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小さな足が、海を越え (4)

「人生はマラソンなんだから、100メートルで一等をもらったってしょうがない」
   ----- 石坂泰三
       (日本人、経営者、1886年6月3日生まれ)


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庭にあるフェイジョアの木に、白とピンクの花が咲きました。
こちらだと、パイナップルグアバと呼ぶほうが一般的かな?

花に気づいて、へえ、初めて見た、と思った後で、あれ、なんで初めて? と考えるに、
そうでした、ちょうど一年前に、この家に引っ越してきたのでした。
入居した時に咲いていたのかもしれませんが、引越し・お嬢の卒業・日本行き、と怒涛のような日々で、庭をのんびり眺める暇もなかったのですね。

帰国子女受験の始まりから、一年を経て。
終わった後で、なんでここまで、と自分でもイヤになるほど、色々考えては、ぐるぐると周ってしまっているのです。

* * * * *

【学校】

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ぐだぐだシリーズ、第4回。
えーとえーと、今回は……面接について少し、だけ。
踏み込むと、これまた泥沼なテーマです……

さて、帰国子女受験では、面接を入試項目に挙げている大学が多いわけですが。
日本の大学で面接、と言えば、推薦入試やAO入試などぐらいかなー、と思っておりましたら、今では国公立でも行われているんですね。




お嬢が大学に通い始めて、いろんなクラスでお友達が増えてきて、驚いたことの一つのは、推薦入試やAO入試で入った子が、予想以上に多かったことだそうです。
彼女が通っているのは私立大なので、そういった新しい形の入試を導入しやすく、また言い方はアレですが、国公立より受験が早い分、「学生の青田買い」がしやすいのかもしれません。

アメリカの大学も、面接は大学によって色々で、日米大学のどちらも、面接をする目的としては、
「どんな子であるか」を見極め、「欲しいかどうか」について答えを決める、ということにあると思うのですが。
やっぱり、なんとなーく両者の印象は、微妙に異なるように感じます。


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お嬢のこちらの塾の同期で、大変優秀な子がいたんですよ。
ほとんど海外で生まれ育ったような彼ですが、日本人が多い学校でずっときたので、むしろ英語の方に苦労が多く。
といっても、それは彼の中での話であって、傍から見れば、日本語も英語もネイティブ、どころか、両方ともかなりのレベルの成績を修めていた、素晴らしいバイリンガルなのでございます。(勝手に自慢)

それでも彼が言うには、英語だと自分を出せない、と。
日本語で、日本人といる時の方が、本当の自分なのだ、と。
様々な理由で、「アメリカが肌に合わない」という意識がある彼が、日本の大学を目指したのは、不思議でも何でもありません。

その彼は、日本の大学の前に、アメリカの大学も、少数ですが受けたのですね。
後日、お母さんから、彼の面接体験の話をうかがいましたら、
米国での第一志望だった大学の面接の時、彼は、自分がいかに努力してきたか、どれだけのことをやってきたかについて、一生懸命語ったのに、
自分はこういうことができて、大学に入ったら、こういうことがやりたい、ということについて、いっぱい話した学生の方が採用される結果になったのだそうです。

彼がアメリカが嫌い、と思う理由の一つが、「口が上手いヤツが勝つ」という傾向がある、ということだそうですが、彼にとっては、この面接も、その証。
改めて、自分の努力を重視してくれる、日本の大学を目指す意志を固めることになったようです。

このことについては、あくまでお母さんからの又聞きですので、実際、彼自身が語れば、どういう内容になったのか。
本人から聞けるチャンスがあれば良かったんですけど……残念だなあ。


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このことをお嬢&仲間達に話したところ、一体何を言ってるの?という反応だったのですよ。
努力してきたなんてことは当たり前であって、話すまでもないことで。
それより、自分がどうしてその大学に入りたいのか、入ったらどういうことをしたいのかについて、
更には、自分がその大学にどういう貢献ができるか、ということが一番述べなきゃいけないことだ、というのが、彼女達の主張であったのです。

そういう感覚のお嬢が、日本の予備校で受けた、面接練習の際。
「私が大学から沢山学ぶと同様に、私自身も大学に貢献できるようになりたい」
と話しましたら、試験官役をつとめてくださった方から、
上から目線だから、やめたほうが良い。あくまで学ばせていただく、という姿勢を大切に」
と指導されたそうですよ。

まあ、これはあくまで、この時の試験官の方の感覚によるもので、
日本の大学が全部そう、などとは思っておりませんが。
それにしても、象徴的なエピソードだったな、とは感じます。


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アメリカの大学の選抜方法を聞いていると、日本の就職面接に近いようなイメージを持つんですね。
成績表も大事ですが、それ以上にエッセイや課外活動、そして先生からの推薦状を元に、
この生徒は一体どういう人間か、ということを吟味した後、その子が大学にとって有用な人材かどうか、に加えて、その大学と相性が良いかどうかについての考えが、大変に大きなポイントのように思います。

だから、SATや学業成績は、それほど大きなウエイトは占めてない、というと語弊がありますが、
ある程度のラインを突破すれば、課外活動の選び方や履歴、エッセイからうかがえる考え方や価値観が、非常にモノを言う。
なので、先生からの推薦状も、あくまで「Letter」でなければならないわけで。
日本のようなアンケートもどきから、一体どれだけその生徒の人間性がうかがえるというのでしょう。

またそれは、生徒側にも言えることで。
オープンキャンパスもだいぶ増えてきたようですから、どんどん訪問するべきだと思いますし、
興味のある本や記事を目にすれば、その著者である先生を追う、なんてことも良いでしょう。
ブランドではなく、大学や先生との相性を、自分なりに考えていけばいいのになあ、と思うのです。
一般受験で面接が取り入れられるようになってきたのなら、ますます、と思うのです。


お嬢は今回の受験で、3つ受けたのですが。
第一志望の前に受けた学校の面接が、大変楽しくて、笑顔で帰ってきたのですよ。

3人の先生方との面談だったのですが、どの方も博識でいらっしゃって。
お嬢の興味のある分野についても良くご存知な上、話の引き出し方がお上手だったので、
大いに話がはずんで、あっという間に時間が過ぎてしまったそうなのです。
第一志望が受かった後も、あんな先生方について学べるなら、と、その大学が捨て難く、しばらく悩んでいたほどでした。

面接とは、お見合いみたいなもの。
いくら学歴や肩書きが立派でも、相性が悪ければ、そこから進まない方が良い。
そういうところに行くより、お互いに両思いになれる場所を探した方が良い。
そんな風に思うのですけれど。

上述の彼に言わせれば、そういう、形にできないことで判断されるより、
努力の結果であるテストの点数で選抜される方が、よほど公平である、ということになるのでしょうか。
その「公平さへのこだわり」が、日本ならではの特色である、ということの発見と、
それについての感じ方が、私がここまで悶々とする理由の一つ、なのでございました。
by senrufan | 2013-06-03 12:29


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