世界に一つだけの教科書を (4)

「弱者は決して許さない。許すことは強者の特質である」
   ----- マハトマ・ガンジー
       (インド人、哲学者、1869年10月2日生まれ)

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【イベント】

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コンサートや舞台が終わった後、興奮冷めやらぬといった心と身体で劇場を後にするのは、楽しくも寂しくもあり、文字通り、一時の夢を見た、という思いが強いもので。
それは、日常を離れた非日常の一時であったからこそ味わえるもの、という意識がどこかにあるのですが。
久司先生の講演会の後は、そういった気持ちの色が違って、そのまま日常に厚みをいただいたような、温かい感謝の思いを抱きながら、ゆっくりと家路についたことを覚えてます。

先生への批判は数多ありますし、マクロビオティックに対しても同様です。
ですがこの日、長い年月をかけて築き上げられてきた、とあるものの形の美しさと奥深さが、
その中心となられた方の口から語られるのを聞いて、思ったのは。
これだけのことを成し遂げた人達が確かにいる、ということのすごさと大きさへの、否定することのできない畏敬の念でありました。




マクロビオティックというものを知って、レシピ本を買い始め。
理論もちゃんと知りたいと思い、初めて買った久司先生の本が、「マクロビオテイック入門」です。

本の前半は、へえぇ、ほおぉ、と楽しく興味深く読んでいたのですが。
後半になって、話が世界平和と宇宙規模に至ったところで、その声がうへえぇ、に変わったことを、ここに告白いたします……
ぶっちゃけ、すんごく引きました。そらもう、思いっきし引きました

以来、その手のカオリがしない(……)、他の方の本やブログで理論を学ばせてもらいながら、レシピを見て料理を作ることを積み重ね。
その過程で、奥津典子さんのご本に出会って、その具体的で、押し付けや強制が一切無い内容に、これぞ自分的マクロビバイブル、と感動したのですね。


その奥津さん、大学在学中から、久司先生の秘書を勤めていらっしゃったのでありまして。
優しく細やかな奥津さんの文章で綴られる久司先生像は、それまで雲の上で、いろんな意味で手の届かない方、と思っていた先生を、別の視点から垣間見せてくださったのです。

「望診」という、中国医学の伝統的な診察法。西洋医学の言葉であれば視診、つまり「目で見て判断する」診断ですね。
マクロビオティックにも、この「望診」があり、久司先生のそれは、奥津さんによれば世界的にも有名で、ジョン・レノンやグィネス・パルトロウなど、有名人が訪れたことも多いとか。

身体の見た目から声に至るまで、全ては自分が摂り込んだものの「排出現象」で。
病気は勿論、フケや鼻水、体臭なども、自分が摂ったものから出ているのであって、身体にとって余計なものを摂れば、当然悪い形で排出されますね。
そういえば昔の私の上司で、思い出してみても、すさまじい体臭とフケの人がいましたよ……あの人は普段、何を食べていたんだろう。

で、その原因となる「摂ったもの」は、「食べ物」であるわけですが。
マクロビオティックでは厳密に言えば、食材のみならず、自分が囲まれている環境(自然、社会、職場、家庭など)の過去から現在に至るまでもが、全身で吸収する「食べ物」だ、と見なされています。
よって、↑の「排出」というのは、身体だけではなく、心の症状も含まれるのであって。
何か不具合が出た場合、原因となる「食べ物」、もしくは「食べ方」を変えていく必要がある、ということになるのですが。

久司先生は、こういった症状について、見ただけで、もしくは電話で30秒話しただけで、
その人のどこが悪いのか、何の食べ過ぎだとかがわかるそうなんですよ。

「心臓が肥大しているよ」
「玄関の右側のクローゼットが散らかっているね、片付けましょうね」
「毎晩チョコレートを食べているでしょう、腎臓が困っているよ」……

奥津さんが秘書として筆記係をつとめていらっしゃる横で、ニコニコと次々に見通していかれる久司先生。
先生によれば、食べたものがちゃんと、順序だって声や姿で排出されているから、マクロビを学んでいけば誰でもわかるようになる、とのことですが、いやいや、そんなレベルの話じゃないでしょう。

アメリカに渡って、街角でひたすらに人を見つめ続けた日々
その時に身につけられたものか、と思えば、余計に遠くに在る気がします。

奥津さんは、先生とはおそらく20年以上のお付き合いになられると思うのですが、その間、先生が怒ったことは一度もないのだそうで。
怒りも排出現象で、健康であれば怒ることもない、ということですが、だったら私は瀕死の重病人でございます。特にハンドルを握ってる間。

では、真に健康な人はどういう人か、と問えば、その一つとして、
偏った意味での「評価」ということを、自分にも他人にもしなくなるのでは、
ということを奥津さんが書かれてますが、これには個人的に大納得です。だから私は、棺桶に片足突っ込んだ重病人でございます。


講演会に行って本当に良かった、と思うことは、幾つもありますが。
何より、本や、他の人からのお話でしかうかがえなかった先生の実際の姿が、その声を、その口調を体感したことで、私の中で肉付けされたことかなあ、と。
天才で奇才で、ひどく人間的なのに、確実に超越した方で。
すごいとか、手が届かないとか、そんな言葉も多々当てはまる方なのに、同時にとても身近で温かく、常に「理解と受容」を与えてくださるような。
私は望診など到底できませんので、いろんな話と、勝手に抱いた期待や想像でもって作り上げたお姿ですが、それでも講演を体験できたことで、数パーセントの確度は増した、と思うのです。

pyonさんからうかがったエピソードなのですが。
久司先生は皆でレストランに行った時、手を挙げて、
「あ、僕、チーズケーキ」
と、あっさりと注文されたとか。しかも食べ終わった後に、
「あ、チーズケーキ、もう一つ」
と言われたとか。

マクロビの指導者がそれでいいのか!? と、ストイックな信奉者の人は愕然としそうなお話ですが。
私は、それでこそ、という理想の姿をそこに見ます、なんつって。

マクロビオティックは、「○○はだめ」という食事法ではない、と思っていますので。
それは生活実学で、生き方の一つで、目指すところは、どんな「食べ物」をも咀嚼して消化できるだけの健康な心身を作ること、だと思っていますので。

なので、先生のそんなエピソードを耳にして、思わず笑ってしまうだけでなく、
早く自分もそうなりたいなあ、れべるあっぷしたいなあ、と思うことばかり、だったりして。
マクロビによって偉くなったのではない、幸せになったのだ、という先生のお言葉を、改めて噛み締めます。

日本では知られてなくても、海外ではとても有名、という日本人が何人もいらっしゃって。
そこまでいかなくても、一般では無名ながら、○○業界では有名、という人も沢山いらっしゃって。
そういうのっていいなあ、と心から思うと同時に、そういう人達全てに頭を垂れて、成された事とその努力に対して、感謝と尊敬の気持ちで一杯になるのです。


最後に、奥津さんがご本の後書きに書かれた、久司先生についてのお言葉を引用させていただきます。
「先生にはさまざまな側面があります。その業績は輝かしいもので、一個人が何の団体も持たずに成し遂げたそれとしては、奇跡に近いと思えるほどになりつつあります。そしてそれによって、先生のみならずマクロビオティックの説得力、信憑性は高まりました。本当にありがたいことです。
けれど先生の本質はおそらく何も変わっていません。仮に評価されなくても、先生の見出した真理は、この数十世紀にわたって最も美しく、そして貴重なものだと信じています。
そしてあのどこまでも優しく、いつでも茶目っ気たっぷりなお人柄。天才すぎて、この社会の常識も思い込みも吹っ飛ばしてしまう、あの感受性。けれどその奥には、鉄よりも強い忍耐力と意志があります。
私は先生が怒るのを見たことがありません。人を悪く言うのも聞いたことがありません。
先生と同時代に生まれ、そして先生と同じ言語を話す民族に生まれたことを、本当に幸福に思います」

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あと1回、かなー。でも蛇足になりそうだなー……(迷い中)
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by senrufan | 2010-10-02 11:12 | Trackback | Comments(8)
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Commented by マミィ at 2010-10-04 15:07 x
「心臓が肥大しているよ」
「玄関の右側のクローゼットが散らかっているね、片付けましょうね」
「毎晩チョコレートを食べているでしょう、腎臓が困っているよ」……
これ、全部自分のことを言われているのかと…久司先生はMiyukiさんを通して私が見えるに違いありません。

チーズケーキを頼んだというエピソード、傑作ですね。やはりこうでなくては(笑)

続き、楽しみにしていますよー。
Commented by Miyuki at 2010-10-05 10:13 x
*マミィさん
ああ、そうかもしれませんね~。
と思わず納得してしまうぐらい、すごい眼力ですよね!
私ももし機会があったとしたら、一体何を言われることやら。「生まれ変わってやり直しなさい」とか。

続き、いまだに迷い中です……やっぱり余計な気がして。もしかしてさくっとやめたら、あははーと笑って見逃してくださいまし~。
Commented by ぺんぎん at 2010-10-06 10:15 x
連投しつれい。
怒りも排泄?!わたしもいつも怒りまくってる〜。ハンドル握ってる時も、夫と喋ってるときも〜。
でも前みたいにイライラしなくなったかなぁ。
チーズケーキの話、面白いですね。
わたし、マクロビは苦手なのです(茄子大好き)が、マクロビの本質はもっと深いところにあるのだなあ、それなら納得だなあ、と思いました。
マクロビ普及してる方、もっと勉強してください!なーんて。
第三弾、楽しみにしてまーす。
Commented by Miyuki at 2010-10-06 12:09 x
*ぺんぎんさん
わ、私も私もです! もー、導火線が線香花火並みなんですよー(涙)
でも確かに、前よりは少しずつマシにはなっているような。これはただの加齢かもしれませんが(くそう)
マクロビを苦手に思う方々のお気持ち、良くわかります~。どんな立派な流派でも、結局はそれを実践する人達次第なので、マクロビでも惹かれる人と引いてしまう人がいらっしゃいますよね。
ううう、次は私の長~いタワゴトになってしまいました……すみません、すみません。
Commented by Sarah at 2010-10-06 12:12 x
奥津典子さんのご主人が「いつか刑務所でマクロビを」とおっしゃっていた言葉の意味が、最近になってよーくわかってきました。食事は個人の健康だけでなく、健全な社会を作るんだなぁ、と。特にアメリカは、コミュニティレベル=食レベルですし...。マクロビの思想ってすごいですよね。なのに未だにマクロビ=厳格なベジタリアンダイエットと思っている人が多いのが残念でなりません。
Commented by Miyuki at 2010-10-06 14:07 x
*Sarahさん
さすが良くご存知だわ~vv 実際、刑務所か少年院で砂糖抜きの食事実験がありましたよね。おっしゃる通り、衣食住が足りてるからこそ考えられることという側面がありますよね。マクロビは確かに玄米菜食が核なのですが、それ以上の懐の深さがある、と私は思っているのです。なので、何回説明してもわかってもらえない場合は、さすがにため息をつきたくなるです。心が狭いから(くっ…)
Commented by まきりん♪ at 2010-10-06 14:36 x
マクロビの大先生、とてもユニークなお人柄なのですね。
食べ物を通して人を見抜く目を持っているとはすごい!
玄米菜食、できる時はしてみうようかなって気になりました(ちょtっとだけ)
Commented by senrufan at 2010-10-06 15:12
*まきりんさん
いい先生でしょう? 私の好み、ど真ん中ストライクで、こんなにぽーっとなったのは、植木等以来です。(うっとり)
うふふ、でもまきさんも玄米派でいらっしゃるのですよね。これからますます玄米が美味しい季節になりますね~♪


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