一期限りである一会 (その4)

「太陽の光に顔を向け続けたら、影が見えることはない」
   ----- ヘレン・ケラー
       (アメリカ人、教育家・社会福祉事業家、1880年6月27日生まれ)


* * * * *

【レストラン】

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嬉しい・美味しいサービスの連続で、気分が高まったところで、いよいよコースの始まりだ。


Tasting of Vegetables | 22 May 2010

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PICKLED JACOBSEN'S FARM FIGS
Young Almonds, Celery Branch and Lemon "Granite"

今年初めてのいちじくは、まだほんのり若さが漂い、かといって未熟ではなく。
食感も香りも違う、組み合わせの妙を楽しめる。




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カゴに盛られて差し出された、3種類ほどのパンから選んだのは、ちょっとガレットっぽいような、ざっくり食感のパン。
バターの香りがとても豊か。


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SUNCHOKES "EN PERSILLADE"
Fava Beans, Jingle Bell Peppers, Arugula and Nicoise Olive

コロッケのような可愛らしいボールを口に入れれば、しゃくっ、と快い歯応えと、素材の新鮮さが広がって。
あまりの美味しさに目を丸くしてたら、これがJerusalem Artichoke、またはSunchokeで、日本名が菊芋だと、Wさんから教わった
春のそら豆に、ほんの2枚だけのアルグラ、たった2粒のオリーブが、この小さな一皿の中では、この上ないバランスを作ってる。

Jerusalemはつまりエルサレムだろ、と頭に入っちゃってることもあって、お嬢に何回も教わったのに、どうしても英語発音ができないよー(涙) Sunchokeの名前があって、助かった……


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ROASTED WHITE ASPARAGUS
Silverado Trail Strawberries, Sicilian Pistachio, Mache and Black Truffle Coulis

目にした途端に、「笹かまぼこ?」と思ったことは内緒です。(殴)
淡白な味であるはずのホワイトアスパラが、焼いてここまで美味しくなるとは、素材がよっぽど良いんだろう。
ソースもコクはあるのに、味は適度で、それにいちごの甘酸っぱさと、ピスタッチオの歯応えがアクセント。

ここまでくればおわかりの通り、ごくごく少量の一皿に対して、主役の食材を据えた後、それぞれ個性のある脇役を、ほんの少しずつ配置して。
結果として、これで十分完結できる、力のある一皿に仕上がってるんだね。
確かに私のデカ口を持ってすれば(ぢまん)、三口で終わらせることもできる量だろうけれど、それはあまりに勿体無いってもんだろう。隅々まで、目でも舌でも、余すところなく味わいたい。


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"TORTILLA ESPANOLA"
Yukon Gold Potato Confit, French Laundry Garden Spring Onions, Charred Onion Oil, Baby Lettuce and "Sauce Romesco"

鮮やかなオレンジ色が美しいけれど、断面は更に美しい。
みっちりポテトはほくほくしてて、でもトルティーヤは締まって爽やかで。
春だけのお楽しみのスプリング・オニオンは、ほんの1~2本でも十分な力。


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ワイン好きな方なら、これらの料理に、どんなワインを選ばれるのかな。
お酒はなしで、ということではあったのだけど、Wさん旦那様が持ってきてくださった赤ワインを、皆で美味しくいただいた。
Harlan Estate 2006、というラベル。


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SALAD OF CAULIFLOWER FLEURETTES
Andante Dairy Yogurt, "Pain Frit," Black Quinoa Pilaf, Royal Blenheim Apricots, Cilantro and Madras Curry

大好きなカリフラワーが、一皿の上で三変化。
散らしたキヌアがぷちぷちと。カレーとシラントロのクセのあるソースが、アプリコットの甘さとハーモニー。
一口一口が全て違って、楽しさのうちに終わるんだね。


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"CEPES A LA BORDELAISE"
Grilled Cockscomb, Nantes Carrots, Tokyo Turnips, Red Radish and Green Garlic "Tortellini"

コリコリした歯応えに、きのこかなー、なんて思っていたら、なんとトサカでありましたか。
思いがけない食材の、思いがけない美味しさに、思わず告げるトキの声。
って、ベジタリアンコースなのに!? と帰宅してから気づいたという情けなさ……ううう、確かめてみるべきだった。(ばかー)(あほー)

おくるみの中には、春限定のグリーン・ガーリックが、柔らかさの中にも主張のある香り。
Tokyoという名が定着したように思える蕪は、この為にこれだけ小さく栽培されたのか(直径2~3cm)、小さいうちに収穫しているのか、どっちかなあ。


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"CROTTIN DE CHAVIGNOL"
Peanut brittle, Young beets and Granny Smith Apple

チーズのお皿の前に、先ほどとは違う種類のパンが配られて。
ベジになっても変わらず好きなチーズの中で、特に大好きなゴートチーズに舌鼓。
ビーツとりんごの甘さと、相変わらず良く合う山羊チーズ。
ナッツとフルーツと山羊チーズという組み合わせは、ある意味平凡かもしれないけれど、私的には一番嬉しいの。


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ENGLISH CUCUMBER SORBET
White Verjus Gelee, Green Grape and Quinine-Juniper Form

歓声を上げかけてしまったほどの、愛らしくも涼しげな野菜の冷菓。
きゅうりの冷たいスイーツは、自分でも作ってみたけど美味しいよ。納得しない人には、ぜひこれを食べていただきたい。メロンや西瓜と同じ瓜科で、美味しくないわけがないんだな。

きらきら輝くゼリーに、ぶどうの甘酸っぱさがまたぐっどだね。
キニーネとネズの実、なんて特別なアワアワは、大人の香りの一すくい。


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デザートにいく前に、飲み物を。コーヒー、紅茶、ハーブティ。
ホットのBlack Teaをお願いしたら、 ピカピカの銀器のセットにてお目見え。
お茶葉受けで遊ぶのが楽しくて、ついついお代わりがはずんだよ。(馬鹿)


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RHUBARB & KUMQUAT "VOL-AU-VENT"
Vanilla "Chiboust," Poppy Seed Ice Cream and 30-Year Aged Balsamic Vinegar

お城のような外見が素敵。大好きなルバーブが、柱と旗になってるね。
さくさくパイ皮はさすがという出来で、バニラの香りも強過ぎず。
アイスとバルサミコのペアは、結構メジャーになってきたけど、30年ものと言われたら、思わずははーっ、とひれ伏しちゃう。(単純)
甘過ぎないスイーツが嬉しいなあ。スイーツのレベルも高いんだな。


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と感激していたところで、またまたお店からの嬉しいサービス。ナッツタルトをいただいた。
カシューナッツとブラウンシュガー、と教えてもらって、ナッツもタルトも大好物の私は、いそいそと口に運んだのだけど。

とても上手くできているのは、素人の舌にも良くわかる。タルトのクラストも快いし、フィリングも濃厚で、ざくざく感も良し。
でもいかんせん、私には甘過ぎて、それこそ三口でギブアップ……せっかくの心尽くしなのに、申し訳ない。

ううむ、とってもフレンチで続いたコース、最後の最後でアメリカン。
やはりアメリカでは、スイーツはこれぐらい甘くないといけないのか。


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続けて運ばれてきたトリュフ達。
ピーナッツバター、塩キャラメル、タイコーヒー、Citron・Tangerine・Grapefruit、ミルクチョコ・クッキー、バナナの6種類。

これも、特筆すべきほどではないような。普通に美味しいトリュフ達。(ごめんなさい)
おまけに、甘いタルトを食べてしまった後なので、一口食べるのが精一杯。(ぎぶみー水)
お願いしたら、快くきれいに箱詰めしてくださった。


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いつの間にやら、他のお客さん達は全てお帰りになっていて、部屋もほのかに薄暗く。
時計を見たら、なんと5時半をさしていて。
ということは、ええええ、5時間もここに居座ってしまったの。(愕然)
ディナータイムが始まっちゃう、早く出なきゃ、と焦る私達に、あくまで優しいウェイターさん達。
お土産に、とショートブレッドの袋とこの日のメニューを、一人ずつに手渡して下さった。

Wさんご夫妻は、お勘定の時に、この日の感想を書いてお店に渡していらっしゃって。
今まで来店されたうち、毎回満足したわけではなく、辛口の感想を残したこともあったとか。
その時は、お店を出られた後で、マネージャーさんが追ってきて謝られた上に、食事代をタダにされたんだって。と言っても勿論、チップをかなり渡すことで、補われたそうだけど。
そうやって積み重ねていかれたからこそ、Wさんとお店の間には、現在の関係があるのだね。

今回の食事は、今までの中でもレベルが高かった、とのこと。
そんな貴重な一回を、私達とシェアしてくださったことに、改めて感謝の思いを噛み締めながら、長い穏やかな夢を見ていたような気分で、再びあのドアから外に出た。


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(続く)


The French Laundry
6640 Washington Street
Yountville, CA 94599
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by senrufan | 2010-06-27 10:55 | Trackback | Comments(8)
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Commented by shina_pooh_at_sfo at 2010-06-29 13:05
最初にひとこと。ハ、ハーランエステートですか。。。アメリカでも$500は下らず、日本だとヴィンテージにもよりますが、10万円くらいで取引されてるんじゃないでしょうかねぇぇぇぇぇ。。。(遠い目)

・・・すみません。脱線しました。素晴らしいコースメニューのご紹介ありがとうございます。Miyukiさんの視点から説明されると、さらに素晴らしく写ります。写真も美しい!一皿一皿のプレゼンテーションはまるで、お嬢様の細やかな粘土細工のよう。少しずつの量だから9コースにアミューズやプチフールまで堪能できるんでしょうね。いつかうちも行くことがあるかなぁ。(再び遠い目)

またまた脱線ですが、Sunchokeがどうしても見つからないのです。いくつかのグローサリーストアでも、うちの近くのファーマーズでも。もう少し大規模なファーマーズに行かなきゃいけないのかもしれませんね。菊芋めー。
Commented by ayumin_moo at 2010-06-29 13:45
ふわぁぁぁぁぁ、目映いばかりのお料理たち!とうとう姿を現しましたね!
一皿一皿が芸術的で、さすがこの辺りで頂点と呼ばれるお店ですね。
たしかにアメリカにしては一皿の分量が小さく見えますが、そこにぎゅっと味と思いが濃縮されているようにお見受けしました。

いつか、歳をとってからでもいいから、行ってみたいレストランです。

*え!(続く)ということは続きが!
Commented by Miyuki at 2010-06-30 04:43 x
*shinaさん
ああ、やっぱり。Wさんは多くを語られなかったのですが、なんかすごいワインではないかと思ってたんですよ。ド素人にも本当に美味しかったので。あああ、うちなんかが口にして良いワインじゃないですよねえ……申し訳ないなあ……(涙)

いやいや、写真は良く見るとボケてたりして情けないです。そうなんですよ、ごく少量ずつで数時間かけていただくので、コースを全部余裕で楽しめることができるんですよ。私でさえ、食べ終わった後も余裕でしたもん。shinaさんご夫妻には、ぜひ一度行っていただきたいです!

ないですか、菊芋ー。Wさんからは、ここ何年もサウスベイではあのマーケットでしか見たことがない、と聞いていたので、もしかしてそちらではあるかもと思ったのですが。私もようこさんにうかがったので、ホールフーズなども探したんですが、やはり見つからず(泣) また土曜のマーケットで買ってきます。
Commented by Miyuki at 2010-06-30 04:46 x
*ayuminさん
たはは、こんな写真な上に感想もヌケがあるので、どうしてもためらってしまいまして。
頂点、その言葉にふさわしいお店でございました。
そなんです、一皿が三口分のポリシーのお店ですから、とても少ないんですが、満足度は大皿料理以上を保証いたします。
歳をとってから、などとおっしゃらず、ぜひ若いうちに行かれてくださいまし(笑)

はい、続きます。続くのです。すみません……(なぜ謝る)
Commented by Vivian at 2010-06-30 14:10 x
一旦見てしまったら行きたくてしょうがない衝動を抑えるストレスがたいへんだろうと我慢していたの。遂に見てしまった! でも、文章が楽しくて上手で写真も綺麗なので結構見ただけで満足できている自分が不思議。

5時間ですか!!! 経験済みの友人に3時間は覚悟を!と言われて、予約の難しさ、お値段、遠距離、さらに食事時間の長さの四重苦で気の短い夫を説得するのは無理か・・・と思っていた私。が、やはり1度は訪れてみたいレストラン。銀婚式(そう遠くはない)にでも頑張って説得してみましょうか。
Commented by senrufan at 2010-07-01 01:25
*Vivianさん
あはは、その自制心がすばらしい! そう言っていただけてほっとします~。ほんとに良いお店だったのに、こんな感想しか残せなくて、と勝手に申し訳ない気持ちになったりしてたので。うぬぼれっつーもんですな、全く。

でもね、5時間がマジにあっという間というか、中だるみも飽きも全然感じなかったんですよ~。Wさんご夫妻との楽しいおしゃべりもあるし、お店側の流れるようなサーブの仕方もあって、むしろまだまだいけます!って感じでした。銀婚式にふさわしいレストランだと思いますぞ。ぜひぜひ!
Commented by samantha-ca at 2010-07-01 17:10
あぁ〜、一度は行ってみたいフレンチランドリー〜。夢のようでございますね。お料理の感想もその場にいるように伝わって来ます。
経験済みの友人からは、まるでオペラを見ている時と同じような感動がある、と言っていましたがまさにそうですね。お料理がどれも美しい〜♪
Commented by Miyuki at 2010-07-02 10:03 x
*samanthaさん
素敵なところですよ~。これがsamanthaさんの写真だったらどんなにか! と言いつつ、スペースが狭いので一眼は苦しいかな……
オペラを見ているような、おお、正にその通り、ぴったりです。料理は芸術だとは思ってましたが、これはそのトップ見本って感じですね♪


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