その歪みさえバランスの

「母という字を書いてごらんなさいやさしいように見えてむずかしい字です。
恰好のとれない字ですやせすぎたり 太りすぎたり ゆがんだり
泣きくづれたり・・・・笑ってしまったり・・・
お母さんにはないしょですが ほんとうです。

悲しきことのみ多かりき されど よろこびの日もありき
その よろこびの日もありき という文字が 
太く強くしるされているのがかえってボクには かなしくて かなしくて。」
   ----- サトウハチロー
       (日本人、詩人、1903年5月23日生まれ)

* * * * *

【アクティビティ】

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ブランチでお腹を満たした後は、心のご飯を食べに行こう。
ということで、ゆかさん&Kaoriさんと、サンフランシスコのde Young Museumで開催中の、Jean Paul Gaultier展を観に行って参りました。

行ってみたら嬉しいことに、フラッシュを使わなければ撮影可、という事実。
いやもう、大喜びで撮りも撮ったり、合計150枚以上いきました。
その中で、まともな写真の割合は、決して尋ねてはいけません。(ぎりぎり)

今回の日記は、暗い室内で、どうやれば少しでもマシに撮れるか、私の乏しいノーミソが、心優しいカメラに甘えて奮闘した記録、でもあります。これぞ、自虐ぷれい。




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入った途端に広がる、青い空間。
ゴルチェの衣装をまとった等身大のマネキンがいっぱい立ってる、と思いきや、なんと自然に表情を変えながら、ぺらぺらとしゃべってるじゃありませんか。
しかも真ん中の男性、ゴルチエだし。
フランスなまりの英語で、ユーモア溢れるスピーチをしちゃってるし。


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これがですね、マネキンの上向かいに備え付けられたカメラからの投影なんですね。
実際のモデルさんの顔をずっと撮影したと思われる各表情は、眺めてて飽きない面白さ。
マネキンがマネキンじゃなく見えるおかげで、衣装がより映えていましたね。


1. Gaultier's Odessey

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ゴルチエのこれまでの歩みや背景が色々と。
基本はWikiのこちらで、として、ピエール・カルダンの下で働いた後、1976年に独立し、女性向けプレタポルテに進出します。
この頃押し寄せた、新しいファッション界の波。ゴルチエの同世代のデザイナーとして、KENZOの武田健蔵氏と、コム・デ・ギャルソンの川久保玲さんの名が挙がっていました。

衣装だけでなく、ソファやレコードジャケットなど、手広く手がけていたゴルチエのセンスは、母方の祖母が養ってくれたものだそう。
その頃、まだそれほど普及していなかったTVを持っていたおばあちゃまが、孫息子に好きなように見させてくれたおかげで、ファッションセンスのみならず、鋭い批評眼も身につけることができたのですね。


2. The Boudoir

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ゴルチエといえば、コルセットやボンデージ・ファッションで有名ですが、
そんな彼の、初めてのcone braをつけたのは、このテディ・ベアのNana、なんですって。

幼い彼を魅了したのは、やはりおばあちゃまのクローゼット。
オールドファッションな衣装の数々は、その後の彼のデザインの原点となりました。


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彼のミューズとなったのが、マドンナ
ゴルチエが衣装を担当した彼女のワールドツアーで、コルセット・ファッションは一躍有名になりました。

「弱き性」としてではなく、女性の強さを信奉する彼にとって、コルセットはその象徴。
フェミニスト運動を否定するでなく、新しい形での女性の解放を表現したのでした。


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祖母の40年代・50年代のファッションと、20世紀の女性の、官能的な融合。
それが、ゴルチエの作り上げた新しいファッション。外に着る下着、cone braであったわけです。


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3. Skin Deep

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80年代に入ってからゴルチエは、性を超えたファッションを提唱し始めます。
スカートやコルセットが登場した、メンズのライン。
デリケートな素材を使い、勇敢さを称えたレディスのライン。

特に、マドンナの2006年のツアーでは、首輪や引き具を身につけたダンサー達が登場。
皮やラテックス、網を利用した、ボンデージ・ファッションのお披露目です。


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タトゥーは勿論、肌の傷や欠点まで、ファッションの一部として、堂々と。
ロマンティシズムとフェティシズムの双方を備えたゴルチエのファッションは、彼自身の生き方の反映でもあります。
性という問題に対して、遊び心に溢れ、挑発的に、また上品に取り組む、ゴルチエの姿勢の表現であるのです。


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4. Urban Jungle

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”Street”が、最も自分のインスピレーションをかきたてる場所、と公言するゴルチエ。
千差万別な人々が行き交う場所は、常に”違い”に着目する彼にとって、正に魅力とアイディアの宝庫です。


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80年代の半ばにゴルチエは、アフリカとヨーロッパの伝統をミックスした作品を作り始めます。
パリのバルベス通りで彼が見出したのは、活気に溢れ、人種のるつぼとしての、新しいパリの姿でした。


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作品を紹介する札には、製作に費やした時間も書かれてます。
こちらのビーズがちりばめられたガウンには、なんと242時間もかけたとか。(くらっ)


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”違い”を探求するうちに、ついには人間という枠と現実を超え。
オウムの羽、豹の毛皮、鮫の皮などを使い、刺繍やビーズ、レースで飾った、動物と人間の混合スタイルに辿り着くのです。


5. Punk Cancan

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ゴルチエにとって、パリはインスピレーションの源であり、パリジェンヌは生涯に渡って敬意を払い続ける存在です。
フランスの女優であるMicheline Presleや、ボヘミアンシンガーのArletty、カンカンダンサーのJuliette Grecoとの出会いは、ゴルチエに新たな表現をもたらしました。


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ロンドンの通りもまた、ゴルチエに大きな影響を与えました。
70年代に英国に旅行した彼は、初めてパンクを目にして、大いにインスピレーションをかきたてられたのですね。


6. Metropolis

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祖母のTVが原点というゴルチエが、映像の世界に入っていくのに、何ら不思議はありません。
自身がTVスターになった、初めてのファッションデザイナーだそうです。


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SFやニューウェイブ・ミュージックから着想を得て、ビニールやライクラ、ネオプレンといった素材を、プレタポルテのラインに取り入れ始めたのが、70年代後半のこと。
更に、そういった彼のデザインに魅了されたポップやロックのスター達が、彼の衣装を身に着けて、ステージやビデオに登場するようになりました。
会場では、ティナ・ターナー、ニルヴァーナ、レディ・ガガ、ビヨンセ、ボーイ・ジョージといったスター達のビデオや衣装、デザイン画が展示されていましたよ。


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バレエや映画の衣装も手がけ、そういう場で使われた衣装の展示も。
彼が協力した映画で、「The City of Lost Children」、「The Fifth Element」などのうち、「Kika」の抜粋フィルムが放映されていました。


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バブリーな80~90年代を、女子大生&OLとして過ごしたワタクシ、ゴルチエの服やバッグも、2~3点持っておりました。ええ、本人のレベルは棚上げで。
王道より、斜め80度。主役より、脇役贔屓。そんな私にとって、ゴルチエは魅力的なブランドだったのですが、いかんせん、一般企業に勤めるOLとしては、そこまでアバンギャルドに走ることもできず、なるべく無難なものを選んだり。(所詮は小物)

しかし、名前は良く知ってはいても、こうやってトータルで彼の業績を眺めるのは、全く初めてだったので。
ああ、やっぱりなあ、そうだよなあ。
そんな感慨を強く抱きながら、隅から隅まで楽しませていただきましたです。

彼の服が語ること。
人種も性別も、問題にならないどころか、違えば違うほど輝くということ。
性を超える為に性を捨てるのではなく、両性双方から見ても、紛れもなく魅力的であるように。
彼の主張は、ファッション界にとどまらない、大きな真実の一つを言い当てている、と思うのです。

”Non-conformist designer seeks unusual models - the conventionally pretty need not apply.”
(前衛的なデザイナーほど、型にはまらない美しさを持ったモデルを求めるものだ)
   ----- Jean Paul Gaultier



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The Fashion World of Jean Paul Gaultier: From the Sidewalk to the Catwalk
March 24, 2012 - August 19, 2012


de Young Fine Arts Museums of San Francisco
50 Hagiwara Tea Garden Drive
Golden Gate Park
San Francisco, CA 94118
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by senrufan | 2012-05-23 08:19 | Trackback | Comments(4)
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Commented by KawazuKiyoshi at 2012-05-27 12:59
ゴルティエ展
圧倒されて蹲ってしまうかもしれませんね。
刺激が強すぎるのかな。
ふふふ
今日もスマイル
Commented by Miyuki at 2012-05-29 16:13 x
*Kawazuさん
確かに、かなりの刺激でしたね~。
圧倒的な個性ってこおゆうのを言うのかなー、なんて思いながら鑑賞しました。
Commented by 初音 at 2012-05-29 17:04 x
こんにちは~
ま!夕方ですが~^^
なんか、すごく刺激的な世界ですねぇ~私、初めてかもぉ~^^
面白いですね!!日本にもあるのかしら???・・・・
行ってみたいなぁ~この世界感♪

南部料理!美味しそうですねぇ~う~~ん!!^^

サトウハチローさんの言葉にジーンっときたかも!!(^O^)/
Commented by Miyuki at 2012-05-30 15:27 x
*初音さん
日本にもゴルチエは、あちこちに出店しているのではないかなあ。
展覧会としてはどうかはわからないですが。
面白いですよ~。こんなアートがあるんだー、という感じで。

南部料理こそ、日本のどこかで食べられるといいんですけどねえ。
足をケガした時は、動物の足を食べるといい、と韓国の友人に言われたことがあります。
ご近所の韓国街で、牛の足の出汁のスープとか、大いに召し上がってくださいねー!


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