型にはまる安らぎ

藤沢周平著の用心棒シリーズを読む。「用心棒日月抄」「孤剣」「刺客」「凶刃」の4冊。
池波正太郎の剣客商売シリーズと交換で、友人から借りたもの。藤沢氏の作品は初めての私に、一番読みやすいものを薦めてくれたらしい。(感謝)

諸事情により脱藩することになった青江又八郎。常に追手に目を配りながら、江戸で浪人生活を送る。
一巻目の「用心棒日月抄」は、又八郎が生活の糧として選んだ用心棒業の徒然で、短編集の形をとっているが、次第に明るみに出る藩の事情と赤穂浪士の討ち入りが芯をなす長編でもある。
結果的に、浪人生活から足を洗って無事帰還したものの、藩の裏事情に深く関わることになった彼は、それからも3度藩命を受けて、江戸にて浪人として暮らすと見せかけ、密命を果たすべく奮闘するのがこのシリーズ。

主人公はどちらかというと強いインパクトのない人物であるが、脇役がそれぞれ個性豊かでがっちりと周りを固め、土台となる堅固な世界を作り出しているのは、時代劇の醍醐味とも言うべきところ。
しかし池波正太郎のような娯楽性のある文章ではなく、なんというか、緻密で生真面目な語り口。これまた真面目でお堅い又八郎を表現するのにふさわしいというべきか。
そんな固い一方になりがちなところを、用心棒業の相棒である細谷だの、口入屋の吉蔵だのが、アクの強さで救ってくれる。
そして又八郎の江戸での秘めた恋愛も、小説の品を落とすことなく、切なさと柔らかさで包んでくれる。

当初は28歳であった又八郎も、4巻では既に40代半ば。最早続きはないだろうとは思うのだが、いつまでも同じ舞台で、同じような活躍をほのかに期待してしまう、これもまた一つの時代劇にはまった証拠である。
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by senrufan | 2005-08-01 13:59 | Trackback | Comments(0)
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