによって授業参観と個人面談が予定されていたのにガス漏れが発生とは?でも、実際に授業中に発生したら大騒ぎだったね。不幸中の幸い?
Commented by Miyuki at 2006-11-07 01:50 x
*まきりんさん
それは本当ですね!>授業中に発生
しかし毎週土曜一日だけの学校なので、一つスケジュールがずれると、後々調整がめんどくさいのですよね。思わず誰かの陰謀か!?と皆で盛り上がってしまいました(笑)


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