介するは世界の共通語

「何より自分自身に対して偉人に、聖者になることだ」
   ----- シャルル・ボードレール
        (フランス人、詩人、1821年4月9日生まれ)


一時、横浜に身を置いていた義兄と義姉は、息子達を残して、福島のいわき市に戻りました。
昨日電話をもらって、すごく久しぶりに話したように思えたのに、実はまだ1ヶ月経ったところなのですね。

いろんなことを、ゆっくり話したですよ。

30km圏内には入ってないし、仕事はむしろ増えているからね。
思うことは色々あるけど、まずここでやれることをやっていかないと。

うん、ライフラインは復旧してるし、食料品とかも大丈夫だよ。
残念だったのは、東芝の42インチTVが割れちゃってねー。エコポイントで買おうとしたら、1月末で終わってるんだってね、いやいや参った(笑)
あ、お義姉さん? お義姉さんはね、2kgも痩せちゃったって喜んでるよ(笑)

そして大好きな義兄の、この一言が心に刺さりました。
「TVとかの、くじけないで、とか、がんばってください、という類の言葉は、もう言ってくれるな、と思うよ。いいから、黙って祈っててくれ、と言いたいね」

* * * * *

【イベント】

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ベルリン・フィルのコンサートに行ったのは、2009年の11月
あの時、もう当分他のオーケストラは聴かなくていい、というより、できたら聴きたくない、と思うほどに、いまだあの音の余韻が残っているのです。

が、そこを押しても行きたい楽団が。かのズービン・メータ率いるイスラエル・フィルが、サンフランシスコに来てくれたのですよ。
こちらもまた私の、「生きているうちに生演奏を聴きたい楽団」の一つであったので(……)、このチャンスを逃すまいと、発売早々にチケットを申し込み、お嬢と一緒にお出かけしたのです。




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会場に着く早々に驚かされたのが、デモ集団のシュプレヒコール。
「イスラエル商品をボイコットしろ!」「パレスチナを解放しろ!」……
ああ、そうか、そうだった。言われてみれば納得ではありますし、失念してた私も悪いのですけれど。
それにしても、やっぱりここでは聞きたくなかったなあ……と、微かな罪悪感を感じつつ、会場に入りました。


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ホールに入れば、そこにもやはりイスラエルの国旗。
指揮者のメータ氏が入場し、まず最初に奏でたのは、米国国歌とイスラエル国歌でありました。

さて、このたびの來SF演奏会は2日間で、私が行ったのは1日目。
演目は以下の通りです。

Haydn Symphony No. 96, Miracle
  Adagio, 3/4 — Allegro, 3/4
  Andante, 6/8 in G major
  Menuetto: Allegretto, 3/4
  Finale: Vivace, 2/4

Mahler Symphony No. 5
  Trauermarsch (Funeral March) (C-sharp minor)
  Stürmisch bewegt, mit größter Vehemenz (Moving stormily,
             with the greatest vehemence) (A minor)
  Scherzo (D major)
  Adagietto (F major)
  Rondo-Finale (D major)

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いまや世界一、と言われるほどのオーケストラだけあって、確かに素晴らしい演奏でした。
ハイドンでは、曲のせいもあって、管楽器の見事さが際立ち、弦の支えがいまひとつのように感じられましたが。
マーラーに至って、全くそんな気持ちを払拭するほどの、流麗・絢爛な響きに脱帽です。

それでもやはり、個々の管楽器の音の素晴らしさ。
木管は、オーボエが好みではないものの(ドイツ贔屓ですいません)、揃って堅実な演奏ぶり。
それらを上回って、金管の響きが殊更に素晴らしく。
特にホルンは、鳥肌が立つほどの出来。ホルンって、あそこまでの音が出せるんだ、と開眼させられたような思いまで抱きましたよ。
大好きなマーラーを、こんなレベルの演奏で聴けたこと、全く幸運の一言でありましょう。


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と言いながら、やっぱりベルリンだね、と言ってしまう私達っていけません。
どうしてもあの音、あの響き、かの重さ。それが胸中に居座ってしまってるんですね。
特にお嬢の場合、なんというか、正式なオーケストラを聴いたのがベルリンが初めてだったので、より一層忘れられない感動を得られたようで。なんとも贅沢なもんですな。

ただ、トータルなまとまりや出来は、イスラエル・フィルの方に軍配が上がる、と思います。
ベルリンは音質自体が私達の好みに合っているので、どうしてもそちらを贔屓してしまいますが、客観的に質を判断すれば、前回のベルリンと比較するなら、それは冷静にこちらであるでしょう。

ベルリンのような重厚さでもなく。ウィーンのようなしなやかな華麗さでもなく。
もっと確実で、より完璧なのですけど、ずっと孤立感というか、近づきがたさが強いように感じられたイスラエル・フィル。
上手く言えないのですが、地元に根ざして、自国の人と密な繋がりを持つことが望ましいオーケストラ活動において。
イスラエルという、非常に難しい立場の「国」を基盤とした、”彷徨う民族”が成す楽団に、ある意味ふさわしい演奏であった、ような気がしてなりません。

改めて、聴けて本当に良かった演奏会でありました。


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ユダヤがどうしても気になる、ということは、前に少し書いたと思うんですが。(たとえばこれ
世界的に有名な音楽家に、ユダヤ人が多いことを考えれば、彼らが「神に選ばれた民族」と思うのもあながち否定できない、と思ったり。
であると同時に、その”自意識”ゆえに他と交わることができず、溝を深くしてしまうことの一因であるのだろう、とも思います。

たまたま昨日読み終えた本も、ユダヤ人が主人公の話だったせいもあるのですが。
彼らが安住の地を、世界的にも認められた平和な地を早くに持てていたら、一体世界は変わっただろうか。
それは、国と国のことだけでなく、芸術や学術の世界においても。
彼らが”彷徨う民族”であるが故に、文化や教育の継承はより強く、より熱心に行われてきたはず。
生来の才能があるとしたら、迫害の歴史はそれを後押ししたのか、それとも。

歴史に「もし~だったら」という言葉は禁句ですが、そんな風に考えずにはいられませんでした。


指揮者のズービン・メータ氏ですが、実は震災直前に、フィレンツェ歌劇場と共に来日していらっしゃって。
13・14日の関東での演奏会はこなしたものの、フィレンツェ市長の命により、日程半ばで一旦帰国せざるをえなくなったのだそうです。

「湾岸戦争が起きた時、現地に飛び、連日イスラエル・フィルと無料演奏会を行い、人々を鼓舞した」というメータ氏にとって、志半ばで日本を発つことの辛さがどれほどのものであったか、想像するに難くありません。

 ズービン・メータ 日本の観客へのメッセージ ~日本経済新聞記事より~

そして日本時間の10日、再来日したメータ氏とNHK交響楽団の演奏会が開催されましたね。
NHKの「N響アワー」で、17日に放映されるそうなので、それで彼のメッセージが伝わってくれれば素敵だなあ、と思います。

 ズービン・メータ 東京・春・音楽祭「チャリティ・コンサート」で指揮


文学で、スポーツで、絵画で、映像で、そして音楽で。
伝えたい人が、伝えたいことを、伝えようとした時に、個々の力で伝えてくれると信じます。


The Israel Philharmonic Orchestra 

Davis Symphony Hall
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by senrufan | 2011-04-09 14:55 | Trackback | Comments(8)
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Commented by aya at 2011-04-12 14:50 x
こんばんは!以前から、そして大震災の後も、何かと教えられ、励まされる記事のupをどうもありがとうございます。先日はお見かけして、嬉しくて呼び止めてしまいました~。駐車場で車も迫っていて、あぶなかったですね(苦笑)。。またゆっくりとお会いできます機会を心待ちにしています。いつもありがとうございます。


Commented by 初音 at 2011-04-12 17:48 x
こんにちは~♪
昨日、今日もユラユラと余震がある日本ですぅ~
私は地震酔い ^^;

音楽はいいですねぇ~気持ちが落ち着きます☆
17日にテレビでやるのね♪予約しまぁ~す!!
心良い音楽に穏やかな気持ちに力!を頂きま~す!!
ありがとうございます(^-^)
Commented by ばんず at 2011-04-12 17:53 x
お義兄さまのお言葉、私の胸にも突き刺さりました。これこそが現場のナマの声なんでしょうね。

イスラエルフィルのすばらしい演奏をお嬢様と堪能されたようでうらやましい限りです。先月、同じホールにこどもの遠足のつきそいで参りましたが(SFフィルの子供向けプログラム)、初めてナマのオケの演奏を聞いて感動いたしました。子供が一緒に楽しめる年になったら、うちもMiyukiさんちのように一緒に聞きに行きたいです。
Commented by nikkeilife at 2011-04-13 00:02
Miyukiさん、こんにちは。さすがMiyukiさんのお義兄さま、大切なことをズバッとおっしゃりますね。私も最近、「ganbare Nihon」や大量の折鶴などをみたりして、本当に役にたってるんだろうか、と思い始めました。ちょっと事情が違いますが、ウツ病や心労の方に一番つらいのは「がんばって」という言葉だとか。「これ以上どう頑張るんだ」と絶望しちゃうそうです。特に頑張らなくてもいいから自分を大切に、と被災した方々のご無事を願っています。

メータ氏の指揮が生で聴けたんですね。羨ましい!デモの方々、言いたい事は分かるんですが、音楽を通して出来る事,とメータ氏の人徳を考えるとやはりこの時は遠慮して欲しかったですね。ホルンは大好きな楽器のひとつなのですばらしい演奏が聴けてとても羨ましいです。ラジオでも良いホルンのソロがあると鳥肌立ってしまうほど感動しちゃうので、生で聴けたらやはり凄いでしょうね。いつかMiyukiさんとコンサートご一緒したいです。
Commented by Miyuki at 2011-04-13 10:46 x
*ayaさん
あれー、きれいなお母さんと思ったらayaさんでした。私こそ、お会いできて嬉しかったです~vv あのおばちゃん車さえいなければ、もう少しお話ししたかったのに(涙)
また学習会などでゆっくりお会いしましょうね!
Commented by Miyuki at 2011-04-13 10:50 x
*初音さん
余震と言っていいのか、というほどの規模ですものね……
初音さんは普段のお疲れがある分、ますますお辛いことと思います~(涙)
折を見て、少しずつでもお休みになってほしいのですが~~~。

日本にいた頃、「N響アワー」はお気に入りの番組だったのですが、いまだ健在のようで嬉しいです♪
音楽でもいいし、初音さんのお好きな絵でもいいので、初音さんに力をくれるものが沢山集まってきますように!
Commented by Miyuki at 2011-04-13 10:53 x
*ばんずさん
しみじみ、わかるなあ、と思ってしまいますね~。日本語でこれほど一般的な「がんばってください」は、実は日本独特の言葉と価値観なんですね。

なんと、遠足で行かれたですか! うらやましいぞ、小学生くん達(笑) そうそう、私も娘が中学以降になってから、こういうことが少しずつできるようになって、また新しい楽しみを色々教わっております。ばんずさんは息子さんと娘さんそれぞれと、お楽しみが倍ですよ~、待ち遠しいですね~vv
Commented by Miyuki at 2011-04-13 10:58 x
*アヤコさん
そうそう、その通り! 鬱の方に「がんばれ」は禁物なんですよね。1ヶ月経って、前は見えなかったものが見えてきたり、必要とするものが変わってきてますから、支援する側も遅れないようにしていかなければならない、と近頃強く思います。

メータ氏もイスラエルフィルも、本当に素晴らしかったです! アヤコさんもホルンがお好きですか、嬉しい~♪ あれはとても難しい分、「はまった」時はすごいですよね! デモの人達も、あの演奏を聴けば、そういうことも忘れてしまえるのになあ、と思ったり……私こそぜひぜひアヤコさんとご一緒したいですー!


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