たとえ遠回りであろうとも

「私の成功の秘訣はこれです。私は一度も言い訳をしたことがないし、人の言い訳を受け入れたこともありません」
   ----- フローレンス・ナイチンゲール
        (イギリス人、看護婦、1820年5月12日生まれ)

* * * * *

【イベント】

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読書好き、本好き、といえば聞こえはいいものの。
私はそう名乗りたいところ、その内容のあまりの偏食ぶりに、おこがましくて胸を張って名乗ることができないのでございます。(そっと目をふせる)

なんせ読む本の半分以上が、海外ミステリーの翻訳本でございまして。
アメリカに住んでいて、原書は図書館で無料で借りられるものばかりなのに、それより何年も遅れた日本語訳をじっと待ち続ける、というテイタラク。
翻訳の出来は、訳に左右されるものが多いのに。実際、最初に原著を読むと、違和感を覚える翻訳本も多いのに。
ええ、全てわかっているんです。

一応それでも、ささやかに原書を読んでみたりもしてるんですけどね。
身体の中に”染み入る”手ごたえが、日本語に比べてぐっと少なくて、半分しか読んだ気になれませんで。って、その理由は、ひたすら自分の無能力ゆえだとわかっているんですけどね……(小石を蹴りながら)

とまあ、そんな言語障害者(……)であるということをデフォルトとしても。
何気なく地元イベントの予定を見ている時に、正にその日、私の大好きなミステリー作家の新刊サイン会がある、なんてものを目にしちゃったら、そんな障害をものともせずに、駆けつけずにはいられなかったのでございます。




その作家とは、Elizabeth Georgeさん
イギリスを舞台に、伯爵であると同時に、スコットランド・ヤード犯罪捜査部のエリート警部でもあるトマス・リンリー。彼を主人公としたミステリーのシリーズを書いていて、日本語訳は現在のところ、シリーズ8作目までが刊行されています。
原書では16作目に当たる新作、「This Body of Death」が、4月20日に発売となりました。
本国イギリスでも人気のこのシリーズは、BBCでTV番組にもなっています。

イギリスを舞台としていながらも、作者のジョージさんは、実はカリフォルニアに住む、生粋のアメリカ人でいらっしゃいまして。
しかし、昔からイギリスやイギリス文学に惹かれていたということで、このシリーズはイギリスを舞台としているのですね。
ミステリー界では名高いアンソニー賞やアガサ賞、フランス警察小説大賞を受賞した上、エドガー賞やマカヴィティ賞の候補になるなど、アメリカではベストセラー作家として、確固たる地位を築いておられる模様。

やはり昔からナンチャッテ英国ファンである私からしたら、これが大変イギリスらしい小説で。
重厚で輪郭が明確、堂々とした風格。登場人物の階級やアクセントにいたるまで、伝統的な、という言葉が良く似合う、と個人的には思っております。
小説の面白さは当然のこととして、これらの”英国風”の描写のおかげで、初めて読んだ本から、たちまちファンになったのでありました。


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本屋のイベントスペースにぎっしりと並べられた椅子は、ジョージさんが来られた時には、ほぼ満席状態。
初めて目にしたご本人は、小柄で華奢な感じの方でしたが、同時にぴん、と伸びた背筋、淡々とした落ち着いた話し方に、あの重々しい筆致の面影を見たような。

マイクを手にされて、ごく短く新作の紹介を述べられた後は、質疑応答形式にしましょう、と。
「沢山話しても、結局サインの時にあれこれ聞かれたり、長々としゃべられたりするのには、もううんざり。だから、ここで全部済ませてしまいましょう」
と言われ、場内爆笑&爆苦笑。
たちまち場内から、何本もの質問の手が挙がり、それに歯切れ良く答えていかれました。

小説をどうやって書くか。答えられるのは、「彼らを動かして、何かをさせる」ということだけですね。

イギリスを舞台にした理由は、全てに惹かれているからです。音楽、ファッション、映画などの全てにおいて、イギリスからのものはとても魅力的で、インパクトがあるものばかりでしたから。
だから自分で書きたいと思った物語も、自然とイギリスが舞台になったのです。

小説は、現実社会の経験を読者とシェアするためのもの。なので、読者が引き込まれていくような形での書き方を心掛けています。
本の中で起こることは、全て私の、作家としての感覚で決めたこと。その決定が、ストーリーを前に進ませて、キャラクターを動かします。

イギリスでは、その人が話すアクセントで、階級や出身が分かるのですが、小説の中で、文字でそれを表現するのは難しい。だから、言葉で説明を加えるようにするなどの工夫をしています。
小説のリサーチのために、年に3~4回はイギリスに行って、リサーチに十分なだけ滞在します。
昔はできるだけ長くいたいと思っていたものですが、今は住むにはカリフォルニアがいいですね。だってイギリスは、気候がね(笑)

シリーズは長く続いていますが、一冊ごとにストーリーは完結しているので、どれから読んでも大丈夫です。
ティーンの子が読めるかどうか? それは、読解力という意味では、目安は16~17歳ぐらいから、ということになるのでしょうが、親御さんの考え方によるところが大きいのでは。殺人や性的描写など、気をつけたいポイントがあるでしょうから。


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こんな感じで、1時間ほどのお話。
その後は、皆さん手にご本を持って、サインをもらう列に並びます。
勿論、そのまま帰られる方もいらっしゃいますし、一旦本コーナーに行って物色し、レジで会計した後、その本を持って並ぶ方も。

ちなみに私は後者で、今持ってる本の続刊が欲しかったのですが、残念ながら見当たらず。
なので、新刊本を買いました。ええ、定価で高いのはわかってましたが、この際、参加費のつもりでね。

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質疑応答の時に釘をさされたせいか(?)、長々と話し込む人もいなくて、列は順調に進みました。
いよいよ私の番になって、どきどきしながらお願いしたことは。
日本にいた頃に、翻訳本を読んでファンになりました。
アメリカに来るにあたって、当然全冊持って来ましたし、それ以降発売になった本も全部買ってます。大好きです。
さしつかえなければ、日本の本も持って来ましたので、こちらにもサインしていただけますか?
この本のおかげで、あなたのファンになったので、私にとっては大事な本なのです。

まあ、そうなの、とても嬉しいわ、もちろん2冊ともサインしますよ。
と、サラサラと書いてくださいましたです。感激です。

そばにいらっしゃったエージェントの方に、
「新刊は英語だけど大丈夫なの?」
とツッコまれたのですが、にっこり笑って、
「辞書を引き引き、がんばります」
と答えてみせました。内心が滝汗であったことは言うまでもありません。(悔)

日本語の本ばかりの偏食オンナには、特に本に関しては、日本が恋しくてたまりませんけれど。
翻訳本が好きなおかげで、アメリカ暮らしのこんな特典、と思えば、やっぱりにまにまと笑み崩れてしまい。
がんばって新刊も読むつもりではありますが、同じくイギリス好きなお嬢に、まずは読ませてみたいなあ、と考えているところでございます。


そしてこの翌日には、またまた別な本にサインをいただける機会が待っていたのでございました。
(続く)(嘘)

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Elizabeth George On-Line.com (エリザベス・ジョージ公式サイト)
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by senrufan | 2010-05-12 12:46 | Trackback | Comments(10)
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Commented by akiumi at 2010-05-14 14:41 x
大好きな作家に直接会える機会って素敵ですね~。サインをゲットできて、おめでとうございます(笑)

私も、偏食激しく、読書家とは口が裂けてももうしませんが、活字中毒です。本に囲まれてるとなぜか幸せです。
はい、英語の本は、かれこれ3年の米国生活で、数冊よんだきり・・・。
だってカレッジの教科書でめいっぱいなんだも~ん、と言い訳しつつ、日本語の本がおいてある図書館を愛用しています。
この人の本なら原文でトライするぞ!といえるような作家さんに出会いたいなあと思います。

メールのお返事遅れててごめんなさい、2~3日中にはお送りします!
Commented by Vivian at 2010-05-14 15:44 x
大昔は日本語、英語(→何故か日本に住んでいる時に)ともによくミステリーを読んだものなのですが、最近は美容、健康関連の本が多くてミステリーはすっかりご無沙汰です。Miyukiさんに影響されてジョージさんの本を読んでみたくなりました。1冊完結スタイルだそうですけど、やっぱり彼女の処女作A Great・・・から読んだ方がいいかしら?? しかし英語で読むとすると一体全体どれだけの時間がかかることか(汗) それにしてもMiyukiさんは速読ですね。読んでる冊数でびっくりします!

余談ですが、写真を見ると彼女は昔よりも今がとっても素敵ですね。
Commented by nikkeilife at 2010-05-15 00:53
素敵な方ですね。英語のミステリーは大分ご無沙汰しているんですがまたどれか読んでみようかな。以前はMary Higgins Clarkの本を一冊残さず読んでいたんですけどね。最近はもっぱらノンフィクションに偏ってます。

Miyukiさんなら原文でも全然大丈夫だと思いますよ!数年前のものですがAmanda Hesser著作の「Cooking for Mr. Latte」ってお読みになりましたか。レシピ本みたいなものなんですが一章ごとちゃんとしたストーリーになっていて(彼女と今の旦那さんが付き合い始めたときなど)、簡単で読みやすいですよ。NYタイムズで働いていただけあって綺麗な英語で書いてあります。お勧めです。本の中の料理、未だ全然作ってないけど。(汗)
Commented by Miyuki at 2010-05-15 10:46 x
*akiumiさん
はい、おかげさまでゲットできました! 宝物です、えへ。

カレッジの教科書だけで十分ですよ……私ときたら、ちゃんと読んだといえるのは、児童書だけだったりしますから(涙)
ほんとに、読みたい作家さんの本は山のようにあるんですよ~。でも持病の英語アレルギーが~~(読んだら吐く)

あ、お気になさらず、お時間のある時にお願いしますvv
Commented by Miyuki at 2010-05-15 10:52 x
*Vivianさん
おお、すごい、さすがです! 日本にいる時は、公私共に認める英語嫌いだったもので、こちらに来て読まなきゃいけない羽目になった時は、真剣に悪夢を見ましたです。
ジョージさんのシリーズ、どれか1冊読まれて気に入られたら、最初から読んでみる、というのはいかがでしょうか。メインキャラの関係や変遷が楽しめますので♪ 日本語でよろしければ、うちのをお貸ししますよ~。
はい、読むのは速いのです。それとちょっとした時間でも読みたくて、運転中の信号待ちの時でさえ読んでたりも(恥)
そう、確かに一段ときれいになってらっしゃいましたねえvv
Commented by Miyuki at 2010-05-15 11:03 x
*アヤコさん
メアリー・ヒギンズの本、日本でも人気なんですが、なぜか私はまだ1冊も読んでないのですよ。読もう読もうと思いつつ、他の欲しい本が山積みで、そちらに気をとられてしまってて。アヤコさんがお好きなら、やはり読まなくてはいけませんな!

いやいや、ハリポタでさえ死にそうになったワタクシですから~(泣) 「Cooking…」はアレですね、邦訳が「アマンダの恋のお料理ノート」。日本語タイトルを聞いて、うーん原題を知りたいと思った本です(笑) 興味はあったのですが、そうですか、お薦めですか。アヤコさんのお薦めって勇気が出るんですよね、うんうん。図書館で探してみます、ありがとうですvv で、ジョージさんの本はいつ……
Commented by みちこ at 2010-05-15 23:29 x
こんばんは~♪
私も「本大好き人間」ですので、気持ちがわかりますよぉ~♪
私が原初で読み切った!と自信を持って言えるのは「赤毛のアンシリーズ」♪
私は、ミステリーはあまり読まないのでジョージさんって知らないけれど(ごめんなさ~い^^)
とっても素敵な方ね♪サインをして頂き嬉しいわね~。

丁度”ナイチンゲールさん”も関係がある話題を更新しました^^;
さ!このコメント送れるかしら?!
Commented by るん at 2010-05-16 04:43 x
やっぱり日本語しか受け付けない“活字病”の私です。 昨日もバークレーの図書館に行って、しこたま借りてきました。 アメリカにいながら、日本の本が図書館で借りられるなんて、幸せモンですよね。

憧れの作家さんにお会いできたなんて、ラッキーですね。 いつもアンテナを張り巡らせているMiyukiさん、素敵です!
Commented by Miyuki at 2010-05-16 12:53 x
*みちこさん
わ、「赤毛のアン」なつかしいですー! あれを読みきったなんてすばらしいっ。
作家さんの名前の知識も、好きなジャンルに偏りますよね~。
はい、ほんとにいいチャンスに恵まれて幸せでした♪

お、ナイチンゲールと? なんだろ、なんだろ、わくわくです。この後おじゃましまーす!
コメント、大丈夫でほっとしましたー。みちこさんを受け付けないなんて許せませんので。(真顔)
Commented by Miyuki at 2010-05-16 12:55 x
*るんさん
バークレーの図書館、るんさんブログで拝見してから、行きたくてたまらないんですよ~。ああいう本も、日本人の方が寄付してくださったからなんだろうなあ、と思うと、ほんとに感謝・感謝ですよね。

いえいえ、ほんとにたまたまだったので、思わず神様ありがとうと唱えてしまった、無宗教のワタクシでございました(笑)


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