小さな足の、大きな一歩 (12:最終回)

Independence Day (Costa Rica)
Our Lady of the Seven Sorrows (Slovak Republic)

* * * * *

【雑事】

7. ほんの一歩の例として (3)

さて、色々経て到達した現在のお嬢の姿は、というと。
現地校ではHigh schoolのSophomore(2年生)、日本の学年では中学3年生ですな。
日本にいたら、今頃は受験・受験で血眼状態だったかもしれないので、こちらで良かったと思いきや、現地校の宿題が昨年より更にぐんと増えて、寝不足の目は血走っております。
これで高3になったら、どんだけ大変なんだろう……日本の受験生もえらいですが、こちらの高校生もなかなか大変な様子です。




親の目から見て、お嬢がようやくバイリンガルと思えるようになったのは、実はここ1~2年のこと、なんですね。
それは、日本語補習校を小学部卒業と共にやめて、日系の塾に移ってから、なのです。

それまでも、滞在年数の長さ、そして現地校ではほとんど日本人と接しないという環境のわりには、それなりに日本語してましたが。(造語)
たまに、英語からの直訳日本語を口にすることがありまして。アレです、「テストをとる(take a test)」「野球を遊ぶ(play baseball)」という類いです。
これが塾に通うようになってから、いつの間にやら消え失せて。
加えて、塾のお友達のおかげで、マンガやライトノベル文化の世界に足を踏み入れてから、若者言葉も身につけて。このまま同人世界に身を投じても、母ちゃん@同人経験者は応援するぞ。
今だったら日本に帰国しても、ほぼ普通の学生としていられるんじゃないかなあ。ま、文化的な無知は色々ありますけどね。

いつか日本で暮らしたいと切望するお嬢なので、たとえば大学から日本、ということも十分にありえます。
日本人なのに、日本を知らないのが悲しい。外からだけじゃなく、日本の内側を知りたい。同時に、外から見たアメリカを知りたい。
将来どちらを選ぶにせよ、今のままでは判断できないから。どちらも知った上で、自分なりに納得して選びたい。
こんなことを考えているようです。えーと、少なくとも口では言ってます。(目をそらしながら)


もし日本に戻って、ずっと過ごすことになったなら。
彼女の英語の力は、どこまで残るものでしょうか。

幼ければ幼いほど、外国語の習得は容易でありますが。同時に、その習得の早さと同じぐらいに、消えてしまうのも早いもの。
大きくなってから海外に渡れば、大変な思いをして言葉を身につけなければなりませんが、意外とそこまで苦労した分、ちょっとやそっとじゃ去らないだけのものになったりして。
神様は公平だなあ、なんて思うこと。

言語の臨界期については、幾つかの説がありますが。下は9歳から、上は12歳ぐらいまで、あたりかな。蛇足ですが、楽器や運動能力についても、12歳説がありますね。
臨界期と同様に、「どの年齢までその環境で過ごしたら、その言語を忘れなくなるのか」についても、諸説様々なようです。

お嬢について、私が勝手に考えるところでは。
今すぐ日本に帰ることになって、以降もずっと日本で暮らすとしても。ここまで培った英語の力が、ゼロになることはないだろう、と思ってます。
強いて贅沢を言えば、こちらの高校を卒業するところまでいられたら、なんて考えてみたりもしてますが。
それは、使う英語のレベルが、高校ではぐんと高くなる、というより、大人の英語に近づくからで。
中学までネイティブ並みに話してたところで、それは大人社会で通じる英語ではなく。”教養ある”レベルには、残念ながら語彙も用法も足りないのです。
こちらの高校のハードな勉強で磨かれた先には、それだけのものが待っている、と思います。

日本に帰って、英語能力を維持するには、たとえばインターナショナルスクールなどに入れる、という選択肢もあるのでしょうけれど、個人的にそちらには行かせたくないなあ、と。日本という母国に帰った、日本生まれの日本人が、日本の中の”異世界”に身を置く必要はない、と思うんですよね。
これが国際結婚カップルの子供とか、まだまだ海外赴任の可能性が高いということであればわかるんですが、お嬢の場合はそうではないので。
むしろ日本に帰ったなら、ある程度は環境に配慮するにせよ、ごく平凡に過ごしてくれればいい、と考えてます。


正直に言えば、こう考えるようになったのは、渡米してから数年たってからでした。
それまでは、お嬢が英語を話すようになったのがやはり嬉しくて。自分ができない分、余計に貴重で失いたくないものに思えたもので。
加えて私の父は、独学でずっと英語を勉強してきた人なので。お嬢の英語能力を一財産と見なして、将来はぜひ通訳か翻訳業に、と事あるごとに口にします。

しかし、お嬢ぐらいの頃からバイリンガルの道を歩み始めた子供達にとっては、親達のそんな思いは、むしろとまどいでしかないようで。
彼女達にとって、2ヶ国語を話すことは、普通に生活する上で、自然で当たり前のことであって。人によって敬語と友達言葉を使い分ける感覚に、ちょっと毛が生えたぐらい。と言えば、大げさかもしれませんが。

学校に通って、いろんな人と交わって。沢山の知識と、多くの知恵と、喜怒哀楽のあれこれを。どの国に住んでいようとも、自分を成長させる為に必要な、様々な。
それを吸収するには、アメリカという場所では、英語というツールが不可欠だったから。
英語を武器とする為に、ではなく、その環境に居て学ぶ為に、英語が必要だったから。
言語とは、何かを手がける為の手段の一つなのだ、ということを、改めて彼女達から教えられる思いがします。

それだけの体験を経て、自分という人間の基礎を作った彼女達。さらにその先、どう進んでいくかについては、英語だけにとらわれる必要はない、と思うのです。
勿論、英語ができれば、将来の選択肢はその分広がるわけなので。間口の広さを保ちたいのであれば、英語を維持・向上させることが必要で。
それを実際に可能にするかどうかは、自身の努力にかかっていることは、親の口から言うまでもありません。
加えて、日本人としての自覚が強いなら、日本人としての教養が何よりの。
まったく、立派な大人になる為には、いつまで学んでも足りるということはありませんな。だから私は、永遠の10代です。(つまり、永遠に立派な大人にはなれない…)


しかし、とどのつまりは、果てにある願いとしては。
どんな仕事を持ち、どこに住み、どんな目標を持とうとも。
自分の居る環境を大切に。感謝の心を忘れずに。
等身大の幸せをいっぱい集めて、笑顔で毎日を過ごしてくれれば、それでいい。

そんな風に考える私は、ごくごく普通の子供を持つ、典型的で平凡な、
ただのお母さんの一人です。

(終)
*-*-*-*-*-*-*-*-*

始めた時は、こんなに長くなるとは全く思っておりませなんだ……せいぜい5~6回かと。
せめて、12回で終わって良かったです。魔の数字には到達したくない。

これまた自分の中の整理の為に、ぐだぐだと連ね続けたタワゴトに、それでも温かいコメントをくださった皆様に、この場を借りて、厚く御礼申し上げます。
本当に、本当にありがとうございました。(最敬礼)
[PR]
by senrufan | 2009-09-15 08:43 | Trackback | Comments(8)
トラックバックURL : http://senrufan.exblog.jp/tb/11949959
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Commented by iloveapple at 2009-09-17 13:46 x
すごい読み応えありました。と同時に、やはり帰国子女(お嬢様はまだ帰国されていませんが)の子供も親も悩みって時代を超えて一緒なんだなぁ、なんて自分の事を振り返って思います。

私は大学は日本です。すっごい楽しかったけど(これまた帰国子女が多かったので何の問題もなく馴染めたし、「キコク」はうちの大学ではステータスだったのでめちゃくちゃ楽に溶け込めました。これが国立大など、「キコク」の少ない学校だとまた違うらしい)、勉強はしなかったですね、遊んでばかりで。日本の社会を知る上では役立ちましたが、もし英語を使った仕事をする今の状況を当時想定していたら(ってそんな事17歳でできないですが)アメリカの大学に行った方が良かったって思います。教育内容、レベルが違いすぎますから。

お嬢様がどういう道を辿るのか、今から楽しみですね!やっぱり若いっていいわ〜。(遠い目)
Commented by マミィ at 2009-09-17 17:09 x
ええん、いやんいやん、最終回だなんて。プロデューサーにお手紙書いて将来続編もお願いしちゃおう。その時のタイトルは「大きな足の大きな一歩」かしらね。
Commented by こっぺ at 2009-09-18 01:09 x
連載お疲れ様でした。そしてとってもとっても感謝しています。子供が日々言葉を覚えていくことに幸せを感じつつも、バイリンガルの環境で育てる不安も大きくなっていきました。英語の環境に入ってショックを受けないだろうか、そのうち日本語を忘れてしまったらどうしよう、息子はアメリカ人になっちゃうのか(よくわからない不安)、この国ではマイノリティに入るであろう彼が、この国を祖国と考えた場合にせつなくなったりしないだろうか(もうここまでいくとわけわからん)。
そういう不安が、この連載を読んでふきとんでいくように思えました。息子は息子、私は私、なんとかなるさー楽しんで。って。見守っていこうって思えました。
私も再連載をリクエストしちゃいます。いつかまた、お話聞かせてください。
Commented by Miyuki at 2009-09-18 12:15 x
*iloveapplesさん
おっしゃる通り、悩み所は変わってないのですよね。だからiloveapplesさんのような先輩のお話は、いつまでも貴重でありがたいのです~。

「キコク」が溶け込みやすいところ、それはポイント高いですよね! アメリカの大学は、学費は高いですが、それだけのことはあるような気がするのです。iloveapplesaさんのご意見で、更にそれが強化されました。このままだと娘は日本の大学を目指すことになりそうですが、せっかく入れる場所にいるのに、もったいないなあ、と思ってしまって。私がまた、大学でもっと勉強すればよかったと後悔してるので余計に(笑)

ほんと、未来がありますもんね、彼らには。って、まだまだお若いじゃないですか、ダイジョブ! 私はすでに人生後半でございますよ……(ウツロ)
Commented by ayumin_moo at 2009-09-18 12:16
>自分の居る環境を大切に。感謝の心を忘れずに。
>等身大の幸せをいっぱい集めて、笑顔で毎日を過ごしてくれれば、それでいい。

そうですね。本当にそうですね。
これもまた、いつか我が家の家訓になりそうです。
お嬢様の前に大きく広がる未来、あぁ、眩しいです!
私も、いつかが続編が出る事を楽しみにしています。(また得意のプレッシャー)
Commented by Miyuki at 2009-09-18 12:18 x
*マミィさん
将来続編をプロデューサーに命じられたら、後進に道をゆずるということで、お嬢に直接語ってもらうというのはどうでしょう(聞くな)
でもでも聞いてくださいよ姉さま。うちの娘、ちっちゃいままとまっちゃったんで、足のサイズは22.5cmなんですよ……なので、タイトルは「小さい足」のまんまでございます……!
Commented by Miyuki at 2009-09-18 12:23 x
*こっぺさん
いえいえ、こんな駄文にお付き合いいただいて、本当にありがとうございました! いつも一人上手な日記しか書いてないですが、コレに関してはこっぺさんとご縁ができたことで、自分でも大事な記録になりました。
子育ての不安は尽きないですよね。四六時中、子供のことが頭のどこかにある、というのが、親になったことの証のようにも思います。でもそうなんです、子供は子供、親は親、と思っていなくてはいけないんですよね。でないと、お互いがんじがらめになりかねないですから。ぼんず君の成長を通じて、こっぺさんもどうぞ目いっぱい楽しんでくださいますように!
いつかお目にかかれたら嬉しいです。再連載は、その時のおしゃべりで、ということで(笑)
Commented by Miyuki at 2009-09-18 12:25 x
*ayuminさん
私もエラソーに書いたわりには、なかなか果たせてないダメダメ親ですが。ayuminお母さんなら、きっと実現されるでしょう!
未来が貴重でまぶしいものだということも、大人になってから実感することなんですよね。当事者である娘達が、どうかそれを感じ取ってくれればいい、といつも願ってます。
段々ayuminさんのプレッシャーが快感になってきました。もっともっとー(危)


<< 手前の味噌は良い風味 小さな足の、大きな一歩 (11) >>