捨ててはいけないものがある

先日事故にあった現場を通りかかったら、パトカー2台と発煙筒数個、ボンネットがぐしゃんとつぶれた車に出くわした。

本当に。 ラッキーだったかもしれない私達。(青ざめて通り過ぎながら)

再びお嬢と、交通安全のお守りをなでなでする。守ってくれてありがとう。
できたら今後は、はなっから事故に遭わないというご利益で一つよろしく。

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【読書】
誰だよ、読書感想強化なんて言ったのは…!(読み終わった本の小山をじと目で睨む)

b0059565_11541637.jpgポール・リンゼイ著「鉄槌」を読む。
デヴリン捜査官シリーズを始めとして、一貫してFBI小説を書き続けているリンゼイ。自身がFBI捜査官だった経験を存分に生かし、現場の厳しさをリアルに描くと同時に、現在のFBI体制への痛烈な批判を下し続けている。

今までの2シリーズでは、官僚主義・ことなかれ主義の上官に盾突きながら、任務遂行に全力を尽くす捜査官が主人公だった。が、今作ではむしろダメ人間なキンケイド捜査官。アル中でギャンブル中の落伍者、しかも隠れて現金盗難にまで手を出している。
そんな彼が爆発事件をきっかけに、久々に現場捜査に加わることになる。彼の相棒にあたるのが、癌の為に片足を切断したばかりの黒人捜査官。生真面目で根性を絵に描いたような彼と共に行動することで、キンケイドの中に押し込められていた正義感と、捜査官としての誇りが蘇ってくる。

今までのリンゼイの著作はもれなく大好きだ。ミステリー、ハードボイルドとしても秀作だし、とにかく主人公とその仲間達が、揃いも揃って男前だったらありゃしない。危険を笑い飛ばしつつ任務に命を賭け、信念を胸に正義を遂行する。それが故に、官僚的な上司からほされる羽目にもなる。古き良き時代のヒーロー像のようでいて、しかし現在でも誰もが憧れるものを彼らは持っている。
彼らを、現在でも凄腕と認められる捜査官に描けるのは、やはり現場を知っているリンゼイならではだ。捜査手順や現場での行動、綿密な知識と実感があるからこそ書けるものに他ならない。
それは今回のキンケイドであっても、本質は変わらない。道を踏み外しながら、堕ちるところまで堕ちているようでありながら、それでも消されることのないものを心に秘めている。相棒になるオールトンも、全く違うスタンスで、しかし見据えているのはあくまで犯罪への怒りと、自分達がそれを防ぐという誇りと勇気だ。

正直、デブリンのシリーズなどと比較すると、少々佳作気味ではあるのだが、それでも最後まで一気に読ませるスピード感と迫力はさすがだと思う。ラストはショックの後に、じんわりと胸が熱くさせられる。



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アメリカ製ハードボイルドを読むと、必ずと言っていいほど絡んでくるのが、人種と育ちという背景だ。今回のオールトン捜査官にしても、彼が黒人だということに対する周囲の反応と彼の自意識は、またかと思うほど典型的で。
映画でもTVでもこれだけ何回も繰り返されるのが、異邦人である私にはどこか距離を持って写る。

これは本当にこの国が根深く抱えた病巣なのか。
それとも逆に幾度も声高に言うことで、物事を事あるたびにその観点から分析することで、かえって万人に刷り込んではいまいか。

ただ言えるのは、その立場で育った人間にとっては、確かにそれが直面する現実なのだろうということだけだ。その現実を変える術は、現実を作り出す人間しか持ちえない。
特効薬を望むのではなく、目の前にある小さなことを積み重ねていく。いつか辿り着こうとの信念を持って、自分の仕事をこなす。それはリンゼイの描くFBI捜査官の姿と同じであるかもしれない。
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by senrufan | 2006-04-03 11:50 | Trackback | Comments(0)
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