伝えたい気持ちは一つでも

「幸福は分かち合うように作られている」
   ----- ジャン・ラシーヌ
       (フランス人、劇作家、1639年12月22日)


高橋理明氏(大阪大名誉教授)が死去

Michiaki Takahashi, 85, Who Tamed Chickenpox, Dies

お嬢が1歳半の時、通っていた保育園で水疱瘡が流行って、お嬢も罹ったのですよ。
医者に連れて行きましたら、ちょうど良い薬が保険がきくようになったということで、大事には至らずにすんで、一安心。

だったのですけど、実は私が子供の頃にワクチンを打っていない世代で、しかも罹ってなかったんですよね……
お嬢の2回目の診察の時に先生に言いましたら、
「もう少し早く言ってくれたら……!」
と、ペンを投げ出して頭を抱えられたのを覚えてます。
なんでも、発症後72時間(だったかな?)が感染力があるので、その間に私がワクチンを打っていなければいけなかったんだそうで。

こら罹るわ、ということで、潜伏期間中に仕事を片付けたり、後をお願いしたりして。
ちょうど2週間後にめでたく発症し、すみませーん、予定通り休みまーす、と会社に電話したのです。
忘れもしない、記念すべき30歳の誕生日でございました。


と、そんな感じで、思い出の水疱瘡ワクチンであるのに、開発されたのが日本の方とは露知らず。
ネットで訃報を拝見して、初めて高橋博士の成し遂げられた偉業を知ったのでございます。

それにしても、日本メディアと米国メディアの扱いの差はなに、記事の長さの差はなに、と驚きましたが、読んでみて、少し納得。
日本を始め多くの国では、1972年の臨床施行以降、数年後に摂取が始まったものの、
米国では1995年まで許可が下りなかったのですね。
95年まで、米国では毎年400万人が罹患し、1万人以上が入院、100~150人が亡くなっていたのだとか。
人間が感染するヘルペス(疱疹)ウィルスに対して、高橋博士の開発したワクチンが、唯一成功した事例なのだそうです。

息子さんが水疱瘡に罹り、夜も寝られず付き添った、心痛む経験から、水疱瘡のワクチン開発を手がけられた博士。
子を持つ親の端くれとして、痛いほどの共感と、心からの敬意を覚えます。

正直言えば、全てのワクチン摂取に賛成なわけではありません。
ですが、開発者の方々が払われる努力と熱意には、常に感謝しております。

高橋博士のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。

* * * * *

【雑事】

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サンフランシスコのユニオンスクウェア、2013年12月の風景でございます。
や、そう書いておかないと、去年の写真を使ってもわからないので。(身も蓋も)

さて、今年は初めて、お嬢がいないクリスマス。
そして、お嬢がいないお正月でもあります。
……寂しいなあ。(小石を蹴りながら)

先日、尊敬する先輩ママさんに言われて、はっ、となったのは、
「今後、自分の子供と会えるのは、もしかしたら100回ぐらいなのかもしれない」
という言葉でありました。
今後、一緒に住むことがなければ、年に1~2回会えるかどうか、になってもおかしくないわけで。
そう考えたら、100という数字が、途端に現実味を帯びて、目の前に迫ってきたのでございます。

それもこれも、たまたま我が家が、日本とアメリカに分かれて暮らしているから余計に、なのかもしれず。
今後、私達がどこに住んで、どういう暮らしをするかなど、同じ国に暮らしていてもわからないことなのに。
なまじアメリカという選択肢が見えているので、更に感じてしまうことなのかもしれないなあ、と思ったりするのでございます。




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ところで先日、こんな記事を読みました。

国際結婚した家庭でも難しい!子供がバイリンガルに育たない理由とは?【英語教育】

Identity issues can complicate a child’s path to becoming bilingual

上のハフィントンポストで言及されているジャパンタイムスの記事が、下のリンクになります。
上の記事をmixiで流したところ、国際結婚した友人達からコメントをもらいました。

友人達が言ってくれた通り、バイリンガルとなるかどうかは、実は幼少期より思春期頃の方が、ずっと困難である気がいたします。
小さい頃は、会話そのものがごくシンプルですし、語彙もそれなりですみますが、
アカデミックな要素が増えてくるに従って、両言語共、ネイティブのeducatedなレベルをキープする為には、何らかの意識的な努力が必要になってくるのでありまして。
なので、以降、その努力をどこにどう注いでいくかが、本人と親の課題として迫ってくる、ように思います。


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ですが、何回か書いているように、「バイリンガル=えらい」といったような、上下関係で語られるものでは決してなく。
基本は、一言語がネイティブの年齢相応であれば十分、というか、それが成されることが何より大切でありますから。
二兎を追って、共に不十分になるより、一兎を捨てても、もしくはここまでというラインを引くことで、根本となる一兎を伸ばすことの方が望ましい、と個人的には思ってます。

言語以上に身につけて欲しいのは、世界には沢山の言葉があって、文化があって、
100人いれば100通りの考え方と感じ方があるのだ、ということを、どれだけ自然に自分の芯に定着させることができるか、だと思うので。
ましてやそれには、自分がどこを基盤とするか、もしくは地に足をつけて立っているという実感を持てるか、という要素も非常に大きいと思うので。

お嬢はたまたま、日米両言語を、現段階では今の年齢なりに使えていますが、
もし彼女が途中で、どちらかに注力することを選ぼうとしていたら、一体私はどうしたんだろう、とぼんやりと思います。
事実彼女は、自分が日本人であるのに、日本を知らないという焦燥感をずっと抱えていたが故に、日本の大学を選択したわけで。
これも、「アイデンティティの問題」の一つの形。
「もし~たら」で考えた時、「彼女が日本語を諦める」というフレーズを入力する可能性も、決してゼロではなかったのでございます。

生活の中心であった現地校では、日本人とほとんど接することがなかったにも関わらず、日本語をキープしてくれた彼女に対して、何度も繰り返して、良くがんばったね、と言い続けてます。
まあ、彼女が英語を使おうとしたところで、家には英語アレルギーの母ちゃんがどーん!といて、日本語以外は通じなかったので、環境の強制的要素があったことも否めませんな。
お嬢は、母ちゃんに大いに感謝すればいい。つか、しやがれ。

お嬢が格別優秀だったわけではありません。(ごめんな)
いろんな国の人が集まったベイエリアですから、バイリンガル・マルチリンガルの子も大勢いますですよ。
各家庭ごとの工夫や思いがあって、つい日米だけで考えてしまがちな狭量な私の目を、色々と開いてくれたのでございます。


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ところで前述記事について、お嬢に話したところ、彼女の友人の話が出たのですよ。
お友達のご両親は、何年も前に台湾からベイエリアに来られたのですが、お母さんは私同様、英語が苦手で、家では中国語と英語のチャンポンで話されているんですね。
お嬢さん2人はこちらで生まれ育って、中国語教育はあまりうけてないこともあり、英語がメインで、中国語は少しだけ。
なので、たとえば長期休みに台湾に行った時、親戚と話せなくて、結構苦痛だったりするそうです。
彼女のこの手の話を聞くと、いつもあの本のことを思い出しておりました。

その彼女が、大学進学前も後も、ずっと将来の希望について悩んでいたのですよ。
彼女がやりたいことと、親御さんが望む進路が合わず、でもとても良い子である彼女は、迷いを抱えつつも、親御さんの望む専攻を希望して入学したのです。
が、結局1年経たないうちに、大幅な進路変更を決意するに至り、その過程においての悩みや葛藤は、真面目で親孝行な子である分、相当なものであったと思います。

お嬢は、彼女はきっとお母さんと、きちんと進路や自分の希望の話などをしたことがないのでは、と言うのです。
お母さんは英語がわからないし、彼女は中国語がわからない。
想像でしかないけれど、深いところまで突き詰めて話せないことが、彼女の辛さの一端を担っているのかもしれないね、と。

大変、大変、頭の悪い私は、お嬢のこの言葉で、またまた自分がいかにお馬鹿であるかを発見したのでございます。


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お嬢の思春期は、思い出すだに大変で。
や、先輩ママさん方からご覧になれば、至極典型的だったのかもしれませんが、なんせ器の小さいワタクシですから、かなり辛い時期でありました。情けない。

その間、彼女が口にする言葉、こちらが発する言葉、どちらにも注意深くならざるをえず。
彼女が言ったことについて、その裏に何かあるのか思い悩んだり、どう言えば彼女を怒らせないですむか、懸命に言葉を探したり。
言葉じゃないよ、気持ちだよ、と言われるかもしれませんが、その気持ちを伝える為に、どうしたって言葉は欠かすことができませんでしたから。
少しでも距離を縮められるように、できる範囲で、でも惜しむことなく、口に出した言葉は色々あったのです。

お嬢のお友達の話を聞いて、ようやくそれは、お嬢の日本語レベルが私と同等であることが大前提だった、という事実に気づかされたのでございます。


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国際結婚している友人や、お子さんがアメリカで生まれ育って、英語を選んだ友人達は、みんな英語が上手なので。
お子さんが英語がちになっても、ちゃんとコミュニケーションがとれているんですよね。
それがうちときたら、上述した通り、お嬢の日本語をほめられても、
そらそうだよ、母ちゃんが英語がぜーーんぜんできないんだもん、
私が英語ができたら、お嬢も甘えて英語になってたかもしれないけど、いやもう、ほんとーーに通じないからさー、
と、笑っているばかりで、その別の意味については、全く考えたことがなかったのですけれど。

今まで、お嬢が日本語をキープしてくれていることを、彼女の為に良かった、とか、彼女の努力の成果だ、とは、何度となく思っていましたが。
彼女が日本語を今のレベルで使ってくれることで、実は一番幸せだったのは、私なのかもしれない、ということに、今更ながら思い至ったのでございます。

お嬢が大好きで、彼女の話をいっぱい聞きたくて、私の話も沢山聞いてほしくて。
いつ話しても話し足りない、思春期を乗り越えた、私の大切な”相棒”。
彼女の努力なしには、この関係は成り立たなかったんだなあ、と思ったら、思わず涙がこぼれてしまったのでありました。


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別々に過ごす、初めてのクリスマス、初めてのお正月。
いつしか、これが当たり前になっていくのでしょう。

あと何回、あと何日、彼女と一緒にいられるのか、
会うたびに指折り数えてしまうかもしれませんが。

改めて、彼女という娘がいてくれることに深く感謝した、今年の冬至の日でございました。


しまっていた思いを惜しみなく。伝えたい気持ちを取り出して。
温かな言葉という舟にのせて、届けることができますよう。

皆様もどうぞ、素敵なクリスマスをお過ごしくださいませ。

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by senrufan | 2013-12-22 13:44 | Trackback | Comments(4)
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Commented by tomi at 2013-12-25 15:36 x
miyukiさん;
こんばんは、And Merry Christmas♪。
子供を持つと と 言うかこの国で外国からの文化で育った親は我が子がここの母国語を身につけて欲しいと 共に やはり彼女と自分は ツーカーで話したいですね、しかし今のうちの悩みだと思います 子供は青年期や壮年期に入ればそれで親とのコミニューケーションは取ってくれるように思います、miyukiさんのケースは私達は散々見てきています どうぞご心配は捨て 気持ちの上での会話を充実なさったらと思います。
子供を持たない私がわかるはずは無い問題なのですが。
Commented by NONA at 2013-12-25 22:15 x
こんにちは。娘さんのお話、とても興味深く読みました。私も国際結婚組でベルギーに住んでいます。娘は現在7歳ですが、私のオランダ語力がゼロに近いため、今の所日本語は問題ない程度に育っています。。 が、確かに思春期あたりが一番日本語をキープするのに難しい時期なのだろうなーと思います。 そして子供が巣立った後、子供に会える回数が100回たらず。。。わかっているつもりではいますが、こうやって言葉になってるのを見ると、さらに実感がわくものですね。。。母を必要としてくれる今、今まで以上に娘との時間を大切にしたいと思いました。
Commented by Miyuki at 2013-12-26 12:34 x
*tomiさん
メリークリスマス!
いつもながらの温かいお言葉、ありがとうございます~。ええと、心配というのとはちょっと違いまして。なんせ子育ての過程の全てが初めてですから、そのたびに不安が絶えないのですが、それもきっといつか笑い話になるんだろうなあ、と思いながら、その時々の不安をもしっかり噛み締めておきたいと思っているのです。ちゃんとその時々の気持ちを味わわないで、あとになってリバウンドがある方がずっと怖いんですよね。
先輩ママさんからも、お子さんがいらっしゃらない方からいただくアドバイスも、いつもいつも貴重でありがたいと感謝ばかりです。ここにぐだぐだ書いてはいろんな方に諌められたり笑われたりして(笑)、それも全部ひっくるめて大切にしていきたいと思います。
Commented by Miyuki at 2013-12-26 12:34 x
*NONAさん
こんにちは! ベルギーのクリスマスはいかがですか? ヨーロッパでは更に言語や文化が多様ですから、それだけ素晴らしい体験ができると同時に、お悩みになることもあるかもしれませんね……
いつかきちんと子離れしなきゃ、と自分に言い聞かせながらの年月でしたが、日々の子供との時間を思いっきり楽しんでいく方が、上手く乗り切れて次のステージにいける、と信じて、今日も親馬鹿しております(笑)
NONAさんもお嬢さまと、どうぞ素敵な時間をお過ごしくださいね!


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