私の全てを引き替えに

「古いものを壊そうとするのは無駄な骨折りだ。
ほんとうに自分等が新しくなることが出来れば、古いものは壊れている」
   ----- 島崎藤村
       (日本人、作家、1872年3月25日生まれ)


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お友達が御宅によんでくれまして、いそいそとおじゃましましたところ、お庭に見事なソメイヨシノ。
満開の桜を眺めながらの、素晴らしいお花見ランチをいただいてまいりました。
これを至福と言わずに、何と言う。


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花に負けない彩りのテーブルにも、感嘆・歓声。
持ち寄りメニューも含めて、どれも絶品でございましたです。幸せでうっとりです。
ほんとに私のお友達って、お料理上手度100%の人ばかりなのですな。
……類は友を呼ぶ、ってさあ……(かなしみ)(何事にも例外が)

口福・眼福揃ってのひと時は、春のこの時期ならではの、貴重でありがたい時間でございます。

* * * * *

【読書】

つい先日、大変嬉しいニュースが飛び込んでまいりました。
私が大ファンの作家さん、上橋菜穂子さんが、国際アンデルセン賞を受賞されたそうでございます。

 国際アンデルセン賞に上橋菜穂子さん

日本人作家さんは、エッセイ以外、あまり読まないのですけど、
上橋さんと荻原規子さんのご本は大好きで、特に荻原さんは全作持っているほどです。多分(殴)

お二人とも、素晴らしいファンタジーを書かれる方で、中学生から大人まで幅広く楽しませてくれるお話が揃ってるのでございますよ。
娯楽に徹したミステリーやファンタジーが大好きな私(つまり幼稚…)には、お二方の真っ直ぐなキャラによる、真っ直ぐなストーリーが、大変にツボなのでございます。


読書記録のブログは、すっかり月単位での記録のみと化してしまっておりますが。
随分前から、ある作品の感想を個別で書いてみようとして、1年以上そのままになっておりまして。ええい、お恥ずかしい。
それが上橋さんの代表作の一つ、「獣の奏者」シリーズでございます。

どうして書けないか、と言いますと、上手く表現する言葉が見つからないから、に尽きます。
ただただ、泣けて泣けて、心の底から感動して。
それ以外に言葉が綴れない、というのは、文才がないにしても程がある、ってもんですが。(ため息)
ちょうど素晴らしいニュースが入ってきた今、せめて「素敵な本です」という言葉の連発だけでも残しておきたい、と思います。




     獣の奏者1 

 獣の奏者Ⅰ 闘蛇編
 獣の奏者Ⅱ 王獣編
 獣の奏者Ⅲ 探求編
 獣の奏者Ⅳ 完結編

 獣の奏者(Wikipedia)
 講談社BOOK倶楽部:獣の奏者 特集ページ


説明は上記ページにお願いするとして、小説だけでなく、アニメ化されたりコミック版も出たりして、大変な人気を誇る作品です。
海外翻訳版も出版されていて、それが国際アンデルセン賞受賞に繋がったのでしょうか。
……なんで米語版は出ていないのだ。(Amazon USAをチェックしながら)


     獣の奏者2

主人公のエリンが10歳の時から、ストーリーは始まります。
闘蛇(とうだ)という、兵器ともなる獰猛な生き物が死んだ為、獣ノ医であったエリンの母は、責任をとって殺されてしまいます。
その母がエリンから隠し通した、獣の”秘密”……
この”秘密”に対するエリンの希求が、物語全編を通して、核となっているのでございます。

知りたい、ただ、知りたい。
知ろうとせずにはいられない。
王獣へ、生き物へ強い愛情を覚えるほどに、エリンのその気持ちは増すばかり。
この、”知らずにいられない”というエリンの思いが、私がこの物語に惹かれる一番の理由、なのかもしれない、とずっと思ってます。

その強さゆえに、国同士の争いに利用される獣達。
腕利きの獣ノ医であるエリンも、否応なく権力争いに巻き込まれることになります。
ただ、ひっそりと、愛しい家族と獣達と暮らしていきたいだけなのに。
引き裂かれる心を抱えながら、寡黙に耐えるエリンが、夫に、息子に、そして王獣に注ぐ、静かな、しかし激しい愛情に、何度も泣かされます。


     獣の奏者3 

彼女が苦渋の中で選択した道の是非は、最後の最後まで明かされません。
とうとう「知る」ことができた時、私が覚えたのは、激しい遣り切れなさ以外の何者でもありませんでした。
なぜ、なんで、もっと早く。
しかし、その理由もまたわかってしまうので、誰も責めることができず、堪らない怒りを発散する場所がないのです。

そういう意味でこれは、とても重く、辛い物語です。
ですが同時に、求め続けた「答え」を彼女が得られたということで、心のどこかで、彼女の為に良かった、と思ってしまうのです。

「知りたい」という気持ち。見返りを求めてとかではなく、ただひたすらに、知らずにはいられない。
私自身も、とても小さな規模であっても、そういう気持ちを持つことが多いから。
そして、「知った」後に覚える喜びが、どういうものかということが理解できるから。

一番に求めたものは、ごくごくささやかなものであったのに。
遥か彼方の”答え”を与えられることで、それが叶わないことを引き換えにしなければならなかったエリン。
しかも、その”答え”は、彼女を深い深い底の底まで、打ちのめしてしまうものであったこと。
読みながら、どうして、なんで、と溢れ続ける涙を、どうしようもなく。

それでも尚、彼女がその”答え”を得たことに、縋らずにいられない。
この気持ちの持って行き場を、そこにしか見出せないのでございます。


     獣の奏者4

エリンの息子のジェシが、ずっと大人になってから思うのは。

「知ることで、人は考える。
試行錯誤をくり返しながら、人という獣の群れは、滔々と流れる大河のように、その生をつないでいくのだろう」

エリンが言った通り、「人は、知れば、考える」生き物です。
「知らねば、道は探せない」生き物です。
考えて、考えて、考え抜いた果てに、ようやく見出せるもの。
それこそ、母が、父が、息子ジェシに手渡していった、「小さな火」に他なりません。

人間とは、愚かな歴史を何度も繰り返さずにはいられない、なんとも因果な存在で。
ですがその傍らで、「知識」、もしくは「経験」という別名で呼ばれるそれは、最初は導きの目印に、
更には時間をかけて、寄せて集めて、大きくすることができるものですから。

せめて、ジェシが生きていく世界において、その火がかけがえのない宝になるように。
かつてエリンがジェシに、微笑みと共に与えた言葉を、私もまた、何度も噛み締めていくのでしょう。

「……アルの、言葉を聞いて。
わからない言葉を、わかろうとする、その気持ちが、きっと、道をひらくから……

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by senrufan | 2014-03-25 15:03 | Trackback | Comments(2)
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Commented by むしの日 at 2014-03-28 11:28 x
このニュースを見たとき、読んだことのない作家さんだったので「ふ〜ん」で終わってしまったのですが、Miyukiさまご推薦とあらば、といきなりミーハーに読みたいリストに入れました。
好きな作品の感想を書くのは、難しいですよね。本当に美味しいお料理に、美味しいしか出てこないようなもの?でしょうか。でも好き好き光線はちゃんと届いてます。いつか萩原さんの作品も読んでみたいです。
Commented by Miyuki at 2014-03-28 18:01 x
*むしの日さん
いつでもお貸しします! 押し付けます!(鼻息)
と言いつつ、本も好みがありますから、あくまで私が「好き好きーーっ!」と絶叫しているだけということで~。お恥ずかしい~。
そおなんですよ、好きであればあるほど、好きに理由がないというか。暑苦しい光線をばらまいてしまってすみません、たは。そして、荻原さん本もお貸しします!(更に暑苦しく)(反省はどこに)


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