終わりも良ければ全ては更に

【読書】
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著、デイルマーク王国史シリーズを読む。

b0059565_12524073.jpg3巻の「呪文の織り手」。1・2巻は同時代設定だったが、これはいきなり古代に飛ぶ。
それぞれの家に<不死なるもの>を表す像を置き、守り神としてた時代。デイルマークという名はまだなく、<川の国>と呼ばれていた頃。小さな村に住んでいた兄弟たちが、戦争をきっかけに村を追われることになる。
彼らが旅をする<川>を舞台に、出会う人々は果たして敵であるのか、味方であるのか、それとも人間ですらないものか。そんな数々の出来事が、次女タナクィが織る織物に文字として現れ、彼女は同時に語り手にもなる。

前巻まででも頻繁に出てきた<不死なるもの>。
イコール神ではないというが、確かに大きな力を持ち、そしてよほどのことがない限り死なない者たち、という姿がさらに明確になる。そして完全に相反する存在、魔術師カンクリーディンが、敵としてようやくその輪郭を同様に明らかにする。
物語の中で、<不死なるもの>の忍耐と諦観と期待がうかがえる箇所がある。人間に直接答えを与えることはできない、助言も不可、しかし彼らが気づいて変わろうとするのを膨大な忍耐力でもって願いながら待つ。気も遠くなるような一連のことを耐えうるのも、無限に近い時間を持つからか。そんな彼ら自身、人と共に生きる時間を持ちうるのも、この時代=魔法が日常である日々だからこそ。
この巻で出てくる登場人物達が、デイルマークという国の基礎を作ったことが最後で謳われている。

b0059565_130356.jpg続いて4巻の「時の彼方の王冠」。完結編。
3巻まで発刊された後、この4巻は14年後の刊行だったそう。シリーズを一気に読めた私は幸せだ。というのは、4巻が総まとめであり答えであって、これを読まないと自分の中でのシリーズは決して終わらないからだ。

現代の少女メイウェンが突如飛ばされた先は、なんと200年前のデイルマーク。そこで彼女はモリルやミットなど、今までの登場人物と出会い、王位を得る為に、宝を探す旅に出ることになる。
メイウェンが加わったことで、デイルマークがかなり身近になった。今までは当然と省かれていたことが、メイウェンの目を通して描写されるので、改めてこの時代を感じなおすことができる。
わけもわからないまま、大変な使命を負わされてしまった彼女だが、泣いたり笑ったり開き直ったりしながら危機を乗り越えていく。

メイウェンは現代から来た分、彼らのことを”歴史”として知っており、その辺りも面白い。
今までの登場人物が、それぞれの冒険の後、一体どうしているのか。さらにこの旅を通じて、どんな運命に直面するのか。またそこで、一筋縄ではいかない設定が用意されているのが、ジョーンズならでは。人は変わるし、環境も変わる。そんな単純にいくわけがないのだな。
そして今までの物語との繋がりが、なんと巧妙なことか。4巻を読んで始めて、いかにジョーンズが緻密に全ストーリーを練り上げていたか、というのがしみじみわかる。
すでに3回通して読み直したが、3回目でもまだ新しい発見があった。何気ないセリフや些細な出来事が、後々に繋がっていく重要なファクターだったりするので、それに気づくたび、「またかーっ!」と地団駄を踏む。皺無しノーミソで続けた挑戦。

ラストがいかにも現代らしい、元気で微笑ましい終わり方になっている。思わずto be continuedの文字を期待した。
1巻ごとに十分楽しませてもらって、さらに全巻通してこんなに圧倒させてくれて、手が痛くなるほどの拍手をジョーンズに。
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by senrufan | 2005-09-15 11:25 | Trackback | Comments(0)
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