外的変化と内的進化

友人と、お互いお腹が出てきたことを嘆いていたら、彼女が言うには、
「でもねえ、うちの父も母も出てたから、きっと遺伝かなあと思うんだけど
全人類共通の遺伝子が、また一つローカルに発見。

* * * * *

【読書】
b0059565_13592432.jpgアリス・キンバリー著「幽霊探偵からのメッセージ」を読む。ミステリ専門書店の店主と、その店に住み着く幽霊とのシリーズ第一作。

シングルマザーのペネロピー、伯母の本屋を共同経営することになり、その最初の企画として、売れっ子ミステリー作家を呼んだサイン会を開催する。
ところがその会場で作家が急死、更に幽霊が登場。死んだ作家の書いたシリーズの主人公のモデルとなった私立探偵らしい。彼の力を借りながら、ペネロピーは犯人を見つけるべく奮闘する。

またまた新しいコージーミステリー。さすがに食傷気味になってきたので、最近手を出すのを控えてはいるものの、これは中でも結構当たり、と思った本。地域密着で、個性的な地元民多数。色々と最近特に多いタイプのコージーの典型なのだけど、まずは主人公のペネロピーに、素直に好感と共感を抱いたのが大きいか。

結婚中は旦那と旦那の実家にいじめられ、仕事も華やかなNYの出版業界に身を置いていたものの、「真面目な努力家は報われず、押しの強いお調子者ばかりが引き立てられる」という現実の前に、彼女には最悪の日々でしかなかったらしい。しかしそんな思いをしても、彼女は核を変えず。
「自分をひけらかすのはいけないことであると教えられて育った。自慢はうぬぼれの表れであり褒められも讃えられもしない、と親からは言われた。そして正直なところ、今でも私はそれを信じている」
この言葉に、必要以上に惹かれてしまったのかもしれない、と自分で思う。努力家が報われるとは限らない、要領のいい奴ほど得をする。そんな苦い思いを幾度となく味わって、それでも自分の価値観を変えられず、子供に正にペネロピーの親のように教えて、しかしいつもそれで良いのかと自問自答を繰り返し。そんな葛藤する部分が共鳴したのであれば、自分でも思わず苦笑するしかないのだけど。

あとは幽霊探偵ジャックの存在だろう。最初にタイトルを見た時は、飽和しつつあるコージーだから奇抜さを狙ったのか、と思ったが、これがなかなか設定をしっかり固めてあるらしく、おとなしいヒロインにハードボイルドの味を添える。
ペネロピーの書店で命を絶たれたジャックは、なぜか書店から離れることができない。一体彼の最後に何が起こったのか、この先ずっとこのままなのか、その謎が今後シリーズを通して解かれていくようだ。

ジャックの謎、ペネロピーの成長ぶりと、この先の作品を楽しみにするだけの種は、十分撒かれている。ミステリ書店が舞台なので、ミステリ作家名や作品名が色々出てきて、そんなところも楽しみの一つ。
ちなみに著者のアリス・キンバリーとは、マーク・セラシーニとアリス・アルフォンシという夫婦合作によるペンネームなんだそうですよ。



* * * * *

【時事】
遺伝学者のDr. David Hausslerのチーム(UC-Santa Cruz)、人間の”脳”遺伝子を発見したと報告。
脳を構成する遺伝子は数多あるが、HAR1と名付けられたこの遺伝子は、人間を特別に進化させた過程で重要な役割を果たし、脳が複雑に発展する間に活発な働きを見せるという。
Dr. Hausslerは、この遺伝子が大脳皮質の構成に一役買っているのでは、と考えている。

なぜ人間だけが進化したのか? 2百万年前、人間の脳はチンパンジーの約3倍にまで大きくなり、認識力の発展における細胞の変化があったと信じられている。
Dr. Hausslerとチームは、この急激な変化がヒトゲノムに足跡を、つまり遺伝的変化をもたらしたに違いないと判断した。

この研究でチームはまず、5~7百万年前に人間がチンパンジーと分かれて以来、最も劇的に変化しているヒトゲノムの部分を特定した。
HAR1領域は、人間以外の哺乳類では本質的に同じだが、人間においてはチンパンジーと道を違えて以来、18箇所で変化した。それはおそらく、その進化が生物学的に有利であったからであろう、とDr. Hausslerは述べている。


チンパンジーと人間の遺伝子は1%しか違わないそうだから、このHAR1はその1%に当たる部分にあるのかな。
知性によって人間は他の生物より抜きん出た、という見方より、それぞれの生物がそれぞれ違う身体を持つように、人間も脳に特色を持つ生物の一種、と思っていたらどうだろう。
知性があることが生活能力の高さと結びつかないのは、人間界に幾らでも転がっている事実。
[PR]
by senrufan | 2006-08-17 13:58 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://senrufan.exblog.jp/tb/5513842
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]


<< 知らない頃に戻れれば そんな軌道の交点で >>