一期限りである一会 (番外編)

「人の過ちというものは、秩序だったやり方にしびれを切らし、早まってさじを投げることが原因である」
   ----- フランツ・カフカ
       (チェコ人、作家、1883年7月3日生まれ)

* * * * *

【ベーカリー】

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French Laundryを出て、そのまま真っ直ぐ、数百メートル。(多分)
軽やかなパステルカラーのお店の前には、長い行列ができていた。




トーマス・ケラー氏が中心となった、The Thomas Keller Restaurant Group
レストラン事業を数方向に向けて展開していて、当然のことながらFrench Laundryは、その中の一つであるんだな。
そしてケラー氏が主に足場としているのは、NYとカリフォルニア。東西の海岸に、それぞれ金字塔を立てている、なんつって。
実際のところ、広大な国土のアメリカなれど、食と健康の意識が高いのは、ほとんどこの2箇所のみ、とは良く言われること。より厳密に言えば、NY・LA・サンフランシスコの3箇所。
や、割合からすると、この3箇所が米国内では特殊、と言うべきか。

そのカリフォルニア、ミシュラン3つ星のFrench Laundryのほど近くに、一段カジュアルなビストロ、ミシュラン1つ星のBouchonがあって。
更にそのベーカリー部門だけが独立したのが、Bouchon Bakeryなんだって。
French LaudryやBouchonにはなかなか行けなくても、パンやお菓子類だけなら、こちらのベーカリーで買えるとあっては、そらあ人も集まるってもんでしょう。


列に並んでおしゃべりしてたら、前に立っていた可愛らしいお嬢さんから、
「日本人の方ですか?」
と日本語で。
おお、そちらこそ、日本人でいらっしゃいましたか。確かに、その力あるアイメイクは、日本の方ならではですね。(ほめてます)

UC Berkeleyに短期留学中で、この日はご学友達と一緒に来たとのこと。
若者達と一緒に、バークレー近辺での美味しいお店の話などで、しばし盛り上がっちゃったオバサンです。


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少しずつ順番が近づいてきて、お店の中が見えてきた。
さすがに夕方だけあって、パンはあんまり残ってない。
そして、向こうのショーケースの中に並んでるのは、なんとも大きなマカロン達。子供の手のひらサイズは軽くあるよ。


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何を買おうか、と家族で相談すれば、さすがにご馳走の後とあって、2人ともそれほど欲しいものはなく。
マカロンも、甘さにめげた先ほどの経験から、ちょっとこの日は遠慮したく。

初心に帰って(?)、クロワッサン探索の為のチョコレートクロワッサン。プレーンが欲しかったんだが、売り切れだったので。
お嬢と旦那は、チョコレートとコーヒーのエクレアを。

小雨が降る中、濡れないように箱を抱えて、Wさんご夫妻とお別れして、帰宅の途についたのであった。
*-*-*-*-*-*-*-*-*

そういえば、と思い出したのが、しばらく前に読んだミステリー。
NYの老舗コーヒーショップが舞台となって、女性店長が活躍するコージーなのだけど。
最新刊で、なんとこのベーカリーが出てくる記述があったのさ。勿論、NYの方の店だけど。

とあるオフィスで、大事なお客さんにその場でコーヒーを入れなくてはいけなくなった店長。
エスプレッソマシンはあったものの、置いてある豆がひどい状態だったので、手伝っていた女の子に頼むのだ。

「このちかくにブション・ベーカリーはないかしら、知らない?」
「知らないどころか、このビルにいる人ならだれでも知ってますよ。この真下のロビーの店舗に入っています。熱々のクロワッサンの匂いをたどっていけば見つかります」
わたしは少々の現金を取り出し、
「ブション・ベーカリーのカウンターで、挽いてないコーヒー豆を一袋買ってきてちょうだい。ブションはエクレアやタルトばかりを売ってるわけではないわ。ローストしたてのコーヒー豆を小分けして袋づめして売っているの。豆のままのものを買ってね」
<ブション・ベーカリー>は、アメリカの現役一流シェフのトーマス・ケラーが経営している店だ。そしてたったいまおつかいを頼んだコーヒー豆は、ある女性が所有する会社から仕入れたもので、ローストの加減はまさに職人芸だ。ケラーが経営し全米で最高級のレストランといわれるカリフォルニアの<フレンチ・ランドリー>も、ニューヨークの<パーセ>もこのコーヒーを使っている。それと同じ豆をここの二十数階下のフロアのブション・ベーカリーで買えるのだ。
          ------ クレオ・コイル著 「エスプレッソと不機嫌な花嫁」より

そして、無事コーヒー豆を手に入れた店長は、ブション・ハウスブレンド(主としてスマトラ・ゴールデン・パワニにアフリカとラテンアメリカの豆をミックス、だそう)のすばらしい香りを絶賛する。
ブションもフレンチ・ランドリーも、やはり全米規模で有名なのだな。や、それとも東西海岸だからなのかな。コーヒーまで素晴らしいとは、さすがだな。
そんなことが記憶に残っていたんだよ。

と、この場合、コーヒーではなく、パンとエクレアだ。
帰宅してから、コーヒーではなくお茶を入れて、早速味見してみたよ。


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チョコレートクロワッサンは、期待通りにとても美味しい生地。
柔らかいのにしっかりしてて、ちぎるとふわりとバターの香り。表面の焼き具合にも満足だ。

しかし、中のチョコには、またもや撃沈。
Tartineのスイーツ類もそうだったけど、すごく良く出来てて、見事な技術で作ってあるのに、どうしてこうも甘いのだ。

エクレアも同様で、やっぱり生地には大満足で。
中のクリームの滑らかさもすばらしく、詰めたり塗ったりという点にも文句なし。

だけどね、だけどやっぱり、甘過ぎる。もうちょっとだけ控えてほしい、というのはわがままですか。(その通りだ)
アメリカでは、このぐらい甘くないとやってけないから、意図的にそうしているのか、それともシェフ自身がこのぐらいが好みとしているのか、はてさて。

甘さはさておき(…)、他は素晴らしいと思うので、もし今度行く機会があれば、ケーキやタルトに挑戦したいなあ、と。
今までこちらのレストランで食べたスイーツの中で、すごく美味しいと思ったのは、ぱっと浮かぶのがBistro Elanのケーキ
フレンチ・ビストロ同士、どちらが自分には嬉しいか。食べ比べることができたなら、そらあ贅沢な経験ってもんだよね。


陳腐な表現の繰り返しなれど、”夢のような”という言葉が一番ぴったりの。
そんな半日の終わりは、家のソファで、まったり家族で、

 楽しかったね、美味しかったね、Wさんに感謝だね、……

ただただ、その言葉の繰り返しでありました。

(終わり)


Bouchon Bakery
6528 Washington Street
Yountville, CA 94599
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by senrufan | 2010-07-03 08:06 | Trackback | Comments(8)
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Commented by すれっぢ at 2010-07-05 22:38 x
北米人相手の甘味・・・ぜ~ったい日本人の口には合わないですよね。
今度日本人100人とアメリカ人100人(人種は混ぜてOK)でどれくらいの甘さから甘いと感じるかテストしてみたいです。結果は見なくても分かるような気もするけど・・・甘さ感覚の差はマリアナ海溝より深しですね~。
Commented by Miyuki at 2010-07-06 09:34 x
*すれっぢさん
おおっ、そのテスト、ぜひ実施してほしいですね! 日米100人ずつぐらい無作為抽出して、せーの、で。
といいつつ、私の甘さ感覚こそ自信がないです……美味しいと日本人の方々が絶賛されているお菓子でも、私には甘すぎたりしますので~(涙)
Commented by Chico at 2010-07-06 15:45 x
ご無沙汰しちゃってスミマセン!忙しくって、、(言い訳。笑)
結婚記念日おめでとうございます。
French Laundryでお祝いだなんて、素敵です~。贅沢です~。(羨ましすぎる!!!!)
Bouchon Bakery、私も昨年行きましたよ~。
そして私も、クロワッサンとエクレアを買いました。
でもって感想は、クロワッサンは満足、エクレアはやはりクリームが甘かったです。
でもアメリカ人にしたら、甘さ控えめなうちにはいるのではないでしょうか、きっと。
そのうち、うち(私)のエクレアが一番美味しいといわせる日が来ればいいけど、、いや、しばらくは来ないでしょうね。(笑)
その日が来たら、買ってくださいませ~~♪
Commented by shina_pooh_at_sfo at 2010-07-07 00:32
私もすれっぢさんのテスト、自分に課してみたいです。。。自分の甘さ許容度がどれくらいアメリカンなのかを知らないと、美味しいと思ったスイーツを人に勧められなくて(涙)甘さ控えめも激甘も、どちらも大好きというのが事実なんですけどね、、

小説の一説、いいですね。知っている、実在するお店がこうして登場すると、ちょっと嬉しくなりますものね。
Commented by matsathome at 2010-07-07 02:59
ブションベーカリー、スイーツは食べたことがないので何ともいえませんが、ターキーサンドイッチはどこよりも美味しいと思っています。
というのも、保守派の私は甘すぎるのが怖くて、マカロンやカップケーキすら一度も食べたことがないのですよ(笑)Miyukiさん、お勧めのお店があったら教えてください!
こんな風に、いいタイミングで話しかけることが出来る日本人の方に憧れます。いつも、お互い日本人だと意識しながら、しらーっとした雰囲気になるのがイヤなのですが、なかなか話かけることが出来ません。
Commented by Miyuki at 2010-07-07 10:08 x
*Chicoさん
お元気そうな様子、何よりです! そしてありがとうございますvv
あはは、我が家は今まで結婚記念日のお祝いは2回ぐらいしかしたことがないので、17回分のお祝いと思いまして(笑)
おお、Chicoさんもクロワッサンとエクレアを!
やっぱり甘いとお思いでしたか。良かった、私だけじゃなかった。
Chicoさんのエクレアが一番美味しいと思える日の為に、ぜひワタクシめを試食係にお使いくださいませ。って、味覚音痴は使えないじゃん!(愕然)
Commented by Miyuki at 2010-07-07 10:11 x
*shinaさん
いやいや、shinaさんのは甘さの「個人的好み」の範疇ですが、アメリカの人の好みはすでに「体質」という疑い。遺伝子に組み込まれちゃってたらどうするの、という危惧。それを更に親に幼い頃から刷り込まれるという「伝統」、っていい加減シツコいからやめなさい。

そなんです、昔買った本を今読み返したら、カリフォルニア舞台のものがいくつかあって、地名を見ながら喜んだりしてます、えへ。
Commented by Miyuki at 2010-07-07 10:15 x
*mameさん
ターキーサンド、おお、食べてみたいです! 私、サンドイッチとスープはアメリカ贔屓なんですよ~。あ、サラダもかな。
mameさんに聞かれて気づきましたが、全品薦められるスイーツのお店って、私にはないかも(汗) たとえばケーキが美味しくとも、マフィンになると途端にアメリカンだったりしませんか。思うに、マフィンやカップケーキ、スコーンって、トラディショナルなアメリカンスイーツになっちゃってるから、それぐらい甘いのが王道なのかも、なんて邪推したり。
あ、それ、わかります~。私も苦手なんですよ。向こうから話しかけられる分には大丈夫なんですけどね。


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