本の数だけ在る世界

「知識には二つのタイプがある。
一つは物事を知っていること。
もう一つは、それをどこで見つけるかを知っていることである」
   ----- サミュエル・ジョンソン
       (イギリス人、詩人・批評家、1709年9月18日生まれ)


     図書室の魔法1 図書室の魔法2

ジョー・ウォルトンの「図書室の魔法」(上下)、読了。
すごく面白くて、久々にページを繰る手が止まりませんでした。
一少女の日記形式で書かれた、ある意味、淡々とした物語なのですけど、なんでここまで入り込んで楽しめたのか。
分析するに、幾つか理由があったのですが、そういうことはブクログで書いたので、ここでは置いといて。

主人公の少女・モリが図書司書に、こういうことを言うシーンがあるのですよ。

「図書館の購入予算を制限するのは、絶対におかしいと思う」
(中略)
でもわたしは、間違ったことを言ったとは思っていなかった。
ロシア人を皆殺しにするための核兵器を造るお金があるなら、全国の図書館にまわせばいいのである。
図書館を充実させることに比べたら、イギリス独自の核抑止力なんてどれほどの価値があろう?
優先順位がどこかで狂っているのだ。

ああ、ほんとにそうだよなあ、と思ってしまった私は、本というものにすごく重きを置いているから、なのですよねえ。

* * * * *

【時事】

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上記の本の感想から、ちょっと続けて、ぐだぐだと。
またぐだぐだモードスイッチが入っちゃったので、「読まない方がいいですよ」モードも同時にオン。




日本の一部で、今、ヘイトスピーチが問題になっていますよね。
国連から勧告を受けましたが、それがどれだけ効果があったのか、私が見ている狭い範囲では、変わってないどころか、余計な口出ししやがって的な色まで見られるほど。
悲しくて、情けなくて、なりません。
が、これを私がその人達に向かって言うと、「この出羽守が!」みたいに言われてしまうんだろうなあ。でも書くけど。

先日、こんなニュースが流れました。

Man arrested after racist rant on the London Underground goes viral

ロンドンの地下鉄で、とあるイギリス人の男性が、乗っていたアジア人女性(韓国の方だそう)に、
「ジャップはイギリスから出て行け」
「俺の親戚は、先の大戦で、クウェー川で戦った。お前らは彼を拷問した」
と、Fワードを連発して絡んだ動画がのっています。

見るに見かねた別の男性が割り込み、
それは彼女とは何の関係もないことだ、
とやり返してくれるんですが、当の男性は止まりません。

結局、このビデオを元に、この男性は逮捕されました。
罪状は、a racially aggravated public order offence だそうなので、完全に人種差別発言と行動によって、ですよね。
差別はどんな国でもありますし、レイシストもどこの国にもいます。
ただ、証拠があれば法で取り締まれる国と、証拠があっても何もしない国がある、ということです。


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正直、この動画は見るのが辛かったです。
というのは、私も近い経験は何度かしているので、その時の恐怖が蘇ってきちゃうんですよ。
それでも、多人種が溢れるベイエリアにいられるおかげで、この手の経験はすごく少ない方だと思うんですよね。

この手のことを言われた時の気持ちは、上手く表現できないのですが、確実に血が冷たくなる、というか。
自分に落ち度がなくとも、いきなり差別や攻撃を受ける、あの気持ち。あの感覚。
頭の中が白くなって、脳がなんとかして拒絶しようと動いているのがわかるような。
性的な嫌がらせやハラスメントもそうですが、なかなか咄嗟にどうこうするのは難しいことで。
そして、あとになって、ああすれば良かった、こうすれば良かった、と後悔にさいなまれ、それができなかった自分を責めてしまったり。

何にせよ、極力味わいたくない体験、と心から実感することで。
だからこそ、絶対人にもやってはいけない、と強く、強く、思うのです。


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話が逸れるようですけど、ちょっとお嬢から聞いた話を。
”池沼(ちしょう)”というネット用語をご存知でしょうか。
意味はこちらをご覧いただくとして、初めてお嬢から聞いた時は、さすがに愕然とした言葉です。

この言葉を始めとして、この手のことをあまりに気軽に口にする周囲の若者達に、お嬢は本当に驚いたそうです。
「あ、俺、身障者なんで、これはできませーん」
「いやー、わかんないですねー、私、池沼なんで」
こういうことを、ジョークとして言えてしまう彼ら。

お嬢が思ったのは、今まで彼らの周りには、そういう人がいなかったのかな、ということと、
いつか自分がそうなったら、身内にそういう人がいたら、と想像することがないんだろうな、ということだったそうですが。
これについては、ずっと日本に住んでいた私は、非常に心当たりがあるんですね。

以前、乙武さんが車椅子でレストランに訪れようとした時の騒動が話題になりましたよね。
賛否両論、激しく入り乱れた応酬を見ていて、本当にいろんなことを考えたのでございます。(休むに似たり)
それについては長くなるので、また別途として、この時にも、
そうか、なかなか周りにそういう人がいないのかなあ、
自分だって、いつ事故とかで、なるかもしれないのになあ、と思ったりしたんですね。

保育園の子供の声がうるさいから、と訴訟を起こす人。
電車内のベビーカーに文句をつける人。
ヘイトデモに胸を張って参加する人、などなど。
自分が子育てしていた頃は? 自分も誰かに育てられた子供だったということについては?
自分が海外に行って、前述の地下鉄の出来事のように、突然絡まれたりしたら?

「おもてなし」より、「おたがいさま」
だって、気持ちは想像できるから。
そんな風に簡単にはいかないものなんでしょうか、ねえ。
でも、一番大切なことって、実はごくごくシンプルだったりしませんか。

差別意識を持つな、と言ってるわけではありませぬ。
前に書いたように、そのことに自覚的であれ、ということと、それを公の場で口に出すな、ということでもあるのですけどね。


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で、冒頭の本の話に戻りますと。(え!?)
主人公のモリの言葉に賛成するのは、
図書館に予算 
→ 本が増える 
→ 本を読む人・子供が増える 
→ 想像力が豊かになる 
→ 人の気持ちを思いやれるようになる 
→ 争いが減る 
→ 戦争が減る
なんて皮算用を描いてしまうから、でございます。
我ながら、モロに風桶理論で、大笑い。

ぶっちゃけ、本やマンガでなくてもいいのですよ。読書は、強制されるものではないですから。
ゲームでもRPGでもドラマでも何でも、本以外で全然構わないので、
要は、世界にはいろんな人・いろんな価値観があるんだということを知って、相互承認が成り立つ世界になってくれればいい。
その為には、ほかの人生や世界を体験してみる必要があるわけですが。
それは、本やマンガに接することでできるよな、というのが私の狭い世界での認識なので、
とりあえず本に反応しているということ、なのですね。
実は、いまだにゲームをしたことがない珍獣です。(恥)

知らない世界の探検を、知らない生き方を、とあるストーリーに入り込むことで、できてしまう。
生身の自分は、一回きりの人生なわけですから、これがどれほどありがたいことか。

社会的弱者とされる方々への配慮ができないというのは、その人達に優しさや思いやりの感情がない、ということではないと思ってます。
足りないのは、弱者の方々がそういう立場になった過程や感情を想像する力であり、
また、それを理解する力じゃないか、と感じたりするんですね。

日本は世界一だーー、と声高に叫ぶ、ライトな方々がいらっしゃいますが。
確かに日本は、識字率も世界最高レベルですし、翻訳書の数も世界一・二を争う、素晴らしい国ですよ。
ゲームだってアニメだって、ドヤ顔で国際的に自慢できる数が揃ってますよ。
こんなすごい国にいて、それを利用しないなんて、勿体無い限りではありませぬか。
あ、でも勿論、選ぶものが偏ってちゃいけないんですけどねー。うむ、確かにそこは難しい。


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ある方が書かれていましたけど、差別行動やヘイトというのは、あくまで「その人個人」の内側にある感情、なんですね。
景気が悪くなると犯罪やヘイトが増えるというのは、至極わかりやすいことでございます。
自分が辛いと思っていることを、何かのせいにできたなら。
悪感情は身体に悪いので、排出しなくてはいけませんが、その時にどういう形を選ぶかは、
本当に「その人個人」の選択、というか、「その人個人」が最も表れることの一つであるような。

で、「その人」を作るに当たって、助けになってくれるものは色々ある、と思うのです。
ましてや、子供をや。

それにしても、外国の地下鉄で会うなら、どうせならこういう人がいいなあ。(しみじみ)
さて、ぐだぐだモードをスイッチオフして、またレストラン記録に戻ります。
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by senrufan | 2014-09-18 13:43 | Trackback | Comments(6)
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Commented at 2014-09-22 08:36
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by Miyuki at 2014-09-22 13:19 x
*非公開コメントTさん
この本、SF好きな方にはお勧めですよー♪ 私がはまってた70~80年代のSFの作品がいっぱい出てくるんですよ。ストーリーそのものには好みが分かれるところだと思うので、すごくお勧めはできないんですが(おい) 「精霊の守り人」、いいですよねええええ! 上橋さんと荻原規子さんのファンタジーがすっごく好きなんですよ~。そうそう、新刊も楽しみですね♪
ヘイトスピーチに関しては、ほんとにそうですよねえ……海外組がこういうことをいうと、だったら日本から出て行けだの、そっちの国に帰化すればだの言われてしまったり。どうしうてそういう話になるかなあ、とため息です。だから大好きなTさんにそう言っていただけると、もう。ほんとにもう。(感涙の嵐)
Commented by tomi at 2014-09-22 15:09 x
miyuki さん; この ヘイトスペーチの動画を見ましたよ、よくあることですが、それは20年間ぐらいまでの事です。
ましてやこの男性は 東洋人の顔をした女性に向かって、でも彼女は
タイ人でしたが 彼は散々ののしって 最後に {「sayonara」と言いました、ハハーこの男性は人種が分からず日本人を指して言ったんだな
この様な事は40余年住んで居ますと偶に有るんですよ私も、特に中国人は狡いと思い込んで居ますから 私なんか目を両脇に釣り上げたしぐさをして来ますね、私は日本人だよと言って、それからしっかりやつつけてやります、大体 教養の無い人に多いです と このアメリカで暮らすにはそのくらいの覚悟と力をこちらも持たねば、もっともこれは イギリス、ロンドンのバスの中の出来事ですね。
Commented by Miyuki at 2014-09-23 12:42 x
*tomiさん
私がこちらに来てからも経験があるので、やっぱり全部なくなるというわけにはいかないですよね。
ニュースによると、絡まれた女性は韓国からの観光客だそうですが、まったく災難でしたね……韓国人のせいで、日本人が海外で嫌な目にあっってると主張する一部の方に聞かせたいニュースです。
覚悟と力はその通りですね。そして自分は絶対やらない。自分が仕返しにしてもやってしまったら、そこで連鎖していきますからね。そちらの方にも、相当な覚悟と力がいるのでは、と思います。
Commented by tomi at 2014-09-23 14:42 x
miyukiさん; おっしゃる通りです。
アメリカに暮らすとは ヘイト スピーチ は覚悟です、いくら私が30年間のアメリカ国籍人でも。

さて 話は変わってこの歌は 良いですね ”山田耕作” の作曲です
リンクを貼り付けます、お彼岸の時に 他のブログ友が 巾着田 の彼岸花を掲載していたので この物悲しい歌、昔から好きでした。

http://homepage2.nifty.com/182494/LiederhausUmegaoka/songs/Y/Yamada/S485.htm
Commented by Miyuki at 2014-09-24 12:22 x
*tomiさん
本当に。>覚悟 日本に来る人達には、そういう思いをしてもらいたくないですねえ。

この歌、全然知りませんでした! 歌詞を読むだに悲しい……ほんとにこの頃の歌の言葉の美しさはすごいですよねーー
昭和生まれの私は、やっぱり唱歌は好きなんですよ。「浜辺の歌」とか、泣かないで聴けたためしがありません、てへ。


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