無限数の停泊地

旦那、日本出張から帰宅。2ヶ月ぶりだったので、持ち帰り荷物が大量。本とか本とか本とかな。

ああ。このままどこかの星に行ってしまいたい。(本の山を抱きしめながら)
この時の肉体労働の故に、私は誕生日も結婚記念日もプレゼントはねだれない。

* * * * *

【読書】
指揮者の岩城宏之さんが、心不全の為に亡くなられたことを、母からのメールで知った。思えば岩城さんの本を読むようになったのも、母の薦めからだったと思い出す。
ちょうど今読みかけの本が、岩城さんの「棒ふり旅がらす」だったので、尚更ショックは大きかった。
今日、残り半分を一気に読み終える。しかし訃報を知った後では、もう前のような気持ちでは読めないものだとぼんやりと思う。

文字通り世界を股に掛けた指揮者の岩城さんは、3日メルボルンに滞在されたら、次はNYに1週間、その次は日本に飛んで2日滞在して、そのまま今度はパリへ……というようなハードスケジュールをこなしておられたのだが、その旅の先々から送られたエッセイが、週刊朝日に連載されたのをまとめたのが本書である。
文庫本で3ページほどの短いエッセイが、その時々の経験や、過去にその地でで味わった思い出などを軸に、軽妙に笑いと涙を交えて語られていく。一体何箇所行ったんだと思ったら、解説によると13カ国38箇所。めまぐるしいなんてもんじゃありゃしない。

学生時代にオケをやっていたにも関わらず、オケ内クラシック知らない同好会の名誉会員であった私は、指揮者としての岩城さんをほとんど知らず、エッセイストとしての岩城さんのファンである。こんなファンはいらないと言われそうで、でも岩城さんなら許してくれそうな気もして(希望的観測)、ご本は何冊も読んできた。この日記を始めてからだけでも、数えたら7冊読んでいた。

岩城さんの書かれる文は赤裸々であからさまで、照れ屋で感激屋で、やせ我慢とにじみ出る優しさで溢れている。良くも悪くも大変な目に沢山あっていらっしゃるのに、氏にかかるとそれはあくまでも一エピソード、その瞬間の出来事として口早に語られる。もしくはあまりに体験される出来事が多いが為に、均等に重みを分けていくと、そのような形になるのかもしれない。
激したこともさらりと書かれ、説教も感傷も引きずらない。最後の一文で見事にまとめる。読みやすさという点では特に秀でておられたと実感する。

氏の今までの本も、短めのエッセイを何本かまとめた形が多いが、この本は中でも特に短編ばかりでその分収録数が多く、岩城さんの日常と積み重ねられた過去を気軽に一望できるようで楽しい。そんな短い文の一つ一つに、一々泣いたり笑ったりと忙しい私も相当なもんだ。加えて訃報を聞いてから読んだ後半は、更に涙もろくなってしまって困った。

母から訃報を聞いた時、まずはネットで新聞記事を探した。読売はすぐ見つかったのに、なぜか朝日も毎日もおくやみの中に見つからなかった。もしやと思って探した報知にはあった。
というのは、この本の中で岩城さんは大の巨人ファンであられること、江川問題の時には朝日も毎日も嫌いになり、読売と報知しか読まなかったことが書かれていて。その後、また元通りにされたとおっしゃっていたけれど、もしかしてそのままご自分の訃報も、読売と報知だけにのせるように希望されたのだとしたら、それはとても私の思う岩城さんらしいなあと、思わず信じてしまったのだった。
これは当然ただの私の力不足で、朝日も毎日も別な欄にちゃんと掲載されていたのを発見し、自分のオッチョコチョイ加減に大笑いした。笑って笑って目頭を押さえても、流れる涙をしばらく止められなくて参った。

岩城さんのご本は絶版も多くなり、今ではなかなか手に入らなくなった。父がこまめに探してくれるブック○フの本には、どれも¥105の値札がついたままになっている。
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by senrufan | 2006-06-13 06:37 | Trackback | Comments(0)
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