光に満ちた筋書きは

「自分の人生は、自分で演出する」
    ----- エルウィン・ロンメル
        (ドイツ人、軍人、1891年11月15日生まれ)


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とうとうお嬢がイレズミを……!
じゃないです、ヘナですね。Tatooはさすがにやめておけ。

彼女のインド人のお友達が、毎年この時期に、Diwaliという、ヒンドゥー教のお祭りをするのです。
家族、親戚、友人一同がわらわらと、100名ぐらい集まる巨大パーティで、お嬢も何度かおじゃましてるのですね。

起源としては、インドのラマという王様が、悪神にさらわれたお姫様を助けに行って、帰って来た時、村人達がギーのランプを灯して迎えた、という叙事詩が元になっている、という説が有力。
光の祭典とも言われるこのお祭りを祝う為、家で沢山のキャンドルやランプを灯すのです。

そしてパーティの為に、ヘナでこういった絵を描いてくれる人を呼んでくれて(ヘナレディと呼んでましたけど)、それぞれに希望の柄を聞いて、さらさらと筆で描いてくれるって、すごすぎる。
トレースじゃないんですよ、これ。

いずれ消えるものなので、今のうちに、これで何かできないものだろうか。

* * * * *

【舞台】

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舞台劇「Richard Ⅲ」を観に行って来ました。
そです、かのシェークスピアの不朽の名作、「リチャード3世」でございます。

この主役をなんと、あのKevin Spaceyが演じてくれるというのですから、これを見逃すテはないだろう。
以前からシェークスピア好きで、現在シェークスピアのクラスまで取っているお嬢と一緒に、サンフランシスコで観劇してきたのです。




「リチャード3世」と言えば、すぐに思い出す名セリフ。
「馬をくれ、馬を! 代わりに我が王国をくれてやる!」
私が読んだのは中学・高校時代なので、すでにあらすじも覚束ないのですが、このセリフだけは忘れられなくて。
横暴の限りを尽くした暴君の末路が、なんとも哀れでたまらなかったのですよね。
あのセリフを、スペイシーがどういう風に叫んでくれるのか。それが、自分的鑑賞ポイントでありました。


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ところが、それはほら、相変わらずの下調べナシ野郎なもんですから。
話のあらすじだけは、さすがに押さえていったものの、実際のこの劇の評判などは、全く知らないで行ったので。
のっけから、現代チックな白シャツに黒ズボンのスペイシーが現れた時は、おぉぇ!?とのけぞる始末。ちょーちんブルマーとタイツじゃないじゃんか!

セリフなどは、それほど原作を崩していないようでしたが、舞台も登場人物も、現在のようなスーツやドレス、街並などの描写もあり。
だって冒頭が、リチャードのTV(?)演説のフィルムから、ですからね。
全体的に白黒のモノトーンが中心で、さびれたような背景が、劇の悲劇性にモダンな味わいを上手に加えた、大変秀逸な仕上がりでございました。


始まる前にお嬢から、第一部だけで2時間ある、と聞かされて、母ちゃん驚愕。
夜の8時開演なのに、終わりは一体何時になるとゆうのだ。
相当な朝型の私、劇の途中でおねむになったら、どうするだ。

実際、長い長い第一部の間、これまた変わらずのセリフがわからねええぇ攻撃にもやられ、必死に眠気と戦った時もありましたが。
後半になるにつれ、ぐんぐんと引き込まれていったのは、そういうのを押しても、惹きつけられてやまない、迫力のある演技が理由に他なりません。

スペイシーが、とにかく見事、見事。何度でも言いたい、見事さで。
せむしで左足がねじまがっていて、杖にすがって動くリチャードの、不具であるが故の苦渋からくる悔しさ、だからこその権力への執着、手段を選ばない残虐さ、そして余りある憎悪。
どろどろ・ぎらぎらと、大変に脂っこい厭らしさがにじみ出ているのに、不思議に彼の手練手管にのせられていく登場人物達。
それは嫌悪感を覚えながらも、時折見せる彼のチャーミングさに、強い魅力を感じてしまうからでありまして。
なんでそこで彼を信じるかなあおい!とツッコミたくなるシーンで、実は全く同様に、彼を信じてしまう自分を見つけてしまったのです。

他の役者さん達も、劣らず素晴らしく。
リチャードの個性があまりに強力なので、脇役がかすんでしまうかと思いきや、リチャードを立てつつ、自分の足場は確固としていて、揺るがないピラミッド型の舞台を作り上げていましたよ。

徐々に徐々に、リチャードが築き上げた世界がほころび始め、崩壊への道のりがスピードアップ。
この辺りからの盛り上げも素晴らしく、とうとうラストの、あのセリフ。
「A horse! A horse! My kingdom for a horse!」
やったー!と、バンザイせんばかりの握り拳で、スペイシーのしわがれ声での叫びを聞きました。

終わった途端に、会場のほぼ全員がスタンディングオベーション。
何回もアンコールがかけられるほどの、大好評の舞台でございましたよ。
お嬢も、来て良かった、面白かった、を連発しまくりで、コーフンしながら、深夜の帰途につきましたです。


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そして帰り道でお嬢に、馬のセリフの日本語について話したところ。彼女は、その日本語訳に首をかしげるのですよ。
あくまで彼女の感覚で、ですけれど。
「My kingdom for~」というのは今では、何かを切望する時の常套句として使われているので、私が抱いていたような、悲劇的な意味は感じていなかった、というのですね。
「アメリカじゃなくって、主にイギリスじゃないかと思うんだけど、
たとえば、すごくお腹がすいている時に、『My kingdom for a bowl of soup!』みたいにふざけて使ったりしてるから、そんな大したことは考えてなかったよー」

なん……だと……?(ガラスの仮面的白目)

この劇によって、この言葉が常套句になったのではないか、と思えば、名セリフであることは確実なのですが。
なんというか、信じていたのに……!と、ハンカチを噛みたい気にかられた私の純情を返して、ってオオゲサな。
まあ、いいや。調べたら、そういう意味で解釈している人も、きっとおられることであろう。

ちなみにお嬢によれば、リチャード3世の名セリフといえば、
「Now is the winter of our discontent
Made glorious summer by this son of York」

(やっと不満の冬も去り、ヨーク家にも輝かしい夏の太陽が照りはじめた)
という、冒頭の言葉だそうです。開幕前に言ってくれ。


それにしても、しみじみ思ったのは、16世紀のシェークスピアの劇を現代風にアレンジしても、全く違和感がないのですね。
これは結局、人間というものは、これだけ時代を経ても、やってることが全然変わってない、ということなのでしょうか。
それを停滞・進歩なし、と思えば、自分を含めて、不甲斐無い気持ちも沸きますが。
同時に、全く人間というものは、と、妙に愛しさまで感じてしまったり。

それは、人間というものの本質を鋭く見抜き、見出し、舞台劇という形で明らかにしてくれた、シェークスピアという作家。
彼の手による登場人物達が、例えどんな悪人であろうとも、生き生きとした「人間らしさ」を持っていて。
悲劇も喜劇も、喜怒哀楽をあますところなく、我々の前に提示しながら、生き続けてくれる。
彼らの魅力のおかげ以外の、何者でもないのかもしれません。


Richard III at The Old Vic - starring Kevin Spacey and directed by Sam Mendes.mov
(予告編の動画を、サイトからお借りしました)



The Old Vic : The Bridge Project
Kevin Spacey in the title role of Richard III and directed by Sam Mendes

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by senrufan | 2011-11-15 13:31 | Trackback | Comments(8)
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Commented by nikkeilife at 2011-11-18 01:18
うわ~、ケビン·スペーシー氏のリチャード3世なんて、想像するだけで凄すぎます!予告のビデオだけでも迫真の演技が伝わってくるみたいです。それにメンデス氏が監督なんて、わ~、私も観たい!

シェークスピア好きのお嬢様、尊敬します~。私は高校時代、「ベニスの商人」と「真夏の夜の夢」でギブアップしました。でも思い返すと結構面白かったかも。また読んでみようかなと思いました。
Commented by ricomame at 2011-11-18 04:27 x
素敵~。こんなすばらしいお芝居があったのですね。みたかった!
シェークスピア、小、中学生のころはまってました。大人になってから読むと、あの時代のユダヤ人への偏見とかも垣間見れてまた違う感想を持つようになりましたが、やっぱり大好きですね~。
Commented by Miyuki at 2011-11-18 14:44 x
*アヤコさん
ね、ね、聞くだに興奮しちゃうでしょ? でもメンデス氏のこともちゃんとご存知だったなんて、さすがです! 私は全然知りませんでした(笑)

いやいや、ただ好きなだけですから~。日本で言うと、源氏物語感覚なのかしら、良くわかりませんが。私もまた読み返してみたくなりましたよ~。できるだけ新訳で(殴)
Commented by Miyuki at 2011-11-18 14:52 x
*ricomameさん
ブログ、お引越ししたのね~。ふっふっふ、まだ追っかけますぜ。
おお、シェークスピアお好きでしたか! 私もなぜかすごく気に入って読んでましたが、読み返すのは喜劇ばかりという(笑) そうですね、あの時代独特のものもありながら、でも結局現在でも同じ偏見があるので。年をとって、以前とは違う視点で読めて、別な形で好きになれるって、正に不朽の名作だと思います。
Commented by KawazuKiyoshi at 2011-11-18 15:05
スタンディング・オヴェイション
分かりますねーー。
そういう感激の場にいたいものです。
今日もスマイル
Commented by Miyuki at 2011-11-19 12:37 x
*Kawazuさん
周りを見ながら、ではなく、立たずにいられない気持ちに駆られる感動。
そういうものを味わえたら最高ですよね!
Commented by KawazuKiyoshi at 2011-11-19 14:28
エー、まったくそうです。
元気で。
今日もスマイル
Commented by senrufan at 2011-11-19 15:36
*Kawazuさん
はい、にっこり笑って……おやすみなさい(おいっ!)


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